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WEEKLY REFEREEING ANALYSIS #1-4 「J1第31節 札幌 vs C大阪」R西村雄一さん 45分-60分

前半を受けての見通し

4人の審判団全体がそれぞれの仕事をして、何事もなく試合が流れていったこの試合。札幌0-1C大阪という試合状況で、試合がどのように動くか。そして、その試合の流れに応じて審判団全体がどうマネジメントしていくか。そんなことに注目が集まる後半。45分から60分まで今回は取り上げる。

目次に重要度を星で示しています。お忙しい方は星の多い物のみ読んでみてください。他のこの試合についての分析については、最後にまとめてあります。目次からジャンプしてお読みいただけると幸いです。

明治安田生命J1リーグ 第31節
北海道コンサドーレ札幌 1-3 セレッソ大阪
審判団 主審 西村 雄一 副審1 野村 修 副審2 堀越 雅弘 第4の審判員 船橋 昭次
得点者 札幌  ジェイ (65')
    C大阪 ブルーノ メンデス (40'・80') 清武 弘嗣 (54’)
警告  札幌  ジェイ (62')
シュート数    札幌  9-14 C大阪
コーナーキック数 札幌  5-1  C大阪
フリーキック数  札幌  13-12 C大阪
(J. League Data Siteより作成 https://data.j-league.or.jp/SFMS02/?match_card_id=24159)

45:00 キックオフ

札幌ボールのキックオフで後半開始。前半のC大阪同様キックオフ直後(#1-1参照)にロングボールを蹴るという予測の元、西村主審はC大阪陣内にポジショニング。予測は的中し、理想的な角度・距離から監視がなされていた。

★★45:22~45:34 ポジショニングの修正力

スライド8

札幌が自陣でボールを奪い、左サイドにいた5福森晃斗選手に横パスが出る。横パスが出たことを受け、左サイドで展開されると予測した西村主審は左サイド大外に出ることで、「R-B-A」の形をとるための動き(×で示した動き)を見せる。福森選手は、その予測に反して前線にいる7ルーカスフェルナンデス選手にラフなボールを出す。その動きを受けて、動きを修正して縦への動き(○で示した動き)を見せる。このことにより距離はやや離されたが、最適な角度を取ることに成功する。ポジショニングにおいて、距離はもちろん大切ではあるが、それより大切なのは適切な角度をとることである。角度が適切だとある程度距離があっても正しい判定をする確率は高い。基本に忠実な西村主審のポジショニングをよく示すシーンであるといえる。

★ 50:00 後半1stファウル C大阪15 瀬古 歩夢⇒札幌48 ジェイ

ハーフウェーライン付近で後方からのロングボールに対し、ヘディングをしようとする競り合いが起こった。後方にいたC大阪15瀬古歩夢選手が札幌48ジェイ選手を手で押さえ、引き倒す形になったためホールディングの反則。

★ 52:07 ノーハンド判定

PA内で札幌のクロスが、C大阪22マテイヨニッチ選手の体の側面に当たった。腕はしっかりと閉じられており、不自然に広げられていないためノーハンド判定は妥当。

★★★ 【西村主審のスーパーポジショニング】52:06 タックルに対しノーファウル判定

自陣でボールを奪ったC大阪がカウンターで素早くビッグチャンスを作った。このシーンで、抜け出してPA手前でGKの1対1になりかけたC大阪2松田陸選手に対し、猛ダッシュで戻った札幌7ルーカスフェルナンデス選手がボールにしか触れない後方からの完璧なスライディングタックルでボールを奪取した。このシーンで西村主審は、ランニングからスプリントに切り替え、5mの位置で判定した。NHKで解説を務めた山本昌邦さんも「なにより西村主審のポジショニングが素晴らしい」と称賛するほどの説得力にあふれる素晴らしい判定だった。このような判定に対する真摯な姿勢の積み重ねが90分通じたレフェリングの安定感につながるのだろう。レフェリーに注目しない方もみてほしいシーンである。

