<本日のビール>4 Pines Brewing Pacific Ale ——ブランド名の由来で知る、戦争の記憶
2020年5月22日(金)
【Day 64】
最寄りのボトルショップで、4 PinesのPacific Aleが2 for 38(2パックで38ドル)になっていた。
「ホームビア」と決めた割には、まだ飲むのは2種類目。しかも、このパシフィックエールは、恐らく4 Pinesの中でもっとも定番となる商品と思われる。
個人的に、ラベルの色味が完璧に好みの一本だ。
4 Pines Brewing Pacific Ale
ABV 3.5%
IBU 15
ビールの色はややヘイジーなゴールデン。サーフィン後にガバガバ飲むのにちょうどいいドリンカビリティを備えた、ライトで爽やかなビールである。
ギャラクシーホップと、それより少しライトな香りを放つヴィックシークレットホップによって、「フルーティ、フレッシュ、フローラル」の3Fフレーバーを実現していて、飲み口はBalterのCaptain Sensibleに近いものがある。
レシピまでは記載されていないが、使用しているモルトについては全て公開されているので、達者な人ならABVとIBUから逆算してホームブルーイングでも再現できるだろう。
ブランド名に込められた想いとは
ちなみに、なぜマンリーを拠点とするブルワリーが「4 Pines」と名付けられたのか。
このブランド名を初めて聞いた時、僕は、ブルワリーの前に松の木が生えていたとか、そういったことをイメージしていたのだが、実は全く違って、そこにはちょっと興味深いストーリーがあった。いや、正確には、そのストーリーがあることで、ブランド名に採用されたというべきか。
彼らはもともと「地元であるマンリーにうまいビールがない(Where do we get a decent beer?)」という“社会課題の解決”のためにブルーパブを起ち上げた。その時に考えていたのはどストレートに「Brew pub in Manly」というものだったそうだ。しかし、会社名にするのにブルーパブでは合わないし、「Manly Brewing Company」だとちょっとダサい。
そう考えた彼らは、マンリーと言えば何か?マンリーを一言で表す“synonyms(同義語)”を探した。そして、ビーチにずらりと生えているノーフォーク・パインの木がピッタリなんじゃないかと思い至った。
加えて、彼らはノーフォーク・パインにまつわる第二次世界大戦の話を聞いた。
知らなかった戦争の史実を教えてくれた「4 Pines」
1942年当時、シドニーのハーバーには、「midget subs」と呼ばれる日本軍の潜水艦が侵攻していたそうだ。そして、外洋に面しているマンリーのビーチでは、沿岸を守るマシンガンを設置するために、ノーフォークパインを伐採したのだそうである。
そうした戦争の記憶が過去のものとなると共に、再びノーフォークパインがビーチフロントに整然と立ち並んでいる。
彼らは、こういった歴史的な出来事も含めて、ノーフォークパインこそがマンリーを起源とするブルワリーとして、ローカルの人々、あるいはオーストラリア中の人々に認知されるブランド名になるだろうと確信した。
これが、4 Pinesの由来だ。
正直なところ、サーフィンと関連が深くレイドバックな雰囲気に惹かれていたところに、実はブランド名の奥底で日本軍が少しだけ関係していると知って、日本人としては少しだけ気が引けるところがないでもない。
しかし、パールハーバー然り、現代を生きる我々が生活するにあたりそこを気にしだすことは行き過ぎだ。
前向きに考えれば、知っておくべき史実に気づかせてくれたのもまた、4 Pinesのビールだった、というわけである。
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