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設計から建物完成までの大まかな流れについて

建物を建てる行為は、人生のなかでそこまで多いものではありません。初めて建物を建てると言った方も少なくありません。「何もわかっていないのに設計事務所になんて頼んで良いのかしら?」という話もよく聞きますが、全然大丈夫です。おおよその場合、スタートラインは建築に関しては皆素人なのです。

以下からは、少し長くなりますが、住宅における設計から建物の完成までの一般的な流れを記載していきますので参考にしていただけると幸いです。

1.面談

まずは一度会ってお話しすることから始まります。この際、できる限り自分たちの思いをもち、建築家に伝えられるようある程度は準備しておきましょう。言葉で伝えても良いですし、何か理想の写真を持ち込まれても良いです。言葉にならない方は箇条書きで家族の要望をまとめて来られる方もいます。ぎこちなくても整理し切れていなくても全くよくて、施主の潜在的な希望を聞き出すことに建築家は長けているものです。

間取りやデザインの希望、理想の住まい方や予算、敷地の話、仕事の進め方、きっと相談してみたいことはいっぱいあるはずです。

思っていたのとは違う、、こんなの聞いてたかった、、等食い違いが起こらないよう思い切ってまずは相談してみること、吐き出してみること、それが一番大切です。

2.基本設計

面談、敷地の確認が終わったら、基本設計の始まりです。面談でお聞きした内容を踏まえ、構想を練っていきます。食い違いを起こさないよう面談で話しきれなかったことも思い出したら随時コミュニケーションをとり合いながら進めていくことでより理想に近い建物につながっていきます。

四会連合協定 建築設計・監理等業務委託契約書類の基本業務委託契約書(小規模向け)には基本設計業務の内容が列挙されています。

①設計条件等の整理②法令上の諸条件の調査及び関連機関との打合わせ
③上下水道、ガス、電力、通信等の調査及び関係機関との打合せ④基本設計方針の策定⑤基本設計図書の作成⑥概算工事費の検討⑦基本設計内容の委託者への説明等

基本設計といっても様々な業務内容がある事が分かります。基本設計図書の作成がメインだと思われていると思いますが、その作業も全体の一部である事が分かります。建築を建てる行為は法律等様々な制約との戦いでもあります。そこをクリアした上で計画が成り立ちます。「アイディアだからサービスで出してくれるのでしょ」と言う方も見受けられますが、とんでもありません、しっかりとした時間と手間隙のかかった業務になります。設計者も人間です。感情もあります。敬いあいながら付き合っていく事で良い案が引き出されていく事でしょう。

提案の形は各事務所によって様々であると思います。簡単なダイアグラムから詰めていくこともあるでしょうし、計画案に模型やCG等プレゼンテーション形式は様々ですので各事務所の提案をしっかりと聞いてみましょう。

以下はプレゼンテーションの一例です。

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各階の平面図です。建物の間取りと敷地等との関係を示したとても重要な書類になります。

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建物の設計意図を伝えるためのダイアグラムも必要に応じて作成されます。

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模型は最もイメージが伝わるものとしてどの設計事務所でも活用されているのではないでしょうか。内部の状況をよく伝えたかったため、写真は1/50模型ですが設計当初の頃は1/100模型が多いと思います。建物全体の形状や雰囲気を模型で確認します。

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CGになります。これもイメージがよく伝わるプレゼン方法です。計画が十分に詰まってきた際にはイメージの共有として良いのかもしれません。

※CG作成は別途費用がかかる場合があります。

基本設計作業はとても大切な過程です。双方が納得いくまで何度も打ち合わせしていく過程が大切になってきます。ここで注意しておかなければいけないことは、現段階では設計監理契約がまだ行われていないということです。なので打ち合わせを繰り返してもどうしてもうまくいかない時はこの時点で断ってしまうことも一つの方法であると思います。設計事務所は一社しかないわけではありません。理想の建築造りを考えていけるパートナーをしっかりと見定めて進めていきましょう。

※断った場合でも、一定のプレゼンテーション費用がかかる場合もあります。

3.設計監理契約

基本設計を終え、満足したものにたどり着いて初めて設計契約を行うことになります。その際に重要事項の説明や今後の流れ、設計料の話等を詰め契約が行われます。契約は 四会連合協定 建築設計・監理業務委託契約約款に基づき行われます。以下に契約書の1面を参考として添付します。

