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さらっと西洋建築史2〜造形美を求め続けたギリシア神殿〜

バルカン半島の先端に位置するギリシアを含むエーゲ海一帯にはクレタ文明およびミュケナイ文明が栄えていました。その地域に紀元前1100年頃、北方からドリス人が南下して来ます。ドリス人達は先住民族の文明を受け入れつつ優れた造形原理に基づくヨーロッパ建築の源泉となるギリシア文明を開花させていくこととなります。

ギリシア文明期に建てられた代表的な建築物としてはギリシア神殿が挙げられます。

ここではギリシア神殿について少し深掘りして見てみます。

外観美を求め続けたギリシア神殿

ギリシア神殿は神の像を安置する神の家として建てられていきました。
祭祀も外部に設けられた祭壇で行うことをことを主としていたため特別なことがない限りは人が中に入ることはありませんでした。こうした理由からギリシア神殿は外から見ていかに美しいかということが問われていくことになります。外的な視覚性が建築の構成美の本質として問われ、外観を形作る重要な要素としての円柱の姿や配列によってその美しさが競われ建てられてきました。

現在遺跡として残されているものでも約40箇所近くが確認されています。
その代表的なものが「世界雑学ノート」さんのサイトにまとめらています↓

美しさを構成するためのオーダーとプロポーション

ギリシア神殿は、基礎の上に乗る基壇、その上に立つ円柱、屋根を支える水平梁(エンタブラチェア)、霧妻屋根の三角破風(ペディメント)により構成されています。
柱を含め、基壇から軒までの構成形式をオーダーと言います。

ここでは代表的な3つのオーダーについて見てみます。

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古代ギリシア建築の3種のオーダー 画像:建築の歴史 学術出版社
a.ドリス式
ギリシア本土および南イタリアで発展し、3オーダーのうち最も古い形式である。基盤がなく、基壇の上面に円柱が直接載る形式をとる。
シンプルな幾何学的構成を持ち男性的で力強さを表現している。
b.イオニア式
ドリス式より細長いプロポーションで中東に羊の角を思われる渦巻模様を持つ。女性的なしなやかさが表現されている。
c.コリント式
基本的にはイオニア式と同様であるが、柱頭がアカンサスの葉のデザインに変わる。

各オーダーは柱頭デザインに特徴が顕著であるばかりでなく、その細部のプロポーションの組み合わせにより造形美の調整が図られています。そのプロポーションの基準となる寸法は円柱の下部直径を用いることが多く、これによって各部及び全体寸法が決定されてきました。
こうした比例関係で各部から全体を構成するやり方をシュンメトリアといい、ギリシア建築の造形美である調和を司ってきました。


パルテノン神殿とエレクテイオン神殿

パルテノン神殿は、ギリシアが理想とする建築美の極地に達した作品とされています。
外周部を巡る列柱はドリス式の柱が並び、ドリス式神殿であるにも拘らず、室内にイオニア式の円柱を使用するなどドリス式とイオニア式を融合させることで地域を超えた全ギリシア的建築美が狙われています。また、パルテノン神殿の特徴の一つが、エンタシスという技法。エンタシスは柱の中央にふくらみを持たせる技法で、視覚的な安定感を持たせる効果があるとされています。

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パルテノン神殿 写真:wikipedia

これとは対照的にパルテノン神殿と同じアテネのアクロポリスに建つイオニア式神殿のエレクテイオン神殿は優美で女性的な姿として表現されています。

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エレクテイオン神殿 写真:wikipedia

エレクティオン神殿にはアテナ、ポセイドン、ゼウスが祀られているとされています。神話によると、エレクティオンは女神アテナと海神ポセイドンがポリスの守護神の座をかけて争った場所。ポセイドンが矛を刺したとされる場所の天井には、聖なる場所に光がさすようにと穴が開けられています。

ギリシア建築にはこれらの様々な建築的手法に合わせて、ギリシア神話にまつわる様々な物語が紐づけられています。

これらの知識を持って建物を見ることで、少し通な目線でより深く、建築を楽しむことができますね。

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