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MSPH留学をふりかえる【その2:プロジェクト参画/PhD受験編】

大学院留学振り返り記事の第二弾です!(第一弾はこちらからどうぞ、留学背景や目標設定を最初の半年でどう深ぼったか、について書いています。)

この記事では、最初の半年をかけてパワーアップさせた目標に向かって、プロジェクト実践経験を掴み、実践の中で成長していき、PhD受験まで至った後半1.5年を振り返ります。このプログラムを最も楽しみ尽くした学生の一人だと胸をはって思っているので、短い修士留学でもここまでできるぞ!と少しでも伝えたいなと思っています!


12月~1月:参加できるプロジェクトを探しまくる

改めて自分の目標を決めてみると、「自分一人でしっかりモノにする型の手触りサイズプロジェクト(これもめっちゃ大事だと思う)」より、「大きなチームの中で揉まれて一員となる系プロジェクト」が必要なことは自明だった。

指導教官に話してみると、「その目標だと私よりベストマッチのチームがあるかもしれない。いつでもここには帰ってこれるから、人生のメンター探しだと思って、機会探索をしてみれば?」との言葉をもらう。
特に、彼のその時のプロジェクトフェーズが(既に私が経験したことがあった)データ分析段階にあり、「トピックのベストマッチよりもプロジェクトフェーズと自分のトレーニングギャップのマッチが今の自分にはより大事」、という判断軸を新しく持てていた私は、温かい言葉に背中を押され、「そうだな、人生のメンターなんて何人おってもええし、それも修士の特権か^^」という気持ちで、年末ごろから本腰を入れてプロジェクトを探した。

探し方は至ってシンプル:最新のプロジェクト情報が詰まったセミナーに出まくり、作成済みのfaculty一覧excelを活用しつつ、気になったPIにメールでラブコールしまくる。多分、合計30通くらいは送ったと思う。
機会獲得への情熱をどう伝えるか、という点において、最初の半年でじっくりできたself reflectionが大いに効果を発揮した。フレーミングは下記みたいな感じ!


セミナー/記事で拝聴して、プロジェクトに〜で惹かれ、私が貢献する方法はないか議論がしたいです。自分のパッションは、Strengthening community-oriented Primary Healthcare を通してGlobal Health Equityの向上を実現することにあります。MSPH中に、Partnership-drivenのEvaluation study (量的分析アプローチ)に飛び込みたいと思い〜〜〜〜などの授業をとってきました。特に、御事業は〜〜〜のフェーズにあるのではないかと思い、それは自分が追い求めている〜〜〜というlearning opportunityにベストフィットなんです。ちなみに、こんなスキル/経験があります!(キャリアセンターで添削完璧なCVの添付!!!) 
  とりあえず、とりあえず、10分話さんか?!?!

なかなか骨の折れる学内ネットワーキングの地道な実践によって、結果的に4つのプロジェクト参画機会(後述)を得て、卒業3ヶ月前の今に至っている。良い挑戦をした。


機会獲得に成功した要因を振り返ると以下のような感じだろうか:

  1. 運が良かった、結構タイミング次第 

  2. 弊学のプロジェクト数が多すぎる。しかもフィールドワークを支援する学内奨学金パッケージがある!
    (入学前には掴みにくいが、実践機会の量で留学先を決めるのも大事)

  3. 自分の学習欲求を上手く言語化できていたので一歩踏み込んだラブコールを送れた 

  4. ”運命のたった一つのプロジェクト”なんてものを夢見ない。ただでさえ短い修士留学の期間で転がっている完璧な機会はほぼないのだから、目標を細分化して機会の組み合わせでどうにかする。

  5. トピック再設定においてある程度学内のトレンドトピックを抑えた
    (どんなに自分的なこだわりのあるwordingでも、刺ささりにくい、その学校のバイブスに乗ってないものはあり、似た関心でもどうwordingするかでもらえる共感はだいぶ違う。)

  6. 卒業まで1年以上の時間がある早めの時期に目標を決めきり、行動に出た
    (同級生よりも多分半年は早い動き出しで、もっとじっくり学んでからにすれば?と言われたこともある。でも、「卒業が見えてるメンバーに甲斐のあるチャレンジなんて回すわけないやん」とシビアにリーダーやってた過去の自分なら絶対思うので笑、善は急げなんじゃないかな?やってからまた振り返ればいい。)


