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【8週目】 今週、社内で話題になった事例。(コンワダさん)

こんにちは、株式会社アーキロイドの津久井です。

さて、今週もアーキロイド社内で話題になった事例から、いくつかを選んで紹介します。バックナンバーはこちら
ではいってみましょう!

事例1:あなたの考え方診断(zero選挙)、選挙マッチング(選挙ドットコム)

【あなたの考え方診断 概要】
 日本テレビのニュース番組「news zero」の衆院選特設サイト「zero選挙」内で、JX通信社と協同提供しているサービス。

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▲全10問ほどの質問に回答します。(※このスクリーンショットはランダムに選択した結果です。株式会社アーキロイドとして、また筆者個人の政治的な意見では有りません。)

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▲自身の考え方をマッピングし、特定の選挙区における各候補との考え方の距離感を測ることが出来ます(※このスクリーンショットはランダムに選択した結果です。株式会社アーキロイドとして、また筆者個人の政治的な意見では有りません。)

【選挙マッチング概要】
選挙ドットコムが設置している、支持政党のマッチング診断WEBアプリです。

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▲全20個の政策トピックについて回答します。概要、メリット、デメリットが書いてあるのが助かる。

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▲『詳しく知りたい』をクリックすると、その問題についての概説を表示

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▲最後に自分が重要だと思うトピックや、自分の属性を選択すると、マッチング結果が表示されます。(※このスクリーンショットはランダムに選択した結果です。株式会社アーキロイドとして、また筆者個人の政治的な意見では有りません。)

【その他の類似サービス】
毎日新聞えらぼーと
JAPAN CHOICE
Yahoo!政党との相性診断

【アーキロイドポイント】
 第48回衆議院選挙が明後日に迫る中、タイムリーな事例です。この2つの事例は、自身の政治に対する意見と相性の良い政党、候補を把握するためには非常に良いWebサイトだと思います。もちろん、この結果が絶対というわけではなくあくまで参考に留め、最後は自身で票を投じる先を決める必要があります。筆者が選挙権を持ってから、毎回悩むのは「このトピックについてはこの人を推せるけど、これについてはなぁ」といった具合に一人の候補に絞ることの難しさです。本事例を持ってそれが解決されるわけではないのですが、例えば選挙ドットコムでは、20問の回答の後に重要だと考えるトピックを選択することが出来ます。自分の中の重み付けに沿った結果を閲覧できるのがポイントです。
 こういったWebサイトを介して、自分の政治的スタンスを理解する、評価基準を作っていく、知らなかった政治トピックを知る、という学びがあることが新しいと思いました。若い世代のタレントを起用して選挙に行こうと呼びかけるよりも、こういったUI/UXの方が遥かに効果的と感じました。言いかえれば、新聞やWebニュースなどで昔からよくある、各政党や候補者の公約まとめと、集めている情報自体が変わったのではなく、有権者が情報にアクセスする方法(UI/UX)が大きく変わりました。
 これまでコンワダさん(本事例集)では、"家は一生に一度の買い物なので、他の買い物のように経験的に好き/嫌い、良し/悪しが判断できるようになることはない"と、繰り返し述べてきました。これに当てはめると、"選挙は数年に一度やってくるけど、問題系が複雑で投票先を選ぶのがいつも難しい"と言えます。技術と仕組みを使ってその難しさをいくらか易しくする、そんなツールとして今後も期待していきたいと思います。(分人民主主義や液体民主主義など、これまでとは違う民主主義による解決の議論もありますが、それはまた別の機会に。)

事例2:東京23区のマンホール蓋をコンプせよ。インフラ老朽化対策に「シビックテック」の力(賞金総額100万円)

【本事例関連のリンク】
WholeEarthFoundation(運営団体)
渋谷区全域にある約1万個のマンホール蓋の写真を市民の力により3日間で収集完了(PRTimes)
東大、ボスコン、デトロイトを経たエリートが「マンホール」事業に挑むワケ(Forbes)
東京23区のマンホール蓋をコンプせよ。インフラ老朽化対策に「シビックテック」の力(HUFFPOST)

【概要:マンホール聖戦について】
 23区内にあるマンホールの写真を、市民の力を借りて収集する『マンホール聖戦 東京23区コンプまつり』という企画です。賞金総額100万円の市民参加型のゲームイベントで、参加者は専用アプリを通じてマンホールの写真を撮影、投稿するだけ。23区全域で47万箇所あるマンホールのうち、危険な場所を除く41万箇所の画像を収集する予定です。
 運営者はマンホールなどを製造する日本鋳鉄管株式会社WholeEarthFoundation(以下、WEF)です。今年8月には渋谷区1万個のマンホール画像を収集する『マンホール聖戦 in 渋谷』を開催し、結果として700名以上が参加し、たった3日間で1万個のマンホールをコンプリートしたそうです。
 実施の背景として、マンホールは全国に約1500万箇所あり、そのうち20%に当たる300万箇所のマンホールの蓋の耐用年数が過ぎています。陥没や車のタイヤがスリップするなどの事故に繋がる恐れがありますが、数が多すぎて行政で管理が行き届いていないことが課題でした。WEFに拠ると、こうしたインフラの老朽化や非効率性などの問題の対応には、各国GDPの3.9~9.7%の投資が必要だそうです。例えば日本のGDPの9.7パーセンとというと、約60兆円になります。

