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自閉症息子&イヤイヤ期娘との移動で感じた危機感…その時私は

息子と娘と私と移動支援

私の息子は、重い知的障害を伴う自閉症です。
今年の4月から、小学部の1年生として特別支援学校に通い始めました。
私には息子以外に娘もいて、娘は保育園に通っています。

息子が幼稚園と療育に通っていた頃、娘はまだ0~1歳だったので保育園には通っていませんでした。
だから私は娘を抱っこ紐に入れて、娘と息子と3人で幼稚園と療育に通っていたのです。

でも今、私は娘と息子と3人で歩くことはほとんどありません。

朝の息子のスクールバスの送迎は、夫が遅い出勤の日は夫に家で娘をみてもらって私1人出かけます。
夫が早い出勤の日は、移動支援という福祉サービスを利用して、ヘルパーさんに息子を連れて行ってもらいます。
(※移動支援では通園や通学の付き添いなどは、「特例」をつけての利用になることがあります)

移動支援は、1人で出かけることが困難な障害児、障害者などの社会生活上必要不可欠な外出や、余暇活動などのための外出に、ヘルパーさんが付きそう福祉サービスです。

とても地域性の高い事業なので、対象となる利用者、支援の方法、外出先の範囲、費用の負担などは地域ごとに異なります。
そのため、私は利用できたけれど、私と同じような状況の全ての方が利用できるサービスではないかもしれません。

でも、こういうサービスの形があるということ、そしてそれをどうして我が家が利用しようと思ったのか、利用してどうなったのかという話を、お伝えしたいと思います。

我が家が移動支援の利用をはじめたワケ

息子と娘は、障害の有無以前に性格が真逆です。

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息子は、人や外の世界に対する興味が非常に薄く、性格もおとなしくて、全体的に動きが少ない子です。
極度に慎重な性格から高い所が苦手で、公園の遊具などでも遊びたがりません。

ただ、歩くのは好きなので、ただひたすら黙々と、どこまでも歩きます。
幼稚園時代も、1時間くらいであれば休憩なしでぐずらずに歩き続けましたし、毎朝問題なく徒歩通園していました。

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ただし、これは「目的地がはっきりしている」「寄り道をしない」ということが前提です。

息子は自分のペースを崩されるのが大嫌いなので、他人の意向で突然止まったり、行き先が変わったり、どこへ向かっているのかわからなくなることを非常に嫌います。
私が道に迷うと途端に癇癪を起こすので、方向音痴の私は、初めての場所に息子と一緒に行く時はとてもヒヤヒヤします。

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対して娘は、好奇心旺盛で、出会う人出会う事象すべてに興味津々で歩きます。
ただ道端をハトなどの鳥が歩いているのを見ても、いちいち声を上げて立ち止まるのです。

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そして、寄り道が大好きです。
公園も大好きなので、見かけるといつも寄りたがります。

でも、決まった道をひたすら歩くのはあまり好きではありません。
ちょっと違う道にそれてみたり、面白いものがあったら立ち止まって観察したり、ちょっと中に入って行ったりと‥‥‥なかなか目的地に着かないのです。

ここまで読んだらみなさん、おわかりかと思いますが、私が2人を連れて外に出ると、こうなります。

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長引けば自閉症の癇癪とイヤイヤ期の癇癪が同時に爆発し、カオスの様相‥‥‥。
こうならないために、私はなるべく息子と娘、2人を同時に連れて移動しないように、計画して動くようになりました。

忘れられない、自分1人で見ることに限界を感じたできごと

今では子どもを連れての移動問題が大きく改善された私ですが、移動支援という言葉を初めて知ってから実際に利用するまでには、1年以上のタイムラグがありました。

私の周りの障害があるお子さんは移動支援を使っている人が多かったですし、私にとって移動支援は、割と耳慣れた言葉でした。
息子が対象であることもわかっていたけれど、なんとなく、そこまで必要性を感じていなかったのです。

