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地域産業としての木材の活用-高知県の事例-

今年3月、所属する建築士会連合会の活動の一環として高知県におもむき、高知県木材産業振興課の小原忠さん、艸建築工房の横畠康さんと「地域産業としての木造」をテーマとしてお話しさせていただく機会を得ました。

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高知県は国内でも有数の森林県であり県土の84%が林野が占め、その割合は全国トップクラスです。

その森林資源を生かし、持続可能な木材還元サイクルを構築するための活動も官民一体として取り組んでいる先進県でもあります。

その先駆者ともいえる行政側の小原さんと、高知県内で設計事務所を営む横畠さんお二方とお話しさせていただけたことはとても有意義な機会でした。

前投稿の「ウッドショックの状況を踏まえて」でも記載しましたが、高知県も類にもれず、林業の衰退は目に見える形で進んでいっているのが現状でした。

平成28年高知県産業振興計画

このような状況の中、豊富な森林資源を最大限に生かして、県の大部分を占める中山間地域を活性化して行くためには林業振興が重要であることに目をつけた高知県では、平成28年高知県産業振興計画にて、

・原木生産のさらなる拡大
・加工体制の強化
・流通販売体制の確立
・木材需要の拡大
・担い手の育成・確保

という5つの柱立てを作り、出荷額、原木生産額の目標値を定めました。

特に、生産量と使用量のバランスを適正値に近づけて行くために、木材需要の拡大に力を入れています。

具体的な行政側の木材需要促進の取り組み

伐採した木は建築用材として使用される良質なA材、集成材のラミナや合板とするB材、バイオマス発電に使用されるC材とに分けられます。これらを余すことなく使って行くための需要の向上を図るような活動が展開されていきます。

具体的には以下の通りです

A材:住宅着工個数の減少に伴い、比重歌区向けの商品の開発。スパンの長い横架材の開発や木質ラーメン構造などに流通製剤品を使いモデル建築を作り実際に見てもらう。内装材としても使用できるよう耐火や質感などをクリアする商品開発の支援。
B材:CLTの促進。
C材:県内のバイオマス発電導入を促し、年間21万6千m3まで木材の需要量を増やす。

CLT活用の枠組み

木材活用を促す起爆剤として一度に多くの木材を使用できるCLTの促進に関しても行政では様々な試みを行っています。

CLTとはCross Laminated Timber(JASでは直交集成板)の略称で、ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料です。厚みのある大きな板であり、建築の構造材の他、土木用材、家具などにも使用されています。
日本では2013年12月に製造規格となるJAS(日本農林規格)が制定され、2016年4月にCLT関連の建築基準法告示が公布・施行されました。これらにより、CLTの一般利用がスタートしています。
一般社団法人日本CLT協会より引用:https://clta.jp/clt/

県では2013年7月、東京大学名誉教授の坂本功先生を会長に据え、CLT建築推進協議会を立ち上げ、県内の設計者をバックアップ、技術者を育成する体制を確立しています。
この体制により1つの建築として実った最初の実例は高知県森連会館です。
このプロジェクトでは、県内の設計者に呼びかけてCLTの勉強会に参加することを条件に設計者プロポーザルを行っています。また、ワークショップに参加した参加した設計者をリストにして、CLTで建てたいというクライアントが来た場合には紹介するという仕組みを構築しています。CLTにおける技術的な側面や、実験費用のサポートも積極的に行われています。

横畠さんもこのプログラムを経て様々なCLT建築を建ててきたお一人です。

高知学園

高知学園大学/設計:艸建築工房
写真/新建築社:https://japan-architect.co.jp/project/%E9%AB%98%E7%9F%A5%E5%AD%A6%E5%9C%92%E5%A4%A7%E5%AD%A6/

これを契機として、官民が一体となった木材活用の促進の仕組みが築かれていったのです。

外材に頼らない、国産材活用による建築文化の醸成と林業の発展を見据えて

コロナショックを経験し、日本国内では国産材の需要が一層高まりつつあります。ただ、現状は前投稿でも記載しましたが、日本の林業システムがそれに対応できるだけの土台を有しているわけではありません。どの地域を見回しても日本の林業は衰退の一途を辿ってきたのが現状です。

ただ、日本の建築、製材技術は世界的にも高い水準にあることも事実であり、太古から木造建築に親しんできた我々日本人にとってはこれからの林業の復興は必要不可欠であると感じます。

例えば日本の林業が、木だけでなく、高い建築技術や工法も一緒にパッケージとしてマーケットに参入することもできるのかもしれません。

CLTの新技術がそれを可能とするかもしれません。

また、高知県では、平成27年度に開校した高知県立林業大学校では建築家の隈研吾氏が校長を務め、高度な木造建築の設計方法を学ぶことができるほか、設計者と森林・林業の関係者との交流の機会を創出するなど様々な視点から森林・林業を学ぶことができる仕組みができています。

最近でも、1~2年制の専修学校や研修機関として、将来の地域林業のリーダーや森林管理の現場で即戦力となる人材を育成する「林業大学校」が続々と設立されており、令和3年度末時点で21校に増えています。例えば、平成31年度には鳥取県、令和2年度には北海道、今年度は青森県と奈良県で開校されており、来年度には福島県と山梨県で開校予定となっています。

ウッドショックを契機にさらなる国内林業の発展、必要性が認知されていくと良いなと心から望みます。

Archlife


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建築家|Archlife主宰|株式会社西和人一級建築士事務所|金沢科学技術大学校非常勤講師|日本建築士会連合会青年委員会|Hp:https://archlife.jp|Insta:https://www.instagram.com/kazutonishi_architects/