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一級建築士学科試験と設計製図試験をコラボして、建蔽率の改正に基づく設計与条件を掘り下げてみる

平成30年「健康づくりのためのスポーツ施設」の設計与条件に照らして、改正建築基準法に基づく、今後の建蔽率の限度の扱いについて考察してみます。

1.平成30年当時の設計与条件

・敷地は、第一種住居地域及び準防火地域に指定されている。また、建蔽率の限度は70%(特定行政庁が指定した角地における加算を含む。)、容積率の限度は200%である。
・床面積の合計は、2,300㎡以上2,800㎡以下とする。

建蔽率の限度70%についてになりますが、当時の建築基準法に照らせば、第一種住居地域内の都市計画で定められた建蔽率が60%で、法第53条第3項による特定行政庁が指定した角地における緩和によって10%加算され、70%ということになっていると思われます。

2.耐火建築物として計画する

構造種別は「自由」とされていますが、耐火建築物として計画することにして考えてみます。主要構造部は鉄筋コンクリート造(耐火構造)とし、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分には法第2条第九号の二ロに規定する防火設備を設ける計画となります。

3.準防火地域内にある建築物としての要件

令第136条の2
法第61条の政令で定める技術的基準は、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。
一 ~準防火地域内にある建築物で地階を除く階数が4以上のもの若しくは延べ面積が1,500㎡を超えるもの
 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 主要構造部第107条各号又は第108条の3第1項第一号イ及びロに掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備(~)が第109条の2に規定する基準に適合するものであること。ただし、~。
ロ ~

準防火地域内にある床面積の合計2,300㎡以上の建築物であることから、現行法に照らすと令第136条の2第一号に適合させる必要があります。

耐火建築物として計画することで、主要構造部は耐火構造となり令第107条各号に適合します。また、外壁開口部設備についても、法第2条第九号の二ロに規定する防火設備令第109条の2に適合したものとなりますので、主要構造部、外壁開口部設備とも令第136条の2第一号に適合し、準防火地域内にある建築物に求められる要件を満たしていることになります

4.建蔽率の緩和規定の適用

法第53条
3 前二項の規定の適用については、~、第一号及び第二号に該当する建築物にあっては同項各号に定める数値に10分の2を加えたものをもって当該各号に定める数値とする。
一 ~又は準防火地域内にある若しくはロのいずれかに該当する建築物
イ 耐火建築物又はこれと同等以上の延焼防止性能(~)を有するものとして政令で定める建築物(~)
ロ ~
二 街区の角にある敷地又はこれに準ずる敷地で特定行政庁が指定するものの内にある建築物

準防火地域内にある耐火建築物で、特定行政庁が指定した角地にあることから、法第53条第3項第一号及び第二号に該当することになり、現行法においては、10分の2すなわち20%加算されることになります。

5.改正建築基準法に基づき設計与条件を修正

以上により、平成30年当時は、旧法により10%加算であったものが、建築基準法の改正により、現行法では20%加算となります。

平成30年の建蔽率の与条件を改正建築基準法に基づいて緩和規定を適用すると、以下のように修正する必要があるかと思います。(都市計画で定められた建蔽率が60%20%加算)

建蔽率の限度は80%(準防火地域内にある建築物としての加算及び特定行政庁が指定した角地における加算を含む。)

6.そもそも建蔽率の条件には不文律があるのか?

平成27年「市街地に建つデイサービス付き高齢者向け集合住宅」の設計与条件は以下となります。

・敷地は、近隣商業地域及び防火地域に指定されている。また、建ぺい率の限度は90%(特定行政庁が指定した角地における加算を含む。)、容積率の限度は400%である。

防火地域内にある床面積の合計2,600㎡以上の建築物であることから、旧法第61条により耐火建築物とする必要がありました。近隣商業地域内の都市計画で定められた建蔽率は60%又は80%になりますが、防火地域内にある耐火建築物であること、特定行政庁が指定した角地であることの両面から、緩和規定を適用することになります。旧法第53条第3項によって20%加算されるか、又は旧法第53条第5項によって建蔽率制限の適用を受けないことにもなり得ました。

上の点を鑑みて90%を数学的に逆算すると、80%+10%の組合わせしかありませんので、特定行政庁が指定した角地における加算のみが考慮されていることになり、防火地域内の耐火建築物であることは無視した形になっています。

都市計画で定められた建蔽率が80%であるなら、防火地域内にある耐火建築物は、建蔽率の制限を受けない、つまり建蔽率の限度は100%になるというのが、旧法第53条第5項による解釈です。

構造種別は「自由」とするとはありますが、防火地域内にある建築物として耐火建築物とする義務が生じていながら、設計与条件において『90%(特定行政庁が指定した角地における加算を含む。)』としていることには、建築基準法に照らすと疑問が残ります。

これを設計製図試験における不文律と考えるなら、これまで準防火地域と指定する敷地条件が多い中、令和2年以降も、現行法第53条第3項の適用による準防火地域内にある耐火建築物としての10%加算を無視する形での出題になるのでしょうか?

建蔽率の限度は、60%70%として出題されると、これをオーバーしてしまいランクⅣになる可能性も高くなってきます。改正建築基準法に基づいて、準防火地域内にある耐火建築物としての10%加算が考慮された形で出題されてくると、計画の難易度は違ってきますので、受験者にとっては大きいことです。

答案の面積表に、建築面積の記入が求められるようになったのが平成28年からになります。平成29年の「小規模なリゾートホテル」のロケーションは例外として、他3年間は、すべて準防火地域に指定されていますので、旧法に基づけば、角地における加算以外の建蔽率の緩和規定の適用を考える必要はありませんでした。

令和2年以降も建築面積を記入させるとしたら、建蔽率の限度に対しシビアな採点をしてくることになるでしょう。令和元年には、設計課題名の公表時に、以下の内容が明示されました。

(注3)
建築基準法令に適合した建築物の計画(建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画、避難施設 等)

このような中、準防火地域内にある耐火建築物の10%加算の適用について、改正建築基準法に基づかず、平成27年のように試験の上での不文律により建蔽率の限度を定めて出題することがあるのだろうか?と思います。


以下の記事も参考にしてみて下さい。


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企業内一級建築士資格取得研修の23年間の実績。前提となる基礎知識を積み上げながら、⾃分がわかりたいところまで辿り着くことが理解。減点要素となり得る問題点のうち、回避すべきものと許容できるものを取捨選択していくことが判断。co-師(学びあう共育者)というスタンスで発信します。