
一級建築士学科試験/記述を正誤判別するためのキーポイントの覚え方
試験問題の記述には、「~とする。」で結ぶものと、「~とした。」で結ぶものとがあります。前者を規定型の出題とするなら、後者は例示型の出題と言えるかと思います。
問題の記述を読み、選択肢一つ一つの正誤判別をし、最も不適当なもの又は適当なものを結論づけていくのが、答えを絞り込んでいくプロセスになります。
不適当な記述は、正誤判別をする上でのキーポイントとなる部分の数値や大小関係を、正しくないものにしてつくられていることになります。キーポイントがどこであるのかを見極め、その正誤判別をするための知識の有無が、正誤判別をする上では重要になってきます。
以下、問題の記述のタイプによって、記述を読みながら、そのまま頭に残していいもの、そのままでは危うくなるものを整理してみます。
記憶は、気まぐれなところがあり、そう思い通りに残ってくれない場合もあります。正確さを担保しながら記憶を残すためにも、問題の記述がもつ性質を意識しながら読む習慣をつける必要があると思います。
1.「とした」問題
2.階段に上下2本の手すりを設けるに当たり、その上段の手すりの高さを80㎝とし、下段の手すりの高さを60㎝とした。
3.階段の蹴上げを15㎝、踏面を32㎝、蹴込みを1㎝とした。
(平成29年学科Ⅰ)
上記は、「とした」問題すなわち例示型の出題になります。
国土交通省の『高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準』によれば、それぞれ以下の通りとされています。
・上段の手摺の高さは75~85㎝程度、下段の手摺の高さは60~65㎝程度とすることが望ましい。
・蹴上げは16㎝以下、踏面は30㎝以上、蹴込みは2㎝以下とすることが望ましい。
上の設計標準に対し、問題の記述は、その標準値内で例示した型の出題になっています。両者を見比べてわかる通り、問題の記述にある数値をそのまま覚えることには意味がありません。むしろ、そのまま頭に残してしまうと、例示の数値を変えられたとき、判断ミスに繋がる可能性が出てきます。
例えば、「~その上段の手すりの高さを85㎝とし、~」と出題されたとき、頭に残っていた「80㎝」と一致しないことで不適当だと判断してしまうとミスに繋がるということです。
例示型の記述に対しては、解答・解説をよく確認し、標準値等をしっかり頭に入れておくことが重要になってきます。
2.「とする」問題
1.車いす使用者用客席・観覧席の数(可動席スペースを含む。)は、施設内容や規模に応じ、客席・観覧席総数の0.5~1%以上とする。
(平成28年学科Ⅰ)
上記は、「とする」問題すなわち規定型の出題になります。
『高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(劇場、競技場等の客席・観覧席を有する施設に関する追補版)』に記されている通りの問題の記述の仕方になっています。
問題の記述を読むことは、設計標準を読むのと同じことになりますので、記述そのものを丸暗記できるものなら、そうしたいところですが、これは難しいとしても、問題のキーポイントとなる「0.5~1%以上」は、覚えておく必要があるところです。
こういった記憶を曖昧なままにしておくと、「~客席・観覧席総数の1%以上とした。」や「~客席・観覧席総数の0.5%以上とした。」のような例示型の出題に対しも、正誤判別が危うくならないか想像してみると、覚えておくことの必要性が実感できると思います。
3.不変的なこと
出題者は、記述中のどこをキーポイントとしてくるか、そしてそのキーポイントとなる数値等を、どの程度記憶しておかないと正誤判別ができないかを、的確に捉えながら勉強していくことが重要です。
上の内容は、まだOHP(オーバーヘッドプロジェクター)を研修で使っていた時代から、講義で説明してきていることであり、試験勉強においては不変的なことだと言えます。