予防接種

こどもを守る予防接種について その2

目次 ◇その1◇ なぜ、はしかは流行ったのか? ◇その2◇ はしかはどのように大流行したのか? ◇その3◇ 厚生労働省のこれからの対策と現場の医師の声 ◇その4◇ 地方自治体がすべきこと ◇おまけ◇ 推薦図書の紹介 

沖縄を皮切りに全国的にはしかが流行しました。 沖縄で起こったはしかの大流行の原因は、こどもの未接種というよりもずっと未接種だった大人がいろんなところに動き回って流行拡大した感じでした。 では、沖縄の大流行はどのように終息されたのでしょうか?  沖縄県保健医療部
糸数公さん(保健衛生統括監)
のPDF資料を見てみましょう。

上記PDFにはしかに感染した場合の特徴が書かれています。 ① 一人の感染者から最大20名に感染します。 ② はしかの潜伏期間はおよそ10日です。 そのため風邪かと思って放置します。 ③ 肺炎と脳炎を合併すると重症化します。 ④ 流行当時の一歳ワクチン接種率は70%でした。 ⑤ 発症した人のほとんどは、大人でなおかつワクチン接種の記録がありませんでした。

では、沖縄で何が起こったのか書きます。 ① 台湾からはしかに感染した渡航者県内各地を観光しました。 ② そこで感染した20代から40代の成人はしかを広めました。 ③ 5月15日の報告では、99人がはしかに感染しました。 ④ 6月11日にはしかの終息宣言がだされました。 

対策として、予防接種を2回に増やすことで予防する。 MR(はしか・ふうしん)ワクチン1回接種だと5%の人が感染するリスクが残りますが、2回接種だとほぼ100%感染のリスクが無くなります。 上記の対策の中心は、こどもへの予防接種を推進する事でしたが、本当の問題は、感染症を媒介した予防接種を未接種の大人への対策がほとんどされませんでした

これから厚生労働省はどのような対策をするのでしょうか? 

2022年3月31日までの間に限り、昭和37年4月2日から昭和54年4月1日までの間に生まれた男性(対象世代の男性)が風しんに係る定期の予防接種の対象者として追加されました。

【目標】(1)2020年7月までに、対象世代の男性の抗体保有率を85%に引き上げる
    (2)2021年度末までに、対象世代の男性の抗体保有率を90%に引き上げる

【追加的対策のポイント】
 特に抗体保有率が低い、昭和37年4月2日から昭和54年4月1日までの間に生まれた男性に対し、
1. 予防接種法に基づく定期接種の対象とし、3年間、全国で原則無料で定期接種を実施
2. ワクチンの効率的な活用のため、まずは抗体検査を受けていただくこととし、補正予算等により、全国で原則無料で実施
3. 事業所健診の機会に抗体検査を受けられるようにすることや、夜間・休日の抗体検査・予防接種の実施に向け、体制を整備

厚生労働省のこのような方針に対して疑問を呈している現場の医師も多くいます。 その① なぜ、いちいち抗体検査をするのか?  これをすることで現場の医師の作業量が増えますし、検査をしても予防接種をしないと意味がありません。 でしたら、対象の昭和37年4月2日から昭和54年4月1日までの間に生まれた男性に対し、集団予防接種を実施した方が早く目的を達成できます。 その② いままで診療所や病院等で予防接種を終了したら、その報告書を保健所に提出しているのに保健所は、その記録を廃棄していて追跡調査ができなかった。 今は、電子記録にすれば廃棄する必要がないので、マインバーと紐づければ活用できるはずです。 

地方自治体がすべきことについて書こうと思います。 厚生労働省の目標を達成するために地方自治体がすることは、① 国民健康保険に加入している対象男性に対して集団予防接種と一人当たり数千円の予防接種報奨金を配布する。 ② 地域の事業所に対して予防接種率達成のインセンティブプランを提示する ③ ゲーム性のあるアプリを活用して予防接種率を向上させる などあります。 では、台東区のデータを例に書いてみます。

今回の厚生労働省が掲げている2020年7月まで30代から50代の男性の抗体保有率を85%に引き上げる目標を台東区が達成しようとする場合、台東区にこれに該当する男性は、どのくらいいるのでしょうか?

平成30年3月31日国民健康保険に加入している男性のデータを見ると30~59歳までの男性は、11,977人です。 この対象者に対して抗体検査+MRワクチン2回接種をすると一人当たり約3万円かかります。 85%の達成をするために3億541万円の費用がかかります。 この負担率を国が50%東京都25%そして台東区が25%を支出するとすると今年度の予算で7千635万円の計上していないと対策をする意志がないと思わざるおえません。 台東区にお住まいで区議員の知り合いがいる人がいましたら、台東区の予防接種対策予算は、いくらなのかをうかがってみてください。 おそらくほとんどの議員さんは、説明できないと思います。 

ちなみに昨年度の台東区議会議員の予防接種に関する反応を見てください。 平成30年9月28日の保健福祉委員会の模様です。 36分10秒からです。https://www.youtube.com/watch?v=FkuVqKWtzXM&t=2213s これも多くの見られると困るのでリンクが張れないようにしています。  この中で公明党の寺田議員の発言に対して台東区区議会に対して資料の請求をしましたが、棄却されました。



はしか対策に興味をお持ちでしたら、安次嶺 馨さんの日本から麻疹がなくなる日をおススメします。


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