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明治の美しき銀行建築 京都文化博物館別館×カプチーノソフトを堪能【京都】

私達の身の回りに当たり前にあって、日々の生活を豊かにしてくれるもの、それは建築と甘いもの。
このnoteでは、建築好きの私 やま菜がおすすめしたい建築と甘いものを紹介していきます。

今回訪れたのは、古都 京都の銀行を改修してつくられた複合施設。
京都の中でもとりわけ多くの近代建築が立ち並ぶ三条通りに、とっておきの建築と甘いものスポットがある。


1.日本銀行京都支店を改修した複合施設を訪問

今回訪れたのは、京都の烏丸御池駅を降りて程なく歩いたところに建つ京都文化博物館別館(旧日本銀行京都支店)だ。

京都文化博物館別館が建つ三条通りは、明治〜大正時代にかけて建てられた近代建築が数多く残されている近代建築ストリートでもある。
そんな通りの西端に建つ京都文化博物館別館は、元々は日本銀行の京都支店として明治39年(1906年)に建設された建物だ。

建物の設計を手掛けたのは、東京駅丸の内駅舎や日本銀行本店などの作品で知られる辰野金吾と、辰野の教え子であり、当時日本銀行で技師を務めていた長野宇平治。

赤煉瓦と白い花崗岩が印象的な外観は、後に建築される東京駅丸の内駅舎などにも用いられ、「辰野式」と呼ばれることにもなる華やかなデザインだ。

煉瓦同士の継ぎ目である「目地」は、目地を盛り上げて施工する日本独自の技術 覆輪(ふくりん)目地となっているのも注目ポイントだ。
今ではほとんど見かけないが、この覆輪目地によって、陰翳豊かで立体感のある煉瓦の外観がより際立つのだ。

細かいポイントではあるけれど、名建築の荘厳で味わい深い魅力の中には、こうした小さな工夫の積み重ねがあることが分かると、とても面白い。

今回甘いものを頂く前田珈琲 文博店は、建物裏の中庭に面して建つ旧日本銀行の金庫室部分を改修してつくられたカフェだ。

前田珈琲は、今から約半世紀以上前の1971年に創業した珈琲店だ。
京都では京都国際マンガミュージアム内にあるマンガミュージアム店や、旧明倫小学校内にある明倫店など、文化財建築を改修したカフェを運営する珈琲店としても知られている。

店内は真っ白な壁と濃い木調のインテリアを中心に落ち着いた雰囲気のカフェとなっている。

今回頂いた伽羅-きゃら-は、カプチーノソフトとコーヒーゼリーをあわせた看板メニューだ。

コーヒーゼリーとカプチーノのソフトクリームの相性は抜群で、さっぱりとした味わいで珈琲の魅力をたっぷりと味わえる。
プラス200円でドリンクセットにもできるのも嬉しい。

メニューは他にも、提供数限定のモーニングから、カレーやミートスパゲッティなどのランチメニューもある。

モーニングは分厚いホットサンド、サラダ、ドリンクがセットになっていて、優雅な朝食が味わえる。

2.銀行自体の記憶が色濃く残る館内をたっぷりと堪能

お腹を満たした後は建物の中を散策した。
旧営業室は、赤煉瓦の外装から雰囲気がガラリと変わり、白い壁と濃い木質の素材のコントラストが印象的な空間となっている。

この旧営業室は現在はホール・イベントスペースとして利用されていて、私が訪れた時も入場無料の展示会が行われていた。

銀行のカウンターは当時使われていたものが復元されていて、100年前の銀行時代の雰囲気を味わえる。
カウンターの中と外を仕切る鉄の柵は、柔らかなカーブを描いた可愛いデザインとなっているのも素敵だ。

広々とした内部空間には、側面の開口部からたっぷりと自然光が降り注いでいる。
天井には天窓も設置されていて、内部は想像以上に明るく開放的に感じられる。

上部に見えるバルコニーのような回廊は、警備員が巡回して問題や不正がないかをチェックするためのものだ。
監視カメラがなかった時代の銀行建築の特徴的な設備だが、こうした今の建築では見られない要素を間近で堪能できるのもとても面白い。