1月〜:掴んだ4つのプロジェクト

フェーズがばらばらな4つの実践機会を得た。(画像:第一弾の振り返り記事で紹介したグローバルヘルスプロジェクトフェーズ図に当てはめ)
各プロジェクトの概要は下記の通り:

■プロジェクト1  (留学1年目の1月〜参画)
Topic: Social Accountability Approach to enhance the responsiveness of local health systems
フェーズ:5 - dissemination of findings
手法:Scoping review と(研究ではなくなるがdisseminationとしての)オンラインリソースレポジトリーの立ち上げ

■プロジェクト2  (留学1年目の2月〜参画)
Topic: Evaluation of digital job aid tool at Primary Healthcare facilities in Burkina Faso
フェーズ:4&5 - data cleaning, analysis, manuscript development
手法:二次データとpragmatic dataを使ったDiD分析

■プロジェクト3  (留学1年目の2月〜参画)
Topic: Incentive system for Community Health Workers in rural Uganda
フェーズ:2-4 - finalizing analysis protocols, data collection & intervention provision in the field, early data analysis
手法:現地Surveyのデータ収集を含んだCommunity RCT

■プロジェクト4 (留学2年目の12月〜参画)
Topic: Identifying enablers for successful digital health implementation in primary healthcare
フェーズ:1-2 - stakeholder engagement, idea generation
手法:未定, under development

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気づくと、手法も、フィールドも、フェーズも多様なめちゃくちゃワクワクするプロジェクトポートフォリオが出来上がっていた。

私は、総合力勝負のグローバルヘルスをやりにこの留学に来た。それが、できるんだな、と確信を得た。
次は、掴んだ機会をモノにするため、プロジェクトのお客様ではなくcritical playerになるために粛々と成果を出していく段階にきた。責任のない挑戦に成長はないと思っているので、何かを任せてもらえるところまで頑張ってみたかった。
結論、達成できたと思う。多彩なメンター達との共著になるmain paperに加えて、筆頭著者になるであろうpaperを2-3つ持てていることが一つの自分なりの証である。

各プロジェクトで欠かせない存在になる

簡潔にcritical player になるために各プロジェクトでとったアプローチと成果・学びを振り返る。

*記載内容はまだ論文がpublishできていない段階で言える内容にとどまっています。早くpublishして全貌を世に出せるように頑張ります!

ーー1) Review on Social Accountability Approach

(フェーズ:5 - dissemination of findings)
■参画経緯
:メールを送り始めてすぐに返事をくれた。「メールをくれたプロジェクトには空きがないが、別のもので ほぼ書き上げるだけのレビューペーパーがあるんだけど、無給でよければやってみる?あと、外部団体とのインターンがついてくるかも」と言われた。 
や!り!ます!と 即答した。

■頑張り方:まずは執筆を頑張った。その後、Social Accountabilityに力を入れている CORE groupから、「このプロジェクトを通して得た知見を世界中のプラクティショナーに伝えるため、オンラインレポジトリーを作りたい」と言われた。 プロダクトコンセプト、ロードマップまで全部作って、「一旦サクッとプロトタイプしてフィードバックもらったほうがいいんじゃないですか?」と提案した。annual conferenceに出してみたら通って、review paperの成果と合わせてプレゼンとディスカッションのリードを任せられた。

■苦戦したところ:シンプルに英語です。最初の打ち合わせではおいおいって感じだったと思う笑

■学び:研究成果がどのようにして社会の実務家へと伝わっていくのか体験できた。また、disseminationは(研究者の成果にはなかなかならないので)人によって熱の入れ方が全然違うのだが、殊グローバルヘルスにおいてはここをしっかりできる人が次の研究アイデアとパートナーを手に入れるのだな、と強く思った。

ーー2) DiD evaluation in Burkina Faso

(フェーズ:4&5 - data cleaning, analysis, manuscript development)
■参画経緯
:セミナーで発表を聞いてラブコールした。Study Purposeがめっちゃ深いのに、データ分析が中途半端だったから、これは飛び込むスペースがあるのでは?と思ったら、予想的中で、データ担当者が転職したてというカオスな状況だった。キタコレ!!!

