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【9週目】 今週、社内で話題になった事例。(コンワダさん)

こんにちは、株式会社アーキロイドの津久井です。

「さて今週も社内で話題になった事例から、いくつかを紹介します」
という書き始めが恒例化している本連載ですが、紹介する事例数が1週目の8事例から、減りに減って9週目となった今回はとうとう2事例です。。。いくつか=2。

ただ、めんどくさくなって事例数が減っているわけではないのです。
事実、文字数は減っておらず(実測値)、
執筆時間は長くなり(体感値)、
結果として読み応えも増しています(希望的観測)。

さて今週も社内で話題になった事例から、いくつかを紹介します!

事例1:デジタル家づくりプラットフォーム「Nesting」、構想の公開から約半年で1棟目が竣工

【概要】
 建築テック系スタートアップのVUILD株式会社が、共創型戦略デザインファームの株式会社BIOTOPEと協業している、デジタル家づくりプラットフォーム「Nesting」。来春のサービスインに向けた実証実験を行っているそうです。その一棟目が北海道に竣工し、同時に家づくりアプリのβ版を公開しました。VUILD設計者監修の元、施主自らがデザインしたそうです。アプリでは、スムーズなデザイン、設計、見積もりが可能だとのことです。Nestingでは、3つのイノベーションポイントと、4つの特徴を上げています。

Nestingのイノベーションポイント
①UXの革新~オリジナルの家を、金額を把握しながら、徹底的に作りこめる
②構法の革新~どの地域でも、どの地域材でも、どの地域工務店でも建てられる
③性能の革新~オフグリッドかつ、カーボンネガティブな住宅に、挑戦する

Nestingの特徴

・Template 〜 エコで贅沢な空間
・Application 〜 住まいを作る喜び
・Process 〜 皆で造る楽しさ
・Community 〜 創ることで共に学ぶ

【アプリを使ってみた】

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▲筆者もアプリを体験してみました。外部建具を壁からFix窓に変更したら30万円強、見積もりが高くなっています。

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▲内壁の仕上げを変えてみました。

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▲間取りの設計も簡単です。水回りは幾つかのパターンが用意されており、プランに応じて選択できます。家具も配置しました。

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▲内観のVR。上の間取りの変更、家具の配置が反映されています。

【アーキロイドポイント】
アプリは操作が簡単で、どんどん検討ができるし、工法も自社開発で、すでに実棟が竣工。構想公開から半年でここまでの成果を出すのは本当に驚異的です。スゴイです。当社も間取りや建具・家具を入力して、VRと評価値が見れるWEBアプリを開発しているので、もちろん感心している場合ではないのですが...。当社のarchiroid.comのメイクモード(設計機能)はPC専用で、UIもCAD+FPSゲームっぽいのに対し、Nestingはタブレット向けでこれぞアプリ!という手軽さです。

▲2021年8月末archiroid.comリリース
▲最近のarchiroid.comのアプデの様子

 実棟が竣工し、並行開発したアプリもリリースと、Nestingの凄さはについてお話しましたが、そこまではPRTimesでわかります。そこで、VUILD代表秋吉氏とBIOTOPE代表佐宗氏のオムニバス対談(全6回)の、vol.4vol.6を読むと、更に理解が深まります。

vol.4では秋吉氏が住まい方、家造りの中央集権化による地場産業の衰退と地域性の喪失、VUILDの特徴であるデジファブが再び地域性に再接続する、仕様、などを実践編としてまとめています。vol.6(最終回)では佐宗氏が提案編としてNesting βを紹介しています。今回のプレスリリースでは「3つのイノベーションポイントと4つの特徴」として整理されていますが、vol.6では「壊す6つの常識、掲げる7つの公約」を掲げています。4と6の2本を取り出しましたが、もちろん全6回読むのがおすすめです。秋吉氏の終始淡々とした語り口と、佐宗氏の体重が乗ってヒートアップする2人の対比も楽しめます。筆者はこのオムニバス対談を読んで、自身で取り上げたコンワダ8の事例3、の事例3、の事例3あたりの理解がまた更新された気持ちでおります。ぜひ皆様そちらも御覧ください。
 偉大な参考事例として、当社もarchiroid.comのアップデート、事業化の推進に向けて今一度頑張らねば!と大きな刺激を受けました。

事例2:おすしカンパニー

プレスリリース(PRTimes)

【概要】
 お金ではなく物々交換のみで仕事をする集団「おすしカンパニー」。クライアントは、「お礼のお寿司」くらいの気持ちで、お金ではない対価(価値)を支払います。これまでのVtoM(Value to Money)に対して、VtoV(Value to Value)の提唱です。

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▲おすしカンパニーWEBより

 業務内容は主にコンサルティングのようで、スタンダード(打ち合わせベースのコンサル)と、プレミアム(コンサル+アウトプット制作)の2プランがあります。例えばスタンダードプランを利用する流れは、①問い合わせ、②ヒアリング、③コンサル、④Vの納品の4ステップ。クライアントは、依頼と同時にVの提案をし、次のMTGでおすしカンパニーより対価決定の返事がされるとのこと。判断の基準については明言していません。