館内は他にも雑貨屋さんやアンテナショップなどもはいっているので、訪れた際はショップを巡りつつ、昔の建築ならではの工夫や特徴を見つけてみるのもオススメだ。

【京都文化博物館別館 施設情報】
設計:辰野金吾+長野宇平治
住所:京都府京都市中京区高倉通三条上ル東片町623-1
行き方:烏丸御池駅より歩いて約5分
竣工:明治39年
会館時間:
 別館 10:00~19:30
 前田珈琲 10:00~19:00
休館日:月曜日
その他:国重要文化財
公式Webサイト:https://www.bunpaku.or.jp/

3.あわせて訪れたいおススメのグルメ建築

せっかくなので、京都文化博物館別館あわせて訪れたい近代建築についても少し紹介したい。(京都には素敵な近代建築が多いが、ここでは食事もできるおススメ建築ととして2建築を紹介する)

まずはじめに紹介する京都芸術センターは、1931年に建設された京都市立明倫小学校を改修してつくられたアートの創造・発信拠点だ。

2000年の大改修時には、大手組織設計事務所である佐藤総合計画が設計を手掛け、元の建物を最大限に生かしつつ芸術センターへの改修が行われているのが特徴だ。

建物の外観は、優しいクリーム色の外壁に、当時流行していたセセッション風の門柱やスパニッシュ風の屋根を取り入れたモダンなデザインとなっている。
柔らかくも独特の色使いや、町家や祇園祭などの雰囲気を感じる和風の意匠を施しつつ、親しみが持てる小学校らしいデザインなっているのが素敵だ。

併設のカフェも楽しげな雰囲気で、気軽に利用できるので、近くを訪れた際はぜひ立ち寄ってみてほしい。

【京都芸術センター 施設情報】
改修設計:佐藤総合計画
住所:京都府京都市中京区室町通蛸薬師下ル山伏山町546-2
行き方:四条駅または烏丸駅より歩いて約3分
開館時間:
 ギャラリー・図書室・カフェ10:00~20:00
 制作室・事務室10:00~22:00
休館日:年末年始
入館料:無料
竣工:昭和6年(平成11年改修)
備考:国登録有形文化財
2002年BELCA賞
2006年公共建築賞 特別賞
公式Webサイト:https://www.kac.or.jp/

続いて紹介する新風館は、1926年に建てられた旧京都中央電話局を増築・改修してつくられた複合施設だ。

旧京都中央電話局の設計を手掛けたのは、昭和の日本を代表する建築家である吉田鉄郎だ。その後、2001年には世界的建築家であるリチャード ロジャースらにより大規模な増築・改修が行われ、元の建物を活かしつつ、古い建物と対を成すようなビビットな色の鉄骨や中庭のイベントスペースが設けられた。

さらに、2021年に隈研吾建築都市設計事務所がデザイン監修を手掛けた改修が行われ、旧京都中央電話局の東側の中庭を継承しつつ、新たに地上7階地下2階建てホテル・レストラン・商業施設がつくられた。
新しい新風館は、隈研吾氏がよく用いる木や金属といった素材を組み合わせながら、静と動の両方を感じる建物となっているのが面白い。

駅からのアクセスもよく、複数のカフェやレストランがはいっているので、建築巡りの休憩スポットとしてもオススメだ。

遠目では落ち着いているようで、近づいてみるとダイナミックなデザインとなっていたり、逆に近づいてみて初めて感じられる木や錆などの素材感など、様々な仕掛けが楽しい建築となっている。

【新風館 施設情報】
改修設計(令和2年):隈研吾建築都市設計事務所+NTTファシリティーズ
改修設計(平成13年):リチャード ロジャース パートナーシップ ジャパン+NTTファシリティーズ
原設計:吉田鉄郎
住所:京都府京都市中京区烏丸通姉小路下ル場之町586-2
行き方:烏丸御池駅より歩いて約1分
竣工:大正15年(旧京都中央電話局)、平成13年・令和2年改修
営業時間:
 ショップ 11:00~20:00
 レストラン 8:00~24:00
備考:第30回AACA賞
2021年グッドデザイン賞
2021年JIA優秀建築選100選
公式Webサイト:https://shinpuhkan.jp/

今回は京都の建築と甘いものを紹介しました。
どの建築も素晴らしい体験と味を楽しめる名建築なので、皆さんも機会があれば是非訪れてみて下さいね。

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