■頑張り方:前任者が6ヶ月かけてもcleaning を終えられなかったというデータセットを「とりあえずexploreしてみます?」と期待してなさげに言われた(期待値が低いぞ!チャンスだ!!
データは、いわゆる電子カルテの簡易版のような臨床サポートツールからDLされてきた2年間、30+施設の診察情報のoperational dataで、ブルキナファソなのでもちろんフランス語だった。
rawデータに戻ってしっかりEDAをして、データの構造とcleaningに必要なプロセスを図示し、チームに「そもそも現場/開発者から〜〜を聞かないと方向性を間違えそうなので、2週間後にパートナーにプレゼンさせてくだいさい」と伝えた。
フランス語が話せるメンターに助けてもらいながら、2時間のヒアリングワークショップを現地のNGOを相手に2回やった。
コンテクストを理解してデータが扱える自信がついたので、2ヶ月くらいかけて誰でも分析できる状況までanalytical datasetsを作っていった。PIに「このプロジェクトの真の面白さをあなたが思い出させてくれました」と言われた。熱い。
同じプロジェクトの他の二次データの解析も任せてもらえるようになり、綺麗になったデータを前に、Study Purposeに対してこのデータが答えられる範囲のRQを再度深堀し、analysis protcolを刷新して、early resultをカンファレンスで発表した。現在、プロジェクトのanalysis co-leadを務めている。manuscript がもうすぐできるぞ!

■苦戦したところ:研究者ではないパートナーの現地NGOとどうコミュニケーションをとるか、という部分が新しい経験で難しかった。もっと的を絞って話せ、と何度言われたかわからない。(デモワークショップでは3枚のスライドを進めるのに2時間かかって笑 今となればチームの笑い話である)
Codingも結構苦戦した。学生の立場をフル活用して、全然関係ないepi系の授業のオフィスアワーに行って、「授業楽しんでます!ところで、こういう場合ってどうする?」みたいな相談を続けてなんとかなり、自信もついた。

■学び:data cleaningが得意、と思えるようになった。忍耐強く細部をみていく力はどんなプロジェクトにも生きてくると思うし、泥臭いことをやり切った人にmanuscriptの機会は回ってくるというとてもヘルシーな研究経験を持てたのは良かった。
現場パートナーと対話を通じてプロジェクトの価値を深めた経験が大きな糧になった。研究者側に現場の視点が役に立つのはもちろんなのだが、ワークショップの後にツール開発者から「自分たちのデータが使われる様子がわかり、今後の開発に意識したいことがたくさんあった。ありがとう」とメールがきたときは感動した。グローバルヘルス研究は、mutural capacity buidingなんだなって初めて自分の言葉で言えるようになった。
また、2つの全く異なるデータセットを一つのRQのために繋げて使う経験を初めてして、triangulation的な思考法の魅力に目覚めた。


ーー3) RCT in Uganda

(フェーズ:2-4 - finalizing analysis protocols, data collection & intervention provision in the field, early data analysis)
■参画経緯
:グローバルヘルスをしたいのに中期以上のフィールド経験がないことは致命的な弱点だと思っていたので、夏休みを使ってフィールドワークができるプロジェクトを探した。結果、GHEFPという現場に行きたい学生とプロジェクトをマッチングしつつ、研究資金を出してくてくれる学内奨学金を見つけて、挑戦することにした。選考面接はかなり気合いを入れて、チームの過去の研究の仮説検証が新しいプロジェクトの仮説にどう繋がっていると理解しているか・そして私が如何にこのステップで役に立てるかを話した。無事に学内選考を突破し、ウガンダでのRCTプロジェクトに参画することになった。

