ハイスペック男子争奪戦

空港のラウンジで繰り広げられる　　　　
20代女子の恋愛バトル。

<登場人物>

林香奈(21)フリーター
佐藤まどか(21)フリーター
藤井隆(21)大学生

〇成田空港全景
　　　様々な国籍の人々が
　　　スーツケースを手に行き交う。

○同空港内・
　ドリーム航空ファーストクラスラウンジ前
　　　
　　　ドリーム航空ファーストクラスラウン
　　　ジと英語で書かれた看板。
　　　品のあるビジネスマンが自動ドアを
　　　入るとエアラインの制服を着た
　　　美人の女性職員が大理石のカウンター内　　　
　　　で微笑む。

女性職員「ご搭乗券を拝見いたします」
　　　ビジネスマン、無言で搭乗券を差し出　　　
　　　す。
　　　搭乗券の右下にダイアモンドメンバーと　　
　　　書かれた文字。
女性職員「二階堂さま、
　　　　　本日もご搭乗ありがとうございま
　　　　　す、どうぞごゆっくりおくつろぎく
　　　　　ださいませ」

○同ダイニングルームン中
　　　受付の女性とは違った制服を着ている
　　　ショートカットの髪型の林香奈(21)が
　　　客席からシャンパングラスを下げて
　　　いる。その後ろから声をかける
　　　佐藤まどか(21)。
　　　長い髪をアップにしている、
　　　わかりやすい美人。

まどか「香奈、今日から新しくバイト入った
　　　　大学生のOJT私がやることになってた
　　　　んだけど、変わってくれない？」
香奈「いいけど、なんで？」
まどか「ハハハ、
　　　　私のタイプじゃないんだよね」
香奈「何それ？」
まどか「下げ物私がやるからさ！」
香奈「・・・まぁ、別にいいけど」
　　　
×××

○同ダイニングルーム・ビールサーバー前
　　　ビールサーバーのハンドルを引きなが
　　　ら説明をしている香奈。
　　　それを聞いている藤井隆(21)。
　　　香奈と同じぐらいの背の高さで小太り。　　
　　　愛嬌のある顔をしている。

香奈「ビール切れのサインが出たら、
　　　この画面の上を長押しして、
　　　後ろに繋がっている樽を交換するのね」
　　　
　　　真剣に聞いている藤井。

○同ダイニングルームキッチン内
　　　洗浄係の制服を着た職員や
　　　キッチンの制服を着た職員が
　　　忙しそうに行き交う。
　　　管に繋がったビール樽の前で
　　　藤井に説明している香奈。
香奈「で、この上のレバーを回して外すんだ
　　　けど・・・」
　　　レバーが固いのか一生懸命回そうとし
　　　て、もがいている香奈。
藤井「あ、自分やります！」
香奈「あ！で、でも」
　　　香奈の代わりにレバーを回す藤井。
　　　突然プシューッという大きな音を立てる　
　　　ビア樽。
藤井「あ、なんかヤバイとこ
押しちゃいました？」
　　　香奈、焦ってレバーを元の位置に戻し、
　　　力いっぱい押し、音が収まる。
香奈「あー、びっくりした！」
藤井「す、すみません」
香奈「レバーを上に上げてから回さないと、
今みたいになっちゃうの」
　　　藤井、しゃがみ込み、
　　　管が樽とガスボンベに繋がっているのを　　
　　　確認し、
藤井「あ、そういうことか」
香奈「どうしたの？」
藤井「炭酸ガスに繋がる圧力弁を
　　　解除してから外さなかったから、
　　　流出したんですね」
香奈「やだ！ごめん、
　　　仕組みまで深く考えたこと、
　　　なかった！」
藤井「この空のビア樽どこ持って行けばいい
　　　ですか？」
　　　
　　　軽々肩の位置まで片手で持ち上げる藤
　　　井。
　　　その姿をびっくりしたように
　　　見つめる香奈。

×××

○同ダイニングルームサラダバー前
　　　サラダバーの前で生春巻きの飾られた
　　　ショーケースを指さし、

香奈「これはもう出してから1時間経ってる
　　　から例え余ってても廃棄するのね」
　　　藤井、その皿を持ち、運ぶ。
　　　ゴミ箱に捨てる時に一瞬ためらう藤井。
藤井「フードロス削減
　　　出来ないもんですかね」
香奈「ほんと！捨てる度に胸が痛むよね！
　　　でも、うちはドリーム航空の
　　　下請けだからいくら
　　　廃棄処分のもので
　　　私達がつまい食いすことは厳禁なの」
　　悲しそうに話す香奈。

○同空港全景・夜
　　　私服姿の藤井と香奈が歩いている。
藤井「林さん今日は
ありがとうございました」
香奈「いえいえ、こちらこそ！
バイト一日目なのに、
藤井さんよく動いてくれて
助かったよ！」
　　　その後ろから走ってくるまどか。
　　　結っていた髪の毛を下ろし、
　　　女性らしさを強調したワンピースを着て　　　　　
　　　いる。
まどか「お疲れ！」
　　　二人を追い抜き走っていく。
　　　唖然として見ている香奈。
　　　しばらくすると携帯にLINEの着信音。
　　　スマホの画面を見る香奈。
　　　まどかから「今日ファーストの
　　　お客さんに誘われて今からお寿司ごち
　　　そうになってくる！」と書かれている。
藤井「じゃ、僕こっちなんで、
　　　お疲れさまでした！」
香奈「お疲れさま！」

