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Maison Matineの反抗。オリジナルコレクション編

今回が最終回、メゾン・マティン(Maison Matine)のディスカバリーセットから、「オリジナルコレクション(6種)」のレビューをお届けします。

過去2回はこちらをご覧ください。


INTO THE WILD | イントゥ ザ ワイルド

香りが紡ぐ物語は、東洋の賑わう市場から幕を開ける。鼻孔をくすぐる香辛料の刺激が冒険の序章を告げると、やがてその香りは、深い森に佇むオアシスへと誘う。清楚な白い花々の芳香が、スパイスの余韻と優美に舞い踊る。旅の終幕に待ち受けるのは、意外な誘惑。かすかに漂うチョコレートの深遠な香りが、この冒険の締めくくりとなる。

刺激と花々の迷宮をくぐり抜け、たどり着いたのは神秘に満ちた密林の世界。未知なる冒険へと誘う香り。

調香師:Adilson Rato(アディルソン・ラト)

WARNI WARNI | ワルニ ワルニ

靄の中、茶葉の香りが静かに立ち込める。そこに、スパイスが微かに寄り添い、やがて、花々の芳香が風に乗って控えめに舞う。時が経つにつれ、木々の香りが奥行きを増す。優しく包み込むような温もりが全体を覆うと、最後にかすかに残るのは、ムスクの密やかな誘惑だ。

この香りは、静寂の中に漂う幻想のよう。妖精の囁きを聞くような、神秘に満ちた魅力を放っている。

調香師:Élise Bénat(エリーズ・ベナ)

HASARD BAZAR | アザー バザー

舌先に電流のような刺激が走る。それは花椒の放つ独特の香気だ。やがて、バラの艶めく芳香が漂い始め、そこに溶け込む木の香りが深みを醸し出す。トンカマメの甘美な香りは、ほろ苦いアーモンドの記憶を呼び覚ます。バニラの優しい温もりが全体を包み込むと、最後に残るのは、ムスクの密やかな余韻。

この抑制の効いた甘さのハーモニーは、大人の余裕を彷彿とさせる。

調香師:Ane Ayo & Fabrice Pellegrin(アネ・アヨ & ファブリス・ペレグラン)

ESPRIT DE CONTRADICTION | エスプリ ドゥ コントラディクション

柑橘と胡椒の躍動的な香りが交錯し、心地よい緊張感を醸成する中、繊細なハーブの香気が鼻先を軽やかに舞う。やがて、ジンジャーの清々しい辛みが顔を覗かせる。花の香りは控えめに佇み、ムスクと木々の深遠な香りが静かに立ち昇る。そしてセージを思わせる爽快なハーブの調べが、最後まで香りの骨格を支える。

それぞれの香りが主張しすぎないよう、存在感が抑えられているものの、確かな個性は宿っている。しかし、もう一息の大胆さがあれば、より魅力的だったかもしれない。

調香師:Christian Vermorel(クリスチャン・ヴァーモレル)

BAIN DE MIDI | バン ドゥ ミディ

ピンクペッパーの瑞々しい刺激が鼻孔を撫でると、忽ち花々の芳醇な香りに包まれる。空間を支配するのは、ジャスミンを思わせる清涼な香気。そこへ樹脂の温もりが溶け込み、意外にも控えめなバニラの甘美さが顔を覗かせる。全体を引き締めるのは、白檀の奥深い木の香り。最後に、トンカマメとムスクが柔らかな余韻として漂う。

花の芳しい甘さを主役に据えながらバニラを脇役に徹させる斬新な構成は、甘美さと深みの絶妙なハーモニーを奏でる。しかし、香りの変化が急すぎるきらいがあり、各ノートをじっくりと堪能したい気持ちが募る。

調香師:Philippine Courtière(フィリピン・クーティエー)

AVANT L'ORAGE | アバン ロラージュ

柑橘の香りが一瞬の光のように閃く。その輝きが消えないうちに、ガーデニアを主役としたまったりと甘い花の香りが空間を包み込む。やがて、バニラの温かみを帯びた甘さが静かに立ち昇り、ココナッツとの絶妙な調和により、心地よいミルキーな優しい香りへと変容していく。

香りの序盤から甘さが前面に躍り出るものの、その甘美さは決して度を越えることなく、軽やかな羽毛のように空気中を舞い続ける。深呼吸をすれば、南国の楽園で過ごす静寂の時間が、まるで映画のワンシーンのように脳裏に浮かび上がる。

調香師:Philippine Courtière(フィリピン・クーティエー)

香りと成分が一致しない?

前回予告した「思わずNOSE SHOPに問い合わせるほど困惑を覚えた香り」は、「バン ドゥ ミディ」と「アバン ロラージュ」の2本です。

香りの成分表を見ると、「バン ドゥ ミディ」にはココナッツ、「アバン ロラージュ」にはジャスミンサンバックが含まれています。しかし、自分の鼻では逆の印象を受けました。

  • ジャスミンの香り → バン ドゥ ミディ

  • ココナッツの香り → アバン ロラージュ

もう自分の鼻が信じられない状態

この違和感から、「説明が入れ替わっているのではないか」という疑いが浮上。ウチのスタッフも同じ感想だったので、念のため、NOSE SHOPに問い合わせたところ、品質担当部門で確認したいとのことでサンプルを送付することに。

結果、説明も本国表記と一致しており、中身も問題なかったとの連絡を受けました。丁寧に新品2本も同梱されて返送されてきていて、短いやり取りながら「間違ってたら大変」という危機感がしっかり伝わった応対だったと思います。

NOSE SHOPのほうが絶対にプロなので、間違いなかったという結論で納得するしかないのですが、他の人のレビューを見ても、「アバン ロラージュ」を「ミルキー」と評しているのが気になります。ジャスミンが香るはずですが、それは「バン ドゥ ミディ」のほうなんです。

この2種については、完全に自分の鼻が信用できなくなりました。オンラインショップで成分だけを見てボトルを買う人は少ないと思いますが、もし購入候補に挙げている方は、念のため店頭で香りを確認することをおすすめします。

まとめ

メゾン・マティンはポップなパッケージと調香のイマジネーションが魅力的なブランドです。ボイジャーコレクション以降、さまざまな調香師が登場し、バリエーション豊かでユニークな香りを楽しむことができました。端的にまとめるとこんな感じです。

  • ボイジャーコレクション

    • Bérénice Watteau(ベレニス・ワトー)による2種。どこか実験的でありながら、ふと振り返ってしまう魅力がある。

  • リフレッシュコレクション

    • すべて異なる調香師による作品。混沌、柑橘とメロン、キウイと花々。まったく異なる3種。

  • オリジナルコレクション

    • リフレッシュコレクションにも登場したPhilippine Courtière(フィリピン・クーティエー)の2種を含む。ベースが似ているものがありますが、異なる6種。

全11種類を試して、私がボトルで買ってもいいと思ったのは下記3本でした。

  • ARASHI NO UMI|あらしのうみ

  • NATURE INSOLENTE | ナチュール アンソロント

  • ESPRIT DE CONTRADICTION | エスプリ ドゥ コントラディクション

11種類もあったので途中で辛くなってきて「なんでこんなことしてるんだろう」と挫けそうになったのは内緒です😅 ボトルの価格も良心的ですので、ぜひ店頭で試してお気に入りを見つけてみてください!

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