■頑張り方:大きなRCTなのにアメリカチーム実働2名(+私)、ウガンダチーム3名で回っていて(弊学あるあるの少数チーム)、学生の私も即戦力になりなさいというexpectationで運が良かった。
ウガンダチームをリモートで支えつつ、study qualityに改善の余地がありそうなaction pointを準備して夏休みを迎えた。アメリカから一人でウガンダに向かって、休みまるまる3ヶ月弱滞在し、州政府との介入のprovision・電話調査・医療施設データ収集などの活動に参加した。
1年間介入を続ける長丁場のRCTだったので、ローカルチームがフィールドワークだけではなく分析にしっかり関わる余裕を持てるように、「工夫すればやらなくていいこと」を増やしたかった。例えば、現場でなんとかしていたロジを整理して楽にしたり、データクリーニングの時間が短くて済むように(youtubeで独学して笑)データ収集ツールを再構築した。
州政府と車で医療施設を回る時間を贅沢に活用して、現場の課題や私たちの研究について率直にどう思われているのかたくさん対話した。それをローカルチームメンバーと新しいプロジェクトの種として育て、プロポーザルをdraftingした。
帰国してmid-resultをまとめ、APHAのワークショップでポスター発表し、final resultに向けて複数のデータソースを別々に扱うだけでなく組み合わせてtriangulateするプロトコルを作った。現在進行中のendline 調査が終わり次第、quan partのanalysis-leadとして分析を担当する予定。

■苦戦したところ:これまでのフィールドワークは2週間が最長だったので、3ヶ月の長い滞在で全てが新しかった(食中毒にも2回なった笑)。
特に「USの大学とウガンダの大学が組んで、州政府とRCTをやる」という建て付けの中で、自分の立場をどう設計するかに苦労した。
大学間コラボレーションはどこまでいっても1つの共同体というより「コラボ」であって、二者間にはなくなることのない緊張関係があった。どちらのauthorityも傷付けてしまわないように、自分の立場をうまく使って 二者をブリッジできる方法を悩んだ。

また、US大学と現地大学のコラボが両者の強い意志によって「対等」にデザインされていることを体感した。グローバルヘルスは、「支援者と被支援者」であった歴史を乗り越えようとする最中にある。現地ステークホルダーを心のどこかで「見下す」ことはもちろん御法度なのだが、チームの「対等」が今まで当たり前ではなかったことに配慮せずに、無配慮なフラットを突き通すこともあまり良いことではなさそうだった。
例えば、アメリカでやっているようにガツガツと批判的思考で提案をしていくスタイルはウガンダの文化では受け入れられないことが多かった。高所得国の研究者に比べてまだ仕事の安定性が少ない現地のジュニアコーディネーターに「私はあなたの仕事を取りに来た訳でも、批判しに来たわけでもない」と姿勢で伝え続けて初めて開示してくれるstudy contextがあったりしたし、信頼関係ができるまでメールのCCからUSチームを外したりした。細かい気遣いを経て、ハプニングをポジティブにとらえるメンバーの体力が増している事を感じたし、(研究における)upper-levelのプロトコル改善などの議論にメンバーを少しずつ巻き込んでいけるようになった。苦しかったが楽しかった!
(以上の試行錯誤には、これまで研究以外の場で培ってきた自分のチーム感覚がとても役に立った。グローバルヘルスは総合力だ。)


■学び
:ウガンダ滞在期間を通して、フィールドワークプロジェクトの基礎をローカルステークホルダーから学んだ。当たり前だが、彼らはそれのプロだったし、コラボレーションの頼もしさを実感できた。集めているデータの背後にあるフィールドコンテクストの複雑さに圧倒されたし、すべての論文は分かったことのほんの一部しかpaperにしていないんだろうな笑 と思うようになった。
USのPIは、現地のジュニアリサーチャーがやる気を増し、side-paperを書こうとしている点を(main paperの分析の質が上がったとかよりも)、私のチームへの貢献として喜んでいる。研究者としての評判を上げるのは、必ずしもその人個人の成果だけではないところが面白い

また、研究の過程が現地の州政府にとっても、きっと良い刺激になっている、と実感した。副産物を彼らのキャパシティビルディングに役立てていただく機会は多かったし、介入の共同実行を通して「現場と政府」の接触機会を作り出せており、きっと政府チームが現場を再発見する機会があったと思っている。お世辞かもしれないが「eye openingな時間があった」と州政府代表者に伝えられ、「thats our words」とlocal PIが締め括ったあのディスカッションを私は一生忘れない。
研究プロジェクトは建て付けが「ドナーと被支援者」ではないことがやっぱりとても良い。"そもそもは私たちが見つけたいエビデンスのために動いている"という研究の根本姿勢がコラボの旨みを深めている、と私は思う。うーーんグローバルヘルス研究面白いぞ!!