○成田空港全景

○同空港レストラン
　　　旅行客に混じって食事をしている制服
　　　姿の香奈とまどか。
まどか「昨日のお客さんなんだけどさ、
　　　　ダイアモンドメンンバーじゃなくて、
　　　　ただのアップグレードだったんだよ。
　　　　最悪！」
香奈「でもおごってくれたんでしょ？」
まどか「そうだけどさ！それ知ってから
　　　　話、頭に入ってこなくなってさ」
香奈「いやいや、アップグレードったって、
　　　ビジネスクラスからのだから
　　　充分じゃ・・」
まどか「ところで、あのバイトくんどう？」
香奈「いい子だよ！」
まどか「大学名聞いた？まあ、
　　　　大したことなさそうな顔してたけど」
香奈「いやいや、そんな聞きづらいよ。
　　　私も言いたくないし」
まどか「ま、とにかく、
　　　　私はここでバイトしてるうちは
　　　　ダイアモンドメンバー狙うから」
香奈「うーん」
　　　アイスコーヒーをストローでかき混ぜ
曖昧に笑う香奈。

○同ラウンジ内
　　　制服姿の藤井が客席から
　　　下げ物をしている。
　　　外国人男性が何かを藤井に聞い
　　　ているそれに流暢な英語で答える藤井。
　　　それを見ている香奈。

○同キッチン内
　　　下げ物を洗浄係に出す香奈と藤井。
香奈「藤井さん英語どこで覚えたの？」
藤井「ちっさい頃親父の仕事で
　　　アメリカにずっと居たんで」
香奈「いーなー。帰国子女か！」
藤井「いやいや、そうでもないっすよ」

○同空港夜
　　　私服姿の香奈と藤井とまどか。
香奈「今日お給料日だし飲み行かない？」
藤井「いいっすね」
まどか「私はパス！」

○居酒屋・日本海・夜
　　　大衆居酒屋風の店。
　　　オープンテラスの席に座る。
　　　香奈と藤井。
　　　大きなビアジョッキを手に
　　　乾杯する二人。
　　
×××

香奈「藤井さん英語うまくて羨ましいよ！」
藤井「香奈さんも喋ってるじゃないっすか」
香奈「私なんか日本語英語だからさ」
　　　そう言って一気に
　　　ビールを飲み干す香奈。
藤井「今日は俺おごりますよ！」
香奈「えー学生さんなのに？」
藤井「このバイトの他にも色々やってるんで」
香奈「えー何々？」
藤井「フードロス削減のベンチャー企業、
　　　先輩と立ち上げてて。
　　　日本は食品ロスへの取り組み、
　　　海外よりかなり遅れてますよ」
香奈「えーー！凄い！私も興味ある！」
藤井「そうっすか？
　　　え？じゃ一緒にやっちゃいます？」
　　　楽しそうに笑い合う二人。

○成田空港全景

○同女子社員ロッカールーム内
　　　制服に着替えている香奈とまどか。
まどか「最近、香奈、
　　　　藤井くんと仲いいよね」
香奈「藤井さんおもしろいんだよ！」
まどか「もうキスぐらいした？」
香奈「え？ちょっと！
　　　そういうんじゃないから」
まどか「ハハハ！
香奈ってホント色気ないよね！」
　　　ムッとした表情の香奈。

○同ラウンジ・ダイニングルーム内
　　　下げ物の皿をめいっぱいのせた
　　　トレイを運んでいる香奈。
　　　その後ろから急いだ様子で近寄る
　　　まどか。小声で、
まどか「香奈、大変！
　　　　寿司カウンターにアイドルの
　　　　山下翔がいるんだけど！」
香奈「え！嘘！」

○同ラウンジ内寿司カウンター前
　　　キャップを深く被り、
　　　一人で寿司を食べている山下翔(21)。
　　　その姿を遠くからじっと見つめるまどか　　　
　　　と香奈。その後ろから藤井が現れ、
藤井「あ！翔じゃん！」
　　　藤井、そう言って山下に駆け寄る。
藤井「翔！どうした？」
山下「オー！オマエこそ何やってんだよ！」
　　　親しそうに話す二人。
まどか「ちょっと！どういうこと？」
香奈「藤井さん、山下翔と友達なの？」

○同キッチン内
　　　藤井を囲むまどかと香奈。
藤井「いや、アイツ、
　　　俺と中高から大学までずっと一緒で」
まどか「え？それって慶応ってこと？」
藤井「あ、はい」
まどか「えー！ちょっと！
　　　　今日飲み行こうよぉ」
　　　甘えたように言うまどか。
藤井「あ、別にいいっすよ」
香奈「え、ちょっ」
まどか「えーじゃ決まりね！」
　　　藤井の腕にさりげなく絡みつくまどか。