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【10週目】 今週、社内で話題になった事例。(コンワダさん)

こんにちは、株式会社アーキロイドの津久井です。

この『コンワダさん』連載、とうとう記念すべき10回目を迎えました。10回ってそこそこインパクトがありますが、期間でいえばたったの2ヶ月半ですね。バックナンバーはこちら

それでは、今週も社内で話題になった事例からいくつかを紹介します。

事例1:法律版のGoogle、正式ローンチしたLegalscapeがめざす「法のインフラ」とは何か?

【概要】
 Legalscapeは「法律版のGoogle」を目指すLegalTechの一社。他のLegalTech企業が契約書を扱うビジネスが主なのに対し、Legalscapeはリーガル情報(法令、判例、専門書)を扱うサービスです。国家の最重要インフラの1つ「法」のDXを根底から進めようとしています。

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▲記事より転載

:プロジェクト例
 これまで最高裁が公開していた判例は、プライバシーの観点から、当事者の名前を伏せ字や仮名にする、住所の詳細を消すなどの作業が手作業で行われてきました。これを自動処理する技術を提供し、これまで公共に閲覧できなかった判例も開いていこうとしています。

日弁連、最高裁、法務省、内閣官房等が参加するプロジェクトチームに参加し、判決書を自動で仮名処理する技術の実証実験を行い、95%程度の精度を達成しています。スタートアップとしては異例ながら、日本初の判決全件公開にむけ、大きく寄与しています。(記事より抜粋)

:コア技術
 判決は「主文」と「理由」などのフォーマットがあります。リーガル文書の構造を解析し、構造化された文章に変換してDBに溜めています。(特許取得済み)その結果、法専門家でも大変だった、あらゆるリーガル情報を文書を横断して参照することを、検索1つで可能にしています。

:目指す未来

(1) 法情報を誰にとっても利用可能にする(法情報のオープンデータ化)
(2) 法情報を整理する(リーガル・ウェブ化)
(3) 法の「メンテナンス」に寄与する(「法のインフラ」化)

そのための法整備、合意形成、そして実装への落とし込みとなると、誰にでも手を出せる仕事ではありません。LegalTechというだけでなく、GovTechの側面がある領域といえます。Legalscapeは、政府プロジェクトへの協力や、法律出版社との関係構築などを進めることによって、「法のインフラ構築のデジタル化に取り組めるポジション」にいるGovTech企業でもあるわけです。(記事より抜粋。一部中略。)

【アーキロイドポイント】
 記事の中で法を「国家の最重要インフラの1つ」としていますが、そこのDXへの挑戦は壮大ですね。アメリカの法学者ローレンス・レッシグが著書『CODE』の中で、人間の行動を規制するものとして、①法律②規範③市場④アーキテクチャ(物理的・環境的制約)を上げています。人間はこの4つの中での自由を謳歌して生きているわけです。
 1私人(法人個人を含む)の活動で法、規範、市場を変えていくには相当なエネルギーが必要ですが、その観点では、アーキテクチャ(中でも建築)を設計し社会にインストールすることは比較的容易なんだな、と思ってしまいます。(大いなる勘違いかもしれません。)
 当社は建築(もとい、住宅)の領域で、ユーザーが設計、検索、(法も含めて)評価、比較できるプラットフォームを目指しています。専門領域である設計を、参照、実践可能に開いていく。シンパシーを感じる部分がありました。
 行き着く未来として、地番地図や地積測量図などもオープン&構造化して欲しいです。これは法DXというより行政DXですが、建築、不動産関係者は喉から手が出るほど欲しいところです。Legalscapeの判例公開のための座組は素晴らしいと思いました。この関係性を築くためにどれだけ足を動かしたのでしょうか...

事例2:LIFULLが米Niantic社とARDKに関するパートナーシップ契約を締結、LIFULL HOME'Sでの住まい探しにおけるAR体験開発を加速

【概要】
 不動産大手の株式会社LIFULLと、IngressポケモンGOを開発するNiantic, Inc.(ナイアンティック)がパートナーシップ契約を締結しました。LIFULLのサービス「空飛ぶホームズくん」を実際の街歩きでも利用できるように、AR体験のR&Dを行っていくそうです。

