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<本日のビール>Yulli's Brews, on tap!

先日インスタグラムで繋がったChihoさんを訪ねて、アレクサンドリアへ向かった。ChihoさんはYulli's Brewsでお酒を造っているブルワーだ。

クラフトビールのメッカ・シドニーで日本人がお酒を造っている、という事実を知り、僕はすぐさまChihoさんにメッセージを送った。かなり一方的だったと思うが、彼女は快く受け入れてくれた。

Chihoさんが生粋のボディボーダー(そして旦那さんもサーファー)だったこともあってすぐに意気投合し、何度かのメッセージをやり取りしたあと、ブルワリーを訪ねることにしたのである。

男前なタップルーム

Yulli'sは、シドニーパークのすぐ横、アレクサンドリアの工場地帯にブルワリーを構えている。

T8ラインのマスコット駅から、スクラップ工場や自動車整備場などが立ち並ぶかなりインダストリアルな雰囲気のストリートを北上していく。日曜日ということもあって工場は稼働しておらず辺りが静まり返っている中、突然かなりの音量で鳴り響く音楽が耳に入ってくる。そこが、倉庫を改装したYulli'sのブルワリーである。

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マイクロブルワリーとはいえ、人の背の高さの倍以上あるデカいファーメンターが6、7基あるからかなりの迫力だ。それらを見下ろすような形で、2階にテーブルスペースがしつらえてある。4、50人は入れるだろうか。ブルワリーが主体なので、工場の雰囲気が剥き出しの無骨なタップルームである。ハッキリ言ってカッコイイ。

Norman Australian Ale

まだChihoさんが到着していなかったので、まずはYulli'sのシグネチャーであるNormanをいただく。

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ABV 4.9%
IBU 29

キリッとした苦味と、洋梨のようなアロマが爽やかなペールエール。比較的ライトなため、グイグイいける。やはりビールは新鮮なものをタップから飲むのが一番美味しいと感じる瞬間である。

Yulli'sは、もともとサリーヒルズでヴィーガンレストランをやっているオーナーが始めたブルワリーということで、フードもヴィーガンメニューだし、Chihoさん曰く、ビールも「ヴィーガンビール」なんだそうだ。どうやらフィルタレーションに秘密があるようなのだが、これについて理解するにはもう少し勉強が必要だ。

そうこうしているうちにChihoさんが合流。仕事があるようだったが、僕らのテーブルについて一杯付き合ってくれた。

Dolly Ardlin Berliner Weisse

彼女がDollyというサワーエールをオーダーしたので、僕も便乗して同じものを頼む。

ABV 3.3%
IBU 10

名前からしてドイツスタイルのヴァイスなのだろう。グァバを使用しているらしく、ピンクがかった色味が美しい。かなり酸味が効いていて、夏、汗だくになった時に一息に飲み干したいビールだ。(でも写真撮り忘れた…)

日本酒ブルワーになるまでの興味深すぎるストーリー

Chihoさんは、想像通りの(いや想像以上に)オープンマインドな方で、とても初対面とは思えないほどリラックスして話すことができた。ヴェニューで働くスタッフからも愛されているのだろう、通りがかるスタッフは皆、Chihoさんを見かけると親しげに声をかけ、ハグをしていく。

そして、何より彼女のストーリーは本当に興味深い。

オーストラリアにワーホリで来て以来、24年間ブロンテビーチの同じフラットに住み、ご主人ともそこで出会い。2人のお子さんを育てつつスシトレイン(回転寿司店)で働きながら永住権をもぎ取り。独立してパブリックスクールのカンティーンにお寿司を届ける調理人になり。ICUに入るような大病を患い、そこから生還し。病気がきっかけで発酵食品に興味を持ち、様々な発酵食品を自分でつくり始め。その中のお酒が、ひょんなことからYullI'sのオーナーの目に留まり。そして気づけばYulli'sでフルタイムの酒&コンブチャブルワーになっていたという。それがほんの2年前のことである。

※訂正:
ご本人から指摘が入りました。永住権をもぎ取ったのは、スシトレインではなく、独立されてからでした。病気を患ったのは、スシトレインで働いているときで、それがキッカケでスシトレインを辞めて独立されています。

自分がChihoさんと同年代ということもあるのだが、色々とインスパイアされる生き様だ。彼女は心底オーストラリアを愛していて、それがまたいいのである。話を聞いている僕らに、こんな時期で大変だったけど、移住してよかった!と心から思わせてくれる。

おまけに、我が家が移住前の準備でオーストラリアに来た時にステイしたブロンテビーチのエアビーのオーナーは、Chihoさんの息子さんの同級生のお母さんだとか。なんという偶然だろう。

Chihoさんの話が面白すぎて、横で娘たちがやいのやいのうるさかったが、気にも留めずにおしゃべりに没頭してしまう。

Cloudy Sake(濁り酒)

そんな話を聞いたら、やっぱりChihoさんが醸したお酒を飲まなくてはなるまい。そもそも何百と存在するシドニーのブルワリーの中でも、クラフト日本酒を提供しているところなど他にはないだろう。

僕が日本酒をオーダーしようとしたところ、Chihoさんがそれを遮って、お酒をご馳走してくれた。

本来は「Clear」と「Cloudy(濁り)」の2種類のお酒があるのだが、あいにくクリアはストック切れということで、濁りをいただく。

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この濁り酒、開栓時がまたショータイムなのである。現場では撮り損ねてしまったが、Chihoさんが提供してくれたこちらの動画を見て欲しい。

開栓前はボトルの中で液体がクリアな部分と、沈殿した濁った部分に分離されているのだが、酵母がボトルの中で生きているため、開栓すると同時に、深い眠りから目覚めたかのごとく盛大に発泡し始め、まさにもくもくと湧き上がる雲のようにボトル全体を白濁した色に染めるのだ。

その味はというと、今まで飲んできたどの日本酒とも違う。例えるならサワービールに近い酸味と炭酸感。

聞くと、酵母にはビール酵母を、そして材料は全て地元で手に入るものを使っているという。なんと米などはサンライスのミディアムグレインだそうだ。我が家のキッチンにもストックしてあるあれで、このお酒が!

まさにクラフト、Chihoさんオリジナルの味わいだ。

Big Willy Double IPA

最後の一杯には最新バッチのBig Willy Double IPAを選択。

(これも写真忘れた…のでインスタで)

ABV 8.0%
IBU 40

ABV8.0%とややストロングなものの、芳醇な香りとスッキリした飲み口=かなり危険なビールである。

こうして、久々にオンタップのビールとトークを3時間ほど堪能することができた。

また来なくては

Yulli’sのビールは全てスタッフなどブルワリーに関わりのある実在の人物がインスピレーションになっており、ボトルショップではその独特な味わいの似顔絵がよく目立っている。

ブルワリーの壁には、スケートのデッキにそれらのアートを施したものが飾ってあり、その中にはChihoさんの似顔絵もあった。

少し前に「SAKE Double IPA」という、Chihoさんの日本酒とDouble IPAのハイブリッドというめちゃくちゃ興味深いビールを限定で造ったことがあるそうで、その似顔絵が缶にもプリントされていたのだ。今は飲めないのが残念なことである。

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ちなみに、この写真を撮ってくれたスタッフのティリーは、ジャズシンガーとしてブルワリーで平日の夜に歌っているという。

今度はそれを聴きにまた来なくては。

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