★ 52:17 ファウル C大阪3  木本 恭生⇒札幌14  駒井 善成

上述のスーパーポジショニングからの札幌の攻撃において、札幌7ルーカスフェルナンデス選手が14駒井善成選手とワンツーパスをしようとしたところ、パスを返した駒井選手に対してC大阪3木本恭生選手が遅れてキッキングをしてしまう。西村主審はアドバンテージを見れるか笛を吹くのを遅らせたが、C大阪5藤田直之選手にボールが渡ったため、反則のホイッスル。藤田選手は自分は何もしていないのに反則を吹かれたため、不満の様子を示したが、西村主審は駒井選手と木本選手がいるところを指さし、別の場所で反則を吹いたということを伝えるマネジメント。C大阪2松田陸選手が駒井選手を起こしてあげるリスペクトにあふれる行動。素晴らしい行動だったと思う。

53:49 ゴール C大阪10 清武 弘嗣 札幌0-2C大阪

札幌7ルーカスフェルナンデス選手がドリブルしていたところに、C大阪2松田陸選手がお返しとばかりに、こちらもクリーンなショルダーチャージでボールを奪ったところから攻撃が始まり、C大阪10清武弘嗣選手が抜け出し、ゴール。副審1の野村修さんが難なくNotオフサイドを判定し、得点。

★ 57:29 ファウル 札幌8 深井 一希⇒C大阪25 奥埜 博亮

57分に交代で入った札幌8深井一希選手がC大阪25奥埜博亮選手を後ろから軽く踏んでしまい、トリッピングの反則。「踏んじゃった」といった感じで、不用意な反則で妥当。踏まれたこともあり少し奥埜選手が痛んでいたため、西村主審が対応。踏んだ直後にも謝って自陣に戻った深井選手も戻ってきて、再度謝っていた。

子のファウルには当てはまらないが、交代直後の選手は試合の判定基準から浮いてしまうことがままあるので、交代して入った選手に対してレフェリーは意識をしておくことが大切である。

★★★ 58:47 タッチジャッジのミスとマネジメント

副審1の野村修さんが本来C大阪ボールとすべきシーンで、C大阪2松田陸選手が触ったと見誤り、札幌ボールのシグナルをしてしまう。

西村主審は、10ヤード(9.15m)程度の真横という完璧な位置から見ており、松田選手は触っておらず、C大阪ボールであることをしっかり見ていた。そのため、笛を吹いて、判定を修正してC大阪ボールを宣告。

松田選手は野村さんに対して不満を示し、札幌陣内深い位置であったため、守備側の準備も必要だと感じた西村主審は、時間を取って「ごめんね。ちょっと待って。ちょっと待って。みなさんいい?」と声をかけて、笛で再開。この時間を取って、落ち着かせるというマネジメントは、必要なマネジメントで、レフェリーチームとしての信頼を保つ上でも不可欠だった。非常に素晴らしい間の取り方だった。

野村さんのミスに関しては、当たったという確信の元あまりに早くシグナルしてしまったことだと考える。タッチジャッジに関しては、急いでもなにもいいことはないと個人的に考えるが、一拍置いてアイコンタクトをすれば防げるミスなので、私たちも気を付けたい。前に書いたように、タッチジャッジの些細なミスからレフェリーチームの信頼感が失われ、試合が荒れ模様になることは大いにあるので、気を付けたいものだ。

★ 59:30 ファウル C大阪25 奥埜 博亮⇒札幌7ルーカスフェルナンデス選手

札幌7ルーカスフェルナンデス選手が自陣深くでボールを持ったところにプレスをかけたC大阪25奥埜博亮選手が背中を押し、プッシングの反則。不用意な反則で妥当。

45分―60分のまとめ

この時間帯判定としては難しいものはなく、非常に落ち着いたゲームとなってきた。これも前半から継続して、予測・ポジショニング・判定・マネジメントをすべて怠らずに継続してきたことの賜物であると考える。

59分のタッチジャッジのミスでも、丁寧にマネジメントをすることが何より大切だったと考える。「事実の判定」であり、繊細な問題であるタッチジャッジのミスに対して、真摯に向き合い、間を取ったことは細かなことであるとは思うが、非常に大切なマネジメントだったと思う。

次回は、60分から75分の後半の中ごろを扱う。次回もお楽しみに。

この試合を分析したシリーズ

#1-1「イントロダクション・0分-15分」


#1-2「15分-30分」

#1-3「30分-45分・前半のまとめ」


この試合のハイライト



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