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Maison Matineの反抗。ボイジャーコレクション編

メゾン・マティン(Maison Matine)は、2019年にマリー・ケルーとアーチュー・ポンロアによってパリで創設されたニッチフレグランスメゾン。従来の工業的なものづくりから脱却し、新時代にふさわしい独自のフレグランス創造を追求することを目的として設立されたそうです。

ブランド名「MATINE」は「反抗と朝」をかけ合わせた造語だそうです。挑戦的でありながら、際立ち過ぎない個性があり、不意に笑みがこぼれるような新しさを感じる香りはとても魅力的ですね。ユニークな商品名と、現代アートのようなパッケージは、ポップで明るい香りを連想させますが、実際に使ってみると、日常使いできるフレグランスが多いのが意外でした。

特筆したいのが、メゾン・マティンの環境と倫理への取り組みです。サステナブルな製造プロセスはもちろんのこと、性別・年齢・国籍や信条にとらわれることのない多様性をブランドの基本理念としています。気になった方は、ぜひNOSE SHOPの紹介文を参照してみてください。

このメゾン・マティンの全11種類が試せるディスカバリーセットを購入しました。

3つのコレクションに分類されているので、3回に分けて主観レビューをお届けします。まずは「ボイジャーコレクション(2種)」から。

一つ一つがキャンディーのように包まれていて可愛らしい

ARASHI NO UMI|あらしのうみ

吹き付けた瞬間、青々としたリンゴの香りが鼻先をくすぐり、やがて、ミルクのような柔らかさが包み込む。それは、ホットなカフェオレが淹れられたカップのような感触。心地よい温もりが広がる。そして、ふと気づけば、熟した桃の甘美な香りが立ち上ってくる。花々の香りは控えめだ。むしろ、それらは脇役として全体の調和を支えている。深く吸い込めば、遠い異国の森を思わせる木の香りが感じられる。

この香水は、ほのかな存在感の中に、絶え間ない変化を秘めている。それは、「あらしのうみ」のような猛々しさではなく、穏やかな水面に映る光の揺らぎのようだ

香りの旅は、静かに、しかし確実に進んでいき、最後には穏やかな余韻が残る。派手さはないが、その繊細な変化に魅了される

調香師:Bérénice Watteau(ベレニス・ワトー)

https://noseshop.jp/products/mam-pf-anu

TU TE CALMES | トゥ トゥ カルム

まず鼻を打つのは、鉛筆を削ったような木の香り。続く柑橘系の爽やかさに騙されてはいけない。すぐさま、異国の市場を思わせるスパイシーな香りが押し寄せてくる。それは静かに、確実に存在感を増していく。

香りの中心では、様々な要素が混ざり合い、複雑な様相を呈する。時に混沌とした印象すら与えるが、その混沌の中にも、どこか芯のある強さを感じる。その芯とは、フィグの香りだ。他の香りを押しのけるようにして、存在感を示す

この香水は、一筋縄ではいかない。予想を裏切り、時に混乱させる。しかし、その予測不可能な展開こそが、この香水の魅力なのだろう。

調香師:Bérénice Watteau(ベレニス・ワトー)

https://noseshop.jp/products/mam-pf-ttc

まとめ

NOSE SHOPで試香したときは、つかみどころがないブランドだなと思いましたが、そんなことは全くなかった。やはり香水は日常生活で使わないと本当の魅力に気づけないです。

このボイジャーコレクションの2作は、ベレニス・ワトーという調香師が手掛けています。調べてみたところ、彼女は dsm-firmenich に所属するフランスの調香師のようです。

五感を満足させる香り、味、香料素材を創造する企業で働く彼女は、どこか実験的でありながら、ふと振り返ってしまう魅力を香りに散りばめる調香が得意なのかもしれません。2つとも香りの変化が興味深いフレグランスでした。

今回のボイジャーコレクション(2種)以外は、ほぼ製品ごとに調香師が異なるようなので、じっくり試していきます。

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