一級建築士学科試験で学ぶ「涼」をもたらす「潜熱」
1.温度が変化しない潜熱の働き
ヤカンに水を入れてお湯を沸かすとき、コンロの炎によって熱が加えられると、段々水の温度が上がっていくことは、想像しやすいと思います。温度計をさしておけば、熱の供給に比例して、温度計の値が上がっていくことになります。
水、お湯とも温度が違うだけで「液体」です。このように、「液体」から「気体」へと状態変化することなく物質の温度を上げたり下げたりする熱を「顕熱」といいます。
これに対して、ヤカンにさした温度計を見ていると100℃から値が変化しなくなります…コンロによって熱が加えられ続けているのにです。ヤカンの注ぎ口を見てみると、水蒸気が吹き出しており、お湯が水蒸気に、つまり「液体」から「気体」へと状態変化していることがわかります。このように、物質を状態変化させる熱を「潜熱」といいます。「液体」から「気体」になるときは潜熱を取り込み、「気体」から「液体」に戻るときは潜熱を放出することになります。
2.打ち水効果
暑い夏、地面に水を撒くと涼しく感じますが、こういった「打ち水」は、その光景が涼しく感じさせているだけなのか、果たして物理的に涼しい状態になっているのか?
撒かれた水は蒸発しますので、状態変化するための潜熱が必要になります。この潜熱はどこから取り込んだ熱かと言えば、周囲から奪った熱となりますので、熱を奪われる側となる周囲の空気温度は低下することになります。
こうして、水の蒸発によって、周囲の空気温度が低下しますので、打ち水効果が「涼」がもたらします。
3.蒸散作用
「蒸散」とは、植物中の水分が水蒸気になって放出される現象です。植物は、根から吸い上げた水分を、葉の気孔から出して蒸発させていきます。このときに、状態変化するための潜熱が必要になりますので、打ち水と同様、周囲から熱を奪うことになります。
周囲の空気温度が低下し、植物の蒸散作用が「涼」をもたらします。
4.エアコン内部での冷媒の蒸発
冷房時、エアコンの室内機へ吸い込まれた室内の空気が、再び吹き出されてくるとき、空気が冷たくなっています。つまり、室内機の中で、空気は熱を奪われていることになるわけです。
エアコンは、室内機と屋外機からなり、この間を冷媒(代替フロン)が行ったり来たりを繰り返しています。冷房時、屋外機から冷媒は液体の状態で室内機に送り込まれてきます。室内機の中で冷媒は蒸発して、気体になって屋外機へ戻っていきます。このとき室内機の中で、冷媒が液体から気体に状態変化するためには、潜熱が必要になります。
室内機へ吸い込んだ空気から熱を奪って、これを潜熱として冷媒は蒸発します。熱を奪われた空気は、室内機の中で冷却されて吹き出されることになり、これが冷房の原理です。
エアコンにおいても、冷媒の蒸発が「涼」をもたらしていることになります。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?