【アーキロイドポイント】
 今週の不動産テック業界におけるビッグニュースでした。Nianticの確固たる実績からも、不動産業界におけるAR, VRが新たなステージに進みそうな予感です。
 関連業界で考えると、建築(設計)とゲーム、建設とDX、不動産とメタバース、の掛け合わせがホットだと感じます。当社は建築領域において、ゲーム的なUI/UXを提供していますので、もれなくこの例に当たります。これらの業界は当然ながら強く関係しあっています。中小企業では3つの事業を包括的に行っている会社も多いです。(なお大企業では利害関係、利益相反的にそうしたコングロマリットはあまりないと認識しています。)業界の動向として、また1ユーザーとして引き続きウォッチしていきます。

事例3:HOUSE-GAN++「プロフェッショナル建築家向けフロアプラン生成の敵対的生成ネットワーク」

【関連リンク】
プロジェクトページ
ペーパー(論文)
Webアプリ(実際に触ってみることができます)

【概要】
 住宅の平面計画をGANで自動生成するプログラムです。Tweetの動画にあるように、左に部屋とそのつながりを入力するUIがあり、右にそれを満たすプランが出力されます。(本論文も改良版、とありますがGANを使ったフロアプラン生成の事例は初めてではありません。)
 GAN/GANsとは、Generative Adversarial Networksの略で、2014年に発表されて以来、多用途で注目を浴びている生成ネットワーク(と識別ネットワーク)の1つで、派生系もいくつか発表されています。GANの得意とすることの1つが、すごく噛み砕くと「存在しないけど限りなくそれっぽい答えを出す」ことです。その例が、存在しないけどセレブっぽい人の画像を自動生成するとか、線画に自動で着色するとか、どちらも正解はないけど、限りなく正解っぽく仕上がります。本事例のようなフロアプランの作成を含め、AIの中でもより創造的な活動への利用が期待されているアルゴリズムです。

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▲筆者も触ってみました。制約をすべて満たしています。計算速度◎、整合性◎です。

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▲ノード数を増やす、円環を含むなど複雑な入力は、完璧に満たされない場合もあるようです。

【アーキロイドポイント】
 プランニング生成に関する研究は歴史が古く、古典的な最適化アルゴリズムを含めて様々な研究があります。当社も創業時よりプランニング生成に関する研究を取り扱ってきました。
 当社のサービスarchiroid.comでは、ユーザーがプランを直接入力できるUI(メイクモード)を公開しています。入力したプランが、実際に建設可能か、構造、法規的に評価し、構法(木造軸組工法)の生成といった一連のフローを提供しています。プランの作成こそが創造性だと考え、その行為を一般ユーザーの皆さんにも楽しんでいただきたい思いがあります。それこそが自らの住まい、暮らしを自分ごととして考えることだからです。

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archiroid.comのメイクモード
箱(部屋)と面(開口部)を入力する簡単なWEB UI

 一方で、計算工程は全てAPI化しており、入力方法も上図のメイクモード以外にも対応は可能です(現在はクローズド)。沿革としてプランの自動生成からシステムを作り始め、現在はプランニング以降のステップをオープンにすることを先んじて行っているからです。
 故に近未来的な展望として、種々の条件を解けるこのような生成アルゴリズムと繋げたいと思っています。その際は当社開発のプラン生成アルゴリズムだけでなく、archiroidAPIを公開し、アルゴリズム開発者が手元で自作プランの評価やVR閲覧できるようにするのも、構想しています。引き続き開発に邁進してまいります。

まとめ

 今回もご覧いただきありがとうございました。
 最近のコンワダさんは、当社が取り組む住宅設計サービスとは、一見関連の無いトピックが多かったのですが、今日はそういう会社っぽいnoteになったと思います。もちろん、変に意識したわけではありません。扱う事例や文体を含め、書き方については10回やってもまだまだ模索中なので、温かい目で見守ってください。
 最後に、noteはアカウントがなくても「♡」を押せるそうなので、押してください。筆者が喜びます。(筆者以外の社内の人間も喜びます)

 良い週末を。

「今週、社内で話題になった事例」 について
株式会社アーキロイドの社内で話題になった事例(ニュース、リリース、書籍、動画、論文などなど)のうち、いくつかをご紹介します。元記事の配信時期は必ずしも今週とは限りません。数ヶ月前、数年前のものもあるかもしれません。

社外にこれを発信することで、
①アーキロイドメンバーが日々どのようなことに目を向けているのか、を知ってもらいたい。
②せっかく読んでもらえるなら有益な情報をお届けするために、自分たちの情報感度をもっと高めていきたい。
という目論見があります。

メンバーも大半が30代に差し掛かってきたので、備忘録という意味合いが一番強いかも。ご笑覧ください。

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