ーー4) Digital Health & Primary Healthcare

フェーズ:1-2 - stakeholder engagement, idea generation
参画経緯
:プロジェクト2の先生から「あなたの参画で面白くなりそうな新しいgrantがある、一緒にやろう」と誘われた。まだかなり卵の段階を進めているので詳しくは書けないのだが、無事grantが決まり、0→1の難しさと日々向き合っている。

その他の振り返っておきたい・伝えたいこと

このセクションでは、総括・およびPhD受験の話に行く前に、自分の背中で伝えられるかもしれないと思っていることについて書きます。少し熱苦しいテンションになるので苦手な方は飛ばしてください。

ーーー「マスター生は金づるか?」に立ち向かいカリキュラムを超える
語弊を恐れず書くが、特にHopkins・ハーバード・コロンビアに代表されるマンモス修士プログラムを持つ大学のMPH/MSPHに合格することは、実はそんなに難しくない(出願プロセスを完了させることとお金の工面は大変です)。門戸をそれなりに広げて、大学は修士プログラムから学費を集めているし、短い修士留学の中でお客様であることを乗り越えるには結構な野心が必要だ。

私は、2年間を通して150程の単位をとり、現時点でのGPAは4.0だ。
授業もやりきったからこそ自信を持って言えるが、プロジェクトでの学びは授業のそれを軽く超えるし、カリキュラムを超える一つの方法だと思う。

GPA 4.0より価値のある 実践による成長機会が留学にはあるよ!!
実践パートは修論プロジェクトとして最後の数ヶ月やるだけなんて、損だぞ!
‥…
と(特にアジア人の)留学生に伝えたい。
ちょっと(ちょっとね笑)成績落とそうが、こっちにベットする留学生を応援したい。

私が持てた実践機会には、授業の中のグループワークとは比べ物にならない緊張感があって、最高だった。修士留学生仲間よ、GPAばっか見てないで、実践機会にたくさん飛び込もう!!!!!

余談:研究者志望じゃなくてもリサーチプロジェクトをやってみるべきか?
私自身はアカデミア外のJob Huntingをこの留学中にはやっていないので多くは言えないとだけれど、30人のMSPHコホートのうち直接進学を希望したのが私を含む2人で他の全員のJob Huntingを見ていた身として言えることを書く。
一番上手くいってそうなパターンは途中の夏休みを就職希望先あるいはそこと強いコネクションを持つ場所でインターンで過ごして、パートタイムのインターンをMSPH2年目を通して続けつつ、そのまま就職に繋げるパターンっぽい。個人的には下記の理由から1つくらいは研究プロジェクトに手を出してみて損はしないんじゃないかな、と思う。ケースバイケースだろうけど!
・上記のリサーチでの学びは国際機関志望などの方でも意味のある学習機会だと思う
・卒業後、留学の成果として学位以外に全員が手にすべきは少なくとも1枚のHopkins関係者からの人生を通してworkする推薦状(=メンター)で、おプロジェクトで修羅場を一緒に超えた方がその中身が濃くなることは間違いない 
 (就職ケースでもグローバルヘルス界において推薦状はとっても重要です。) 

ーーー開示しておくべき、恵まれていた点
私がやり切れた背景にある開示しておくべき点を4つだけ!

  1. 孫正義育英財団にお世話になり、お金の心配をしなくてよかった。ありがとうございます。奨学金は本当に大事。

  2. 一橋で修士レベルの計量経済が習得できており、Biostatsはregressionまでの部分でつまずくことがなかった。(統計学分野の学習が未達なまま留学に来たが将来は量的分析をやりたいという方には、授業のeffortを上げるように勧めるかもしれない… 「ちゃんと理解する」が意外と遠く、適当にやると後々痛い目を見ると思う。私も、引き続き頑張る。)

  3. 最高のパートナーと家族から遠距離のメンタル支援を受けていた(ありがとう)。家の壁には唐突に父から届いた「無理するなよ笑」とだけ書かれたポストカードが貼ってある。身体と心の健康は留学の基本!

