読書感想文(276)パウロ・コエーリョ『アルケミスト』(山川紘矢・山川亜希子訳)

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は久々に海外文学です。
読んだきっかけは本屋さんで偶然見かけた時にオススメされたことです。

感想

とても良かったです。
今年読んだ中で一番かもしれません。
毎年、読んだ本の中で特に印象に残っているものをnoteにまとめていますが、今年はこの本が一番かもしれません。
まあまだ年末までには時間があるので、これから長い時間をかけて、この本がどのように自分の中で消化されていくのか、楽しみです。
ただ、自己啓発的な要素も含まれるので、人によって好みは分かれそうな気がします。

この本を読みながら、私は筒井康隆さんの『旅のラゴス』を思い出しました。
違う部分も結構多いのですが、「旅」という共通項で、ラゴスは大人、こちらの本は少年というイメージです。
『旅のラゴス』は元々近いうちに読見直そうと思っていたので、また感想を書くことになると思います。
あとは「子ども」繋がりで『星の王子さま』を思い出しました。こちらは解説で海外ベストセラーとして名前があがっており、やはり同じように感じる人もいるのだなと思いました。
子どもから大人になろうとしている今の自分が今読むべき本だった気がします。
世間的に見れば既に立派な大人ではありますが……。

さて、ここからはいつも通り引用しながら書くつもりですが、沢山気になったところがあるので長くなるかもしれません。

この次はもっと厚い本を読むことにしようと、彼は独り言を言った。そうすれば、もっと長く楽しめるし、もっと気持ちのいいまくらになるだろう。

P7

日々の生活に追われて、ライトな本をつい手に取ってしまいがちだなぁと思いました。

彼にはいつも新しい友人ができたが、すべての時間を彼らと過ごす必要はなかった。神学校にいた時そうであったように、同じ友人といつも一緒にいると、友人が自分の人生の一部となってしまう。すると、友人は彼を変えたいと思い始める。そして、彼が自分たちの望み通りの人間にならないと、怒りだすのだ。誰もみな、他人がどのような人生を送るべきか、明確な考えを持っているのに、自分の人生については、何も考えを持っていないようだった。

P21

同調圧力が影響して無意識に価値観が似始める、ということを、私は中学生の頃に有川浩さんの『阪急電車』で学びました。
最後の一文が特に印象的です。確かに、他人の事にばかり理想を持つ人はいるように思われます。

「人は自分の運命を選ぶことができない、と言っているのだよ。そして最後に、誰もが世界最大のうそを信じている、と言っている」
「世界最大のうそって何ですか?」と、すっかり驚いて、少年は聞いた。
「それはこうじゃ、人は人生のある時点で、自分に起こってくることをコントロールできなくなり、宿命によって人生を支配されてしまうということだ。それが世界最大のうそじゃよ」

P24

自分でコントロールできることと、自分の外で動く物事があります。
しかし、自即他かつ他即自、であり、一即一切かつ一切かつ一です。

少年は人の「運命」がどういうものかわからなかった。
「おまえがいつもやりとげたいと思ってきたことだよ。誰でも若い時は自分の運命を知っているものなのだ。
まだ若い頃は、すべてがはっきりしていて、すべてが