【アーキロイドポイント】
 ゆるキャラの集まりのようなネーミングと、柔らかなページのデザインからか、「お金じゃなくて、それ以外のものでお礼して成立する世界線ってのも素敵だなぁ~」というほわっとした印象を与えながら、一方で対価V(Value)の納品は原則月末締め翌月払い、覚書を交わす、といった文言が並んでいて、ちゃんとビジネスなんだと表明するバランス感が絶妙です。

 せっかくなので、もう少しVtoVのことを考えてみましょう。そのためにVtoMのM(お金)について触れようと思います。お金(貨幣)には3つの機能、①価値尺度②価値貯蔵③交換流通手段のがあり、そのうちの最低1機能を有していれば貨幣とみなされます。3機能全てを有している例が日本円のような法定通貨です。それをもって商品の値付けもでき、貯金もでき、送金したり別のものに交換できます。VtoMのMはこのようなお金(通貨)のことです。
 ここで注目したいのは①価値尺度です。おすしカンパニーのVtoVモデルでは、提供できるVは人によるし、そのVがどれほどの価値なのかも人による可能性があります。本事例は「おかね」という共通の尺度をやめてみよう、という話です。普通に考えたら「このクライアントが支払うVは市場で換算する〇〇円だから、我々の労働の対価として妥当である」と判断しそうなものですが、おかね以外の新たな価値でどんなVtoVマッチングが実現するのか、期待したいと思います。(尺度が法定通貨ではない、穀物や家畜といった商品貨幣の時代(=物々交換の時代)もありましたが、今ほど多様な価値観ではないので、その共同体内である程度共通の尺度であったと考えられます。)

「おかね」は、仕事の対価として長く社会を支えてきました。現在もおかねは重要な価値の一つですが、文化・生活様式・教育・情報などの多様化により価値観が変動するこの時代に、「おかね以外の新たな対価」の模索を楽しみながら仕事がしたいとおすしカンパニーは考えます。(おすしカンパニーLPより抜粋)

 Twitter上では税制上の問題を指摘するつぶやきが散見されました。これについて筆者は判断しかねるため意見はありません。ただ仮に課税されるのだとしたら、だれかのVをMに変換する必要があるということになるので、残念な気もします。いずれにせよローンチしたばかりで、具体的なケースはこれからのようですので、今後の動向をウォッチしていきます。

 さて、先述の通り当社は住宅産業に挑戦するベンチャー企業です。コンワダさんnoteを通して一貫して、多様化する暮らし方、住まい方に対応すために、一人ひとりが大事に思える評価指標を見つけることの重要性を述べてきました。障壁となるのが固定観念化された絶対的な指標の存在です。住宅においては広さや間取り、住設機器のスペックなど、あらゆる箇所(指標)に”良いとされる答え”があって、コモディティ化を引き起こしています。一般において(もちろん住宅においても)その代表格が本稿で取り上げた「おかね」です。人間は日常の買い物は少しでも安いほうがいいと思うのに、地位財(他人との比較によって満足が得られる財。家をはじめ、車、時計、洋服など)となるとそれが逆転し、「値段が高いほうが価値がある」となりがちです。自分にとっての「価値」は必ずしもお金ではないと気づいていても、否が応でも比べられることにヒヨって中途半端な落とし所を探してしまいます。だからこそ、おすしカンパニーの「おかね」以外の価値を全力で受け入れる姿勢に、非常に共感しております。

【参考文献】
貨幣とは(知るぽると 日本銀行情報サービス局内 金融中央委員会)
貨幣史(Wikipedia)

まとめ

 さて今週のコンワダさんはいかがでしたか?

 事例1で取り上げたオムニバス対談を読んで、まだアーキロイドnoteでは出していないような企画、特集もいくつか湧いてきました。ちなみに、アーキロイドではコンワダさんの他に、『アーキロイド、使ってみた』という不定期特集も組んでいますのでそちらもぜひご覧ください。

 今週も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。ぜひ「♡」をクリックしていってください。来週の執筆の糧になります。

「今週、社内で話題になった事例」 について
株式会社アーキロイドの社内で話題になった事例(ニュース、リリース、書籍、動画、論文などなど)のうち、いくつかをご紹介します。元記事の配信時期は必ずしも今週とは限りません。数ヶ月前、数年前のものもあるかもしれません。

社外にこれを発信することで、
①アーキロイドメンバーが日々どのようなことに目を向けているのか、を知ってもらいたい。
②せっかく読んでもらえるなら有益な情報をお届けするために、自分たちの情報感度をもっと高めていきたい。
という目論見があります。

メンバーも大半が30代に差し掛かってきたので、備忘録という意味合いが一番強いかも。ご笑覧ください。

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