  4. コロナで、集まりが制限されている時期が多く、必要以上の「友人づくり」のネットワーキングプレッシャーがなかった。(まぁ、試験後にバスケを一緒にして、誰かの誕生日があればピザパーティをするくらいの仲の30人のコホートと、一生の友人だなと思える人が片手程いるので、個人的に満足している。)


ーーー失敗はあるか

ないわけないよな〜〜
面接で壊滅的に英語が伝わらなくて凹んでNetflixと徹夜した日もあるし、割と頑張って作ったプレゼンを「うーーん、的を得てないので作り直し」と言われて練習不足で本番になり紙のカンペなしには話せなかったプレゼンもある。
だからなんだ!打席に立つことに意味がある!
苦労してない天才なんて、この世にいないから夢見るなって25歳くらいまでに、全員悟るでしょう!!!



ーーー授業と研究プロジェクト以外には?

ボルチモアを知ろうと努めた。治安のせいで色々なイメージがある街だが、私は結構好きになれた。地域コミュニティの取り組みの会合に出て(レガシー住民の方がHopinsをいかに恨んでいるかを聞いて)みたり、SOURCEのコミュニテツアーに参加したりして、「あっちは危ないよ」の一言よりはこの街の歴史と人種格差と、今も続く困難・そして魅力について話せるようになったと思う。(気になる方は”The Black Butterfly: The Harmful Politics of Race and Space in America”という本をぜひ読んでください。)
難しいのだけど、アメリカに住むものとして知るべき背景があると思うし、ここに来てよかったなと思っている。地域のおじさんがやってる卓球クラブにたまにいくのだけど、ボルチモア訛りの英語はいまだにあんまり聞き取れない笑 あと1年あったら、ボルチモアのために自分のスキルでできることをプロジェクトとして立ち上げたかったな〜。

あとはproposalが選ばれてInnovate4Healthというidea competitionに参加した。楽しかったけど、緊迫感は研究プロジェクトの勝ちかな!

それから、Diversity&Equity&Inclusionへの貢献を考えることはきっと私の世代には必須になるだろうから、学内のIDAREに所属して、誰が何を進めようとしているのか聞いた。正直、難しい。特にグローバルヘルスだと脱植民地主義の文脈でauthorshipとかを議論するのだけど、とはいえ若い私にはpublicationが必要なのですが、、って思う。
でもこの葛藤って、gender disparityについて議論するときの男性側の気持ちに似たものがあるんだろうなって思う。残酷な言葉になるが、どちら側も経験できる「先進国の女性」というアイデンティティーは向き合い甲斐があるし、今後もDEIを諦めない人でありたい。
学校への恩返しに、今後の留学生にとって為になることができればいいなと思って、writing centerの立ち上げをした。今年パイロットでうまくいけば来年も続くらしい。disadvantaged って感じてる学生の力になるような組織の前進の一助になれていれば嬉しい。

ーーーグローバルヘルスって器用貧乏?アカデミアなん?
わかる。マルチタレントと器用貧乏は紙一重だ。
過去の(他校の)MPH留学者がグローバルヘルスを専攻に選んで、何も自分に専門性は残らなかった、と悔いているのをみたこともある。弊学でも、語弊を恐れず言うと、反面教師だなって思ってしまう方にいくらか出会った。Global Health PhDはHopkinsとUoWを除いてまだまだ新しいprogramが多いので そもそも模索中なのだと思う。

でも!! 2年の留学を通して私にはグローバルヘルスのアカデミックな専門性は確かに存在すると思えている。

Econ PhDや Epi PhDなどtraditionalな博士に進んだ友人といつだって研究者としての良い議論ができるように、時に助けてもらいながら、しっかり「専門性」に向き合っていきたい。 頑張るので、背中をみていてもらえれば嬉しいし、その専門性を求めて留学にする人が成功することを願っている。


2022年9月:PhD受験準備

夏休み終わりの9月ごろ(留学開始から13ヶ月経過)、ウガンダからアメリカに帰ってきてついにPhD受験準備を本格スタートさせた。
(正直、少し取り掛かりが遅いのだが、ウガンダでフィールドに夢中だったので仕方ない笑)

出願完了の12月までに全てのプロジェクトを少なくともカンファレンスでの発表まで持っていきたかったので、密なプロジェクトと2年目のコースワークと出願の同時進行でこのfallが一番キツかった。

1) 推薦状4通、
2) "大目標→RQと短期的アプローチ→トレーニングギャップ"を繋げるSoP、
3) 受験用の特別版 CV 
を色んな方のご支援を受けながら完成させ、指導教官になって欲しい人への事前のラブコール連絡と並行しながら、合計10プログラム出願した。

