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ひと足先に


緑と茶色の絨毯に色が加わる。お色直しが始まったみたい。あか、白、黄色…。

色や形の異なる花々が咲き始める。

今年は暖冬だったので、季節の境が全くわからなかった。正直今も感じない。

それでも草花は衣替えを始めたから、季節は春へと変わったのかもしれない。

「今週末はグッと冷え込むので、冬服をしまうのはもう少し待ってください」
お天気お姉さんが言っていた。
僕はもう少し後にしよう。

花や実がなるということは、子孫を残す為の最後の仕事。
大根は自身のタンクにエネルギーを貯め、暖かくなったら花を咲かせ虫たちを誘う。
甘い香りに誘われた彼らは、体にホコリをくっつけてもお構いなし。
そうして種が出来、こぼれ落ちていく。

トマトはおもしろい。
赤い色に甘酸っぱい味は、より遠くに行くために鳥達の大好物になるように進化したよう。
緑色の時は毒がある。
準備中のトマトを鳥達は食べない。
赤く色付いてくるのを遠くからじっと待っている。

みんなに好かれる味に進化して、遠くまで旅をし子孫繁栄を願う。
逆に、誰にも食べられないように進化して子孫守る種もあるだろう。

僕なら進化して遠くまで旅する生き方がいい。

一般農業では収穫したあと、残った植物残渣は捨てられる事がほとんど。次の作付けの準備の邪魔になるし、土に帰るまでに時間がかかるから。
ぼくは小さくカットしてその場に置いておき、
時間をかけて土に戻す。
分解されて養分になり、次に育つ生命のために、(未来)のために使われる気がするからだ。

遠いところへ旅をさせてあげる事は出来なかったけど、遠くまで(未来)旅をして欲しいと思うから。