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一級建築士学科試験|令和3年4月1日施行まで2年がかりの改正建築物省エネ法

令和元年5月17日に公布されていた「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律」のうち、6か月以内施行の部分は令和元年11月16日から施行されていました。
残りの2年以内施行の部分が令和3年4月1日から施行されましたので、一通り出揃ったところでの令和4年試験からの適用となります。
以下に、一連の内容を整理しておきます。

1.特定建築物についての基準適合義務

改正前は非住宅部分の床面積が2,000㎡以上の大規模なものを「特定建築物」としていましたが、改正後は非住宅部分の床面積が300㎡以上の中規模以上のものを「特定建築物」とすることに令和3年4月1日から改められています。

「特定建築物」については、新築時等において、「建築物エネルギー消費性能基準」適合させなければならないとされています。
また、上の基準適合義務については、建築基準法第6条第1項に規定する建築基準関係規定とみなすこととされ、建築確認手続きに連動させたものになっています。

 *法第11条、法第12条、令第4条

2.住宅についての届出義務と手続きの合理化

床面積が300㎡以上住宅(特定建築物以外の建築物)については、新築時等において、「建築物のエネルギー消費性能の確保のための構造及び設備に関する計画」所管行政庁に届け出なければならないとされています。
上の省エネ計画が、「建築物エネルギー消費性能基準」に適合せず、必要と認める場合、所管行政庁は指示・命令ができるようになっており、監督の実施に重点をおいています。

届出に併せて、住宅性能評価書(住宅品確法)等を提出することで、届出期限を着工の21日前から3日前に短縮するなど、所管行政庁の審査手続が合理化されています。

 *法第19条、令第8条、規則第13条の2

3.小規模建築物についての努力義務と説明義務

床面積が300㎡未満の小規模建築物(非住宅・住宅)については、新築時等において、「建築物エネルギー消費性能基準」に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならないと、努力義務が求められています。

加えて令和3年4月1日から、床面積の合計が10㎡以下のものを除いて、建築士が設計を行う際、建築主に対して、「建築物エネルギー消費性能基準」への適否等の説明をする義務が、原則求められるようになりました。

 *法第6条、法第27条、令第10条

4.住宅トップランナー制度

令和元年の改正前から住宅事業建築主に対する基準は定められていました。
改正建築物省エネ法の令和元年11月16日からの施行により、住宅トップランナー制度の対象が拡大され、これに伴って用語も整備されています。

改正前は住宅事業建築主とされていた特定建築主が、分譲型一戸建て規格住宅(建売戸建住宅)を新築する際に、経済産業大臣及び国土交通大臣が定める住宅トップランナー基準(省エネ性能の一層の向上の目標とした、建築物エネルギー消費性能基準よりも高い水準)に適合させる努力義務が求められています。

対象の拡大により、特定建設工事業者が、請負型規格住宅を新たに建設する際にも、住宅トップランナー基準に適合させる努力義務が求められるようになりました。

住宅トップランナー制度の対象となる特定建築主特定建設工事業者は、それぞれ以下の戸数以上を1年間に新築・建設する住宅事業者となります。
(制度の対象要件は、床面積が300㎡以上または未満といった規模によるものではありません。)
<特定建築主>
・分譲型一戸建て規格住宅(建売戸建住宅)≧150戸/年
<特定建設工事業者>
・一戸建ての住宅(注文戸建住宅)≧300戸/年
・長屋又は共同住宅(賃貸アパート)≧1,000戸/年

トップランナー基準の水準は、建売戸建住宅、注文戸建住宅、賃貸アパートで異なります。これについては、それぞれ供給される住宅の省エネ性能の実態や普及している設備の仕様により、達成可能なものであるかを総合的に勘案して目標とする水準を定めているため、異なるものとなっています。

目標年度においてトップランナー基準で定められた目標の達成状況が不十分であるなど、省エネ性能の向上を相当程度行う必要があると認めるときは、国土交通大臣が特定建築主・特定建設工事業者に対して、勧告・公表・命令をすることができるようになっています。

 *法第28条~法第33条、令第11条、令第13条、省令第8条~第9条の3

*以下にある「webサポート資料室|法規分室」内に、本記事を含む複数の記事をまとめて掲載しています。


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