でもそれは、当時は娘がまだ赤ちゃんで、抱っこ紐の中に収まって移動できていたからでした。
娘が抱っこ紐の中に入っていれば、私は娘と一体化して、息子のケアに専念できたからです。

でも、今でも忘れられない決定的なできごとがありました。

それは、コロナ禍による1回目の緊急事態宣言が発せられ、幼稚園も療育もすべて休園、息子と娘と3人で毎日過ごさなければならなくなった時のことです。

ずっと家の中にいること、いつものルーティンが壊されたことで、子どもたちは明らかにストレスがたまっていました。
私は2人を外に連れ出そうと、近所の公園に行こうとしました。

家からほんの2.3分の距離だったので、娘も抱っこ紐には入れずに歩かせていました。
娘も1歳後半になり、タイミング的にも自分で歩いて移動したい気持ちが強くなっていた頃だったからです。

ですが、家を出てすぐに、娘は立ち止まりました。
道端の何かに興味を持ったのでしょう。
しかし、息子はそれを許せません。
先に進みたくてしょうがない息子と進みたくない娘。
でも、2人とも手を離すことはできません。

次の瞬間、息子は私の手を振り払い、道路に飛び出しました。

幸い、車が来ていなかったので、息子は今も無事に私の許にいます。

でも一歩間違っていたらどうなっていたか‥‥‥背筋が凍るような思いをしました。

息子は自閉症だけれど、衝動的に飛び出したりはしないタイプです。
だから私にも油断はありました。
でもそれからしばらくは、怖くて私1人で息子と娘を連れて出かけることはできなくなりました。

障害児だけでなく間接的にきょうだい児も助けている福祉サービス

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息子が道路に飛び出す事件があって、私は今後、子どもたちを安全に外に連れ出すためにどうしたらいいか、お世話になっていた児童発達支援センターや児童相談所の支援員さんに相談していました。

私の実家も夫の実家も県外ですし、夫は仕事が忙しく、平日の日中、子どもを見守ることができるのは私だけです。

コロナで通園先が休園になったように、いつ、何が起こるかわかりません。
親族の手助けがないのなら、ありとあらゆる「他人の手」を借りられるように環境を整えておきたいと思ったのです。

支援員さんの提案で、移動支援と、あともう一つ、短期入所という福祉サービスも勧められました。
短期入所は少し趣旨がズレることと、ちょうど良い施設が見つからなかったこともあり、まだ利用したことはありません。
でも移動支援はこれを期に、本格的に利用に向けて動き出しました。

支援員さんの大きなお力添えもあり、良い事業所に出会え、今は移動支援という福祉サービスに支えられながら生活しています。

夫が早出勤の平日は、息子はヘルパーさんと一緒に家を出てスクールバスのバス停に向かい、娘は私と2人でゆっくり歩いて保育園に向かいます。
休日や放課後などには時々、息子はヘルパーさんと2人でかなり遠くまで歩くこともあります。

娘は保育園の行き帰り、大好きな公園を通って鳥さんを探しながら歩き、時々違う道を通ったりしながら楽しく通園しています。

移動支援のヘルパーさんは、制度上は息子に対するケアをしてくれる存在です。
でも私にとっては頼れる育児パートナーでもあり、娘にとっては間接的に楽しい通園時間を作ってくれる、私たち家族みんなにとってかけがえのない存在です。

福祉サービスって、役所から手渡される説明書きを見ても目が滑ってしまってあまり頭に入ってこなかったりしませんか?
しかも難しい言葉も多いので、なんとなく検討するのがめんどくさくなってしまいがちだと思います。

でも、「そのサービス、実際に使うとこんな感じだったよ!」「こんなシーンで困っていたから使ったよ!」というリアルな体験談を聞くと、とても身近に感じられるのではないかと思いました。

今回お伝えした移動支援は、地域やその人の状況によっては、必ずしも誰もが使えるサービスではないと思います。

でも何か困ったことがあった時、それを1人で抱え込まず、福祉サービスを利用したり、誰かに相談して解決策を見つけるということが、もっと気軽にできる世の中になるといいなと思います。

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