【概要:WEFについて】
 このイベントの運営者であるWEFは、インフラ管理の民主化を目指しています。インフラ関連情報の整備には2つの問題があります。1つ目は「インフラの提供者と市民の間で情報へのアクセスが不均衡であること」です。WEFでは環境やインフラに関するデータベースの提供や情報の可視化を通して、両者のより良いコミュニケーションを実現します。2つ目は「現状を打破するインセンティブの不足」です。WEFのデータベースは、参加者がデータを投稿、蓄積することで成長していきます。参加者にはWhole Earth Coin(WEC)と名付けたデジタルトークンを付与することで、サービスや商品の対価として使えるようになります。マンホール聖戦では賞金が参加者のインセンティブになっていました。(なお、事後アンケートでは、参加理由の1位は賞金ではなく「インフラの課題解決につながるというコンセプトに興味を持った・共感したから」だったそうです)
WEFはマンホール聖戦に拠る成功をステージ1と捉えて、ステージ2で防災減災を、ステージ3で環境問題や人口減少による空き家問題など、ESG視点を含めた多様な評価軸で情報を可視化する考えです。ステージ3になると、地域住民とともに未来のあるべき姿を描く為の情報プラットフォームになり得ます。本来、インフラの整備も町の管理も地域の人達が自分たちで見回り、修繕、情報共有していたのが、社会構造上難しくなっていったという歴史があり、技術と仕組み(WEF)で今一度あるべき姿に変えていきたいと考えているそうです。

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▲WEFの提供しているMAP。筆者も触ってみました。参加者によって「マンホールの陥没」「雨水管漏水」などのインフラの問題が報告、共有されています。

【アーキロイドポイント】
 東京23区のマンホール41万箇所の現況画像の収集を、都が事業としてやる場合、撮影する人件費及び機材代で数億円またはそれ以上の事業費がかかるでしょう。一方のマンホール聖戦では、人件費は賞金の100万円だけで、機材は参加者のスマホなので0円で実現。すごすぎて嘘みたいな数字です。ここに至るまでのシステム開発費を無視していますが、それでも一回の調査にかかる費用としては到底埋められない差があります。参加者、インフラ提供者、住民、すべての人にとって利のある状況です。全員がスマホでネットにアクセスできる世界では、これほどインパクトのあることが、しかも最先端のネタではなく老朽化したインフラというレガシー的な題材で実現できるんだという、ある種の感動を覚えました。
 2015年に採択され、日本でも近年話題のSDGsが「持続可能な開発目標」であるように、世界は常に経済成長を目指して動いています。一方でWEFのCEO森山氏は「目指すのは利益よりもインパクトが評価されるエコシステムの実現」と述べており、初手からそれを地で行っています。WEFが描くステージ3は、新しい民主主義の実現となりうるかもしれません。
 先述のように、住宅は一生に一回の買い物なので、提供者と消費者の情報格差が大きい産業の1つです。情報が不均衡ですが、消費者がそれに気付かないことも多く、気づいたとしても2度と経験しないので現状を打破するインセンティブ生まれ難いです。本事例のような直接的な公益の話ではありませんが、町に建物が立つというのはそれなりにインパクトのある出来事です。当社は住宅評価の可視化、情報の不均衡の是正に取り組んでいきたいと考えています。

事例3:The Urban Village Project

【概要】
 IKEAがサポートする、人と地球のためにより良い日常生活を創造するリサーチ・デザインラボ「SPACE10」によるプロジェクト。本プロジェクトでは、Liveability、Sustinability、Affordabilityの3つをキーワードに、未来の住宅、近隣、都市をどのように設計、建設、資金調達、共有するかを再考し、より安価な住宅の投入、持続可能で手頃な価格での生活を用意にし、より充実した共同生活を実現することを目標としています。背景として、急速な都市化、高齢化、気候変動、都市環境における孤独や不安の増大、世界中の都市における住宅価格の上昇という現状の問題がある上で、さらに増え続ける都市人口を収容するために、都市を2倍にする必要があるそうです。だからこそ、今、建築から環境を見直す必要があります。

【アーキロイドポイント】
現代~近未来の都市住宅の諸問題に対し、これほど多岐に答えを出している事例は珍しいのではないでしょうか。背景としては人口増加、経済成長に対する危惧がありながら、答えとして環境、メンタルヘルス、住みやすさ、改変性、段階的所有、などミクロな解を沢山打っています。トヨタのWoven Cityに比べると、とても素朴な印象です。
 これから本格的に家づくりに挑戦する当社としては、家1軒を建てることも大事ですが、常に大局観を持って取り組まなければいけないことである、と再認識しました。最後に類例より、下記一節を紹介します。

住宅政策は経済政策ではない。成長経済の役割を担うために住宅政策があるわけではない。どのような住宅を供給するか。どのような住宅に住むのか。それは私たちの日常を決定的なものにしてしまう。(『地域社会圏主義』山本理顕、ほか、より)

最後に

 今週の中身は、冷静というか素朴というか、少し落ち着いた回というのが筆者自身の印象です。皆さんはどう感じましたか?第8週目もお楽しみいただけたでしょうか。前回とおなじく少事例回ですが今回は文字数が多くなり、最後まで読んでいただきいつにもまして感謝しております。次週も読んでいただけたら幸いです。

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「今週、社内で話題になった事例」 について
株式会社アーキロイドの社内で話題になった事例(ニュース、リリース、書籍、動画、論文などなど)のうち、いくつかをご紹介します。元記事の配信時期は必ずしも今週とは限りません。数ヶ月前、数年前のものもあるかもしれません。

社外にこれを発信することで、
①アーキロイドメンバーが日々どのようなことに目を向けているのか、を知ってもらいたい。
②せっかく読んでもらえるなら有益な情報をお届けするために、自分たちの情報感度をもっと高めていきたい。
という目論見があります。

メンバーも大半が30代に差し掛かってきたので、備忘録という意味合いが一番強いかも。ご笑覧ください。

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