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一級建築士学科試験|公立小学校等を特別特定建築物に追加したバリアフリー法の術

公立小学校等のバリアフリー化を進めるため、「建築物移動等円滑化基準」への適合義務がある「特別特定建築物」に、公立小学校等を追加する「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令の一部を改正する政令」が、令和2年10月2日に交付されていました。

これが令和3年4月1日より施行されており、令和4年試験からの適用となりますので、以下に、まとめておきます。

余談になりますが、バリアフリー法の改正等も受けて、⽂部科学省において「学校施設バリアフリー化推進指針」を令和2年12月に改訂しています。

1.特別特定建築物へのイレギュラーな追加

令第5条第一号において、「特別特定建築物」に、「小学校、中学校、義務教育学校若しくは中等教育学校(前期課程に係るものに限る。)で公立のもの(第23条及び第25条第3項第一号において「公立小学校等」という。)」が追加されています。

ここでまず、そもそも「特別特定建築物」とは何か?ということを確認しておきます。
法第2条第十九号において、「不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する特定建築物その他の特定建築物であって、移動等円滑化が特に必要なものとして政令で定めるものをいう。」と定義されていますが、今回の改正に伴い「その他の特定建築物」を追加した表現になっています。
小学校や中学校の利用者とは、異なる者(不特定かつ多数の者又は主として高齢者・障害者等)が利用する特定建築物を、もともとは「特別特定建築物」としていたことになります。
ちなみに改正前から令第5条第一号にある、障害のある幼児・児童・生徒が利用する「特別支援学校」は、主として障害者が利用する学校になりますので、改正前の定義に該当しています。
しかし、小学校や中学校については、改正前の「特別特定建築物」の定義に当てはめることには少々無理がありますので、「その他の特定建築物」という文言を加えたものと思われます。

「公立小学校等」「特別特定建築物」に追加するだけだと、他の規定との間で表現上の矛盾が生じる可能性が出てきます。なぜならもともと前提としていた利用者が違っているからです。
したがって、こうした矛盾が生じないように、他の規定についても条文の読替えをする等の改正が行われています。

2.条文を読替える

改正により、下記の令第23条が、新設されました。

(公立小学校等に関する読替え)
令第23条
公立小学校等についての第11条から第14条まで、第16条、第17条第1項、第18条第1項及び前条の規定(次条において「読替え対象規定」という。)の適用については、これらの規定中「不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する」とあるのは「多数の者が利用する」と、前条中「特別特定建築物」とあるのは「第5条第一号に規定する公立小学校等」とする。

令第23条により、「公立小学校等」に対する「読替え対象規定」の一つである令第11条を例にすると、以下のように読替えることになり、小学校や中学校の多数の者が利用する廊下として、表現上矛盾することなく規定していることになります。

令第11条 
不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する廊下等は、次に掲げるものでなければならない。
⎯⎯読替えると⎯⎯
多数の者が利用する廊下等は、次に掲げるものでなければならない。

また同じく、令第23条の前条となる令第22条の読替えは以下の通りとなります。

令第22条
建築物の増築又は改築(用途の変更をして特別特定建築物にすることを含む。第一号において「増築等」という。)をする場合には、第11条から前条までの規定は、次に掲げる建築物の部分に限り、適用する。
⎯⎯読替えると⎯⎯
建築物の増築又は改築(用途の変更をして第5条第一号に規定する公立小学校等にすることを含む。第一号において「増築等」という。)をする場合には、第11条から前条までの規定は、次に掲げる建築物の部分に限り、適用する。

以上のような読替えをすることで、「建築物移動等円滑化基準」に関する規定が、表現上矛盾することなく、「公立小学校等」に適用できるものとなっています。

3.学校施設バリアフリー化推進指針

参考のため、文部科学省が「学校施設バリアフリー化推進指針」(令和2年12月改訂)の中で示している考え方を、以下に記載しておきます。

学校施設のバリアフリー化等の視点 
(1)障害のある児童生徒等が安全かつ円滑に学校生活を送ることができるように配慮
(2)学校施設のバリアフリー化等の教育的な意義に配慮
(3)運営面でのサポート体制等との連携を考慮
(4)地域住民の学校教育への参加と生涯学習の場としての利用を考慮
(5)災害時の避難所となることを考慮

4.改正前後で正誤が逆転する問題の例

床面積の合計が2,000㎡以上の公立中学校を新築しようとするときは、建築物移動等円滑化基準に適合させなければならない。

改正前においては、公立中学校は「特別特定建築物」に該当しませんでしたので、「建築物移動等円滑化基準」への適合義務はなく、上記は誤った記述になります。

しかし改正後の現行法においては、公立小学校等(中学校を含む)は「特別特定建築物」に該当することになりましたので、床面積の合計が2,000㎡以上の場合は基準適合義務の対象となり、正しい記述になります。
(法第14条第1項、令第5条一号、令第9条)

以上のように、改正により正誤が逆転することがありますので、最新の法令集と法改正に対応した問題等で勉強していくことは重要です。


*以下にある「webサポート資料室|法規分室」内に、本記事を含む複数の記事をまとめて掲載しています。

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