面接に進めたのが 7/10プログラムで(面接は大体1月後半〜2月前半、すべてzoom)、現在トップ志望プログラムのひとつだったUNC Chapel Hillを含むいくつかの合格を受け取った。
ただ、Hopkins IH PhDは、waitlisted でまだ手が届いていない。。どうなるかな。。

余談:Hopkins IH PhDについて、中からわかった非公式情報を少しだけ記録すると、近年はDepartment of International Health全体で約15人/年のPhD生に合格を出していて、全体で4つのトラックがあるので(詳細はこの記事)、私が出願したGDEC PhDは今年は3人の枠だったようだ。
GDECの例年の合格者を見ると 1)他校出身者 2)留学生 3)Hopkins出身者 の3種類の学生をバランスよく取っているっぽい。つまり、留学生でHopkins所属の私のライバルになるのは、
2)の世界中の留学生(中低所得国出身でフィールドとのコネクションをリサーチスキルに合わせて持っているような人がグローバルヘルスPhDではどうしても強い) か、 
3)の基本的にマスター卒業後3年くらいHopkinsのリサーチセンターで働いてongoing worksをpublishしてからくる猛者たち
の二択である。他のトップスクール同様、厳しい戦いになるので、挑戦したい人はこういうライバルにどう勝つのかを戦略立てながら挑戦してください!


ーーーPhD受験のノウハウ?

受験のノウハウはあまりにもナマモノで、ここに書きたいことが多くはないのだが、
まず、Xplaneという大学院留学コミュニティへのslackへの加入及び大学院受験特集ページのチェックをお勧めしたい。2023年時点では、メンバー向けにSoP執筆支援制度などもやられていて素晴らしいリソースが揃っている。面接対策はこのYoutube動画がお勧め!

また、すべての受験者が既にかなり頑張った状態で受験に臨むと思うのだが、過去の達成事項の説明よりも、目標が高いからこそ何にstruggleし、今の自分に足りていないもの(トレーニングギャップ)をどう捉えているのかを魅力的に書くことに注力すべき、とのフィードバックを私はいくつか受けて、とても良いご助言だったと振り返っている。

なお、「どの書類が一番大事か?」みたいな質問を聞きがちだし、私も聞いていたけれど笑、あまり的を得ていなくて、
審査者が求めているいくつかの資質に対して、書類全体を通して「何が特にいいところだと目につくか?(それに対して証拠でダメ押し出来ているか?)黄色信号が点るとしたらどこか?(その悪印象フラグを回収できるようなフックをデザインできているか?)」みたいな感じで、審査側が抽象的なチェックボックスを持って評価してくるようなイメージで工夫を積み重ねるのがいいのかな、と思う。

あとは、最終的には人と人の相性の判断なので、事前コンタクトや信頼蓄積を大事にすべし。

私と似た関心の方のPhD出願準備の相談はpay forward の信念で、積極的にお力になりたいと思っているので、もっと具体的な話が聞きたいという方はTwitter DMなどでご連絡ください。

12月以降:出願も終わったしプロジェクト三昧

大体のPhD出願締め切りが12/1なので、12月以降は面接をこなしつつ、気持ち新たに1年目にとり逃したコースを取りつつ、プロジェクト/ライティング三昧の日々を過ごしている。修論の締め切りが4月下旬なので本当にもう少しでおしまいだ。
この19ヶ月で多くのことを見て聞いて読んで話して、すごく色んなアイデアが頭の中に渦巻いている(研究の種と呼ぶには小さすぎるものも多いけど笑)。飛び込んでみて見える世界があるんだなぁって思う。

まとめ:留学で人生は変わったか?


たった2年の留学で、きっと私の人生は変わった。
しっかりと、これまでの歩みの延長線上に、でもずっと遠くまで来たなぁと思います。

たくさんの方にサポートしていただきました。ありがとうございました。

十人十色の正解があり、みんなそれぞれに挑戦しているMPH/MSPH留学体験談の、濃い1ページになっていれば嬉しいです。


留学振り返りその3は、5月の卒業したあたりで、履修した授業総まとめを最後にかければかきたいなと思います。一旦の卒業まで、あとちょっと頑張って、夏休みは遊ぶぞ!

MSPH留学をふりかえり その2:おわり。

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