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新作「Spring」2点と技法

今月17日より参加させていただきます
RYU GALLERY「それぞれの春🌸五人展」にむけて新作2点を仕上げました。



テーマに合わせ春らしい作品をと考えていたところ

画像元・ぱくたそ

こういった淡いフィルターがかかっているようなイメージがわいてまいりました。そのイメージをもって制作にはいりました。


Spring-桜-(2024)





Spring-アカシア-(2024)






あいもかわらず作品の説明をしてしまう小心者でして、少しお付き合いいただけたらと思います。

F6/帆布地
使用素材は無印で買い占めたディスプレイとして役目を終えた綿糸。
絹糸、ポリエステル糸。


技法

綿糸をほぐすことで”ワタ”として使用しました。
いわばモデリングといった感じでしょうか。

絹糸は極めて繊細なため、メーカーなどにもよりますが日常的に使用する洋服等の縫製に向きません。そのため、手元にたくさんあるものの、あまり活用しないまま年月が経過しておりました。年月経過による劣化が早いのも絹糸ですので、活用方法を模索していたところ、今回の作品のイメージに合うことに気がついたのです。

では、どのように使用するのか?
個展「土は土に、灰は灰に、塵は塵に」(2022)から作品に用いているのが
「縫い目に糸を食わせる」
こちらの技法です。技法ともいえないかもしれません。
縫っているときに糸をおいて糸ごと縫製するだけです。

この方法で制作したのが昨年の個展でも再度展示した

Arisa Mistui 「衣」(2022)

「衣」です。

透かすと

縫い目以上の糸(赤)が存在しているのが分かりやすいと思います。
つまり縫い目以外に、糸が確認できるところは食わせてある箇所です。

透けさせず見ると

下糸の縫い目しかない、こういったことができます。
少し表の食わせた赤い糸が透けていてピンクぽくなっていますが。

実際にご覧いただくと伝わりやすいのですが、説明するとなると
なかなか難しいですね。

さらに昨年の個展「序奏」の作品では水溶性の生地を使用したことから、生地自体は溶解するのですが、食わせた糸が支持体の代わりにもなるので、生地を溶かした後でも加筆ならぬ、加縫が可能でした。


裏側の封印

「衣」も昨年の作品も、裏側をご覧いただける作品でした。
今回は仕上がってからも、少し悩んだのですが、額装をお願いしました。
最初は木枠に張る予定でしたが、仮張りしたところ
どうにも違和感が抜けませんでした。

この作品は額装すべきである、と判断をし
お世話になっている田方額工房さんへ依頼をだしました。
いつも通り丁寧なお仕事いただき、満足のいく作品となりました。

ただ額装する、ということは”裏側を封印する”となります。

絵と違って、縫製には”裏側”が存在します。例えば、何かしらのキャラクターが縫われている靴下を脱いで、裏返すとキャラクターの顔が悲惨な状態だったりします。あのような感じで、必ず”裏側”が存在します。

封印をするまえにアカシアは画像で記録しました。

Arisa Mitsui「Spring-アカシアー」裏(2024)

少し暗くて見えにくいですが
こちらが、額装により、もう誰の目にも触れない”裏側”です。
無論、額から外せば見れますが、外すことを前提として額装をしていません。

裏には裏の”春”がいました。


封印されても作品の演出はしている


上記の画像で下糸を色々と変えているのがこれでわかると思います。
この理由は、おすすめできる方法ではありませんが糸調子をあえて狂わせて、”表”にひびかせているからです。
ひびかせる、つまり上糸をあえて”つらせて”います。

本来は、表からみて縫い目が
ーーーーーこういったようになるのが正解なのです。
しかし
ー・ー・ー・こういったようにさせます。(・は下糸)
ミシンやり初めの方だと、この上糸が強すぎるといった状態を経験する方もいらっしゃるかもしれません。ただ近年のミシンは自動で調節してくれるようなのであまり経験がない場合もあるかもしれませんが。

1mm程度の下糸が点画のように静かに表の”春”を演出しています。



個展や展示の際に作品を前にして、ぺらぺらと解説をさせていただくことはマストですしInstagramにも度々解説させていただくのですが
あまりご興味はもっていただけない話だろうと省略させていただくこともしばしございました。
ただ、ヒストリーの一つとして、今回noteに書くことにいたしました。

ミシンが使える人であれば、誰でも思いつき、誰でも真似できる技法です。
この技法で何かしらの絵を描く方も最近増えてきたように見受けられます。

でもその仕上がり、作品のメッセージ性は、全く違う。
絵で例えるならば、同じ画材や絵具を使用して描いたとしても、同じ絵にはならないように。
とくに心象で表現するようなってからは、それを明確に感覚でも捉えています。

そんな新作、ぜひRYU GALLERYにてご高覧いただけましたら幸甚です。
よろしくお願いいたします。

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