契約書

この際、設計料の過多によって設計者、施主双方に印紙税法におけます決まった額の印紙が必要になってきますので1枚準備していただくことになります。

4.実施設計

契約が終わればいよいよ実施設計です。詳細な図面を作成していきます。

基本設計と同様に四会連合協定 建築設計・監理等業務委託契約書類の基本業務委託契約書(小規模向け)により確認してみましょう。

①委託者の要求等の確認②法令上の諸条件の調査及び関連機関との打合わせ③実施設計方針の策定④実施設計図書の作成⑤概算工事費の検討⑥実施設計内容の委託者への説明等⑦設計意図を正確に伝えるための質疑応答、説明⑧工事材料、設備機器等の選定に関する設計意図の観点からの検討、助言等

基本設計の際もそうでしたが、様々な機関との調整が実施設計時にも必要になってきます。そしてそれらをしっかりと図面に落とし込んでいきます。何度も打ち合わせを行い、細やかな寸法や素材の方針、設備機器の種類等を決めていきます。以下は実施設計図面平面図の実例です。

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細やかな情報が書類内に書き込まれている事が分かると思います。

5.見積・施工者選定

実施設計書をもとに数社に対し見積もりを取ります。設計事務所の利点の一つに数社に相見積もりを取る事ができる点が挙げられます。この行為により、不要な価格高騰を抑える事ができると同時に見積書を比較検討していく事で適正価格が見えてきます。また、設計事務所が第三者として介入する事でその見積書に関しても細やかなチェックを行う事ができます。

これらの作業を行い、それでも予算に合わないこともあるでしょう。ここまでくると要望がびっしりと詰め込まれた図面がきっとできているものです笑。予算が合わない場合は減額の相談を工事業者さんも交え行なっていきます。減額作業は残念な作業に思えるかもしれませんが、現実を踏まえ、身の丈に合った建物を建てるためにもとても大切な作業になってきます。メリハリを持って取捨選択していく事で建築も洗練されていくものです。

この作業を終え、「これなら大丈夫かな」というところまでくればいよいよ選定された工事業者と契約を結ぶことになります。細やかな工事に対する工程の確認や、工事費の支払い条件等も打ち合わせもこの際に行い、工事着手へと進んでいきます。役所への申請業務もこの頃に合わせて行います。

6.工事着手・現場監理

地鎮祭が行われ、いよいよ工事が始まっていきます。工事は施工者が主体として行なっていきますが、設計事務所も監理業務が始まります。ここで再度四会連合協定 建築設計・監理等業務委託契約書類の基本業務委託契約書(小規模向け)により監理業務の内容を確認しましょう。

①監理業務方針の説明等②設計図書等の内容の把握等③設計図書等に照らした施工図などの検討及び報告(設計図書にその旨が記載されている場合に限る)④工事と設計図書等との照合及び確認⑤工事と設計図書等との照合及び確認の結果報告等⑥工事監理報告書等の提出

主な業務はこれまで作成してきた設計図と照らし合わせて工事が適正に進行されているのかの確認となります。また、それだけではなく、設計者は定期的に現場に通い、実寸大で確認していく事で設計図作成段階よりも良い建物になるよう思考を巡らせています。

何度も何度も設計者、施工者、施主で考え話し合っていく事で良い建物はできていくものです。

図面の整合性を確かめるだけでなく、皆で協力して造り上げていく良好なチームを統率するリーダーが建築家にあたるのかもしれません。

また、設計段階では決めきれなかった、仕上げの質感や色合い等も現地で話し合いながら決めていくことになります。

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基礎配筋や構造軸組等、完成時に見えなくなってしまう箇所もしっかりと確認していきます。

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上の写真のように様々なサンプルをもとに色合い等を決めていきます。神経の使うとても大切な作業ですが皆で悩み考えていきます。

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完成間近には施主検査も行い、満足がいくまで最後まで、しっかりとした建物の完成を目指します。

7.完成引き渡し

役所の検査も受け無事引き渡しを受けます。いままで施工者に預けていた家の鍵が、ようやく施主へと引き渡されます。最後に家の取り扱いの説明を受け、また、今後の点検予定等を確認し、終了となります。

終了と言っても全ての関係が終わるわけではありません。住んでからの時間の方が長いのは当然で、メンテナンスや修繕、様々な状況下でお会いすることもあるでしょう。設計者は自分の携わった建物に関してはずっと気にかけているものです。考え生み、育てた、まるで我が子のようにその建物を大切に思っているものです。

引き渡してからも末長く良好な関係を築いていくことで一つの業務は成功を迎えます。


今回は設計段階から引き渡しまで大まかな流れを紹介していきました。ざっと書きましたが期間としては面談から建物完成まではおおよそ1年前後かかります。

人生の一大イベントです。全ての過程を楽しみながら進めていく事が理想の建物に近づけていくための秘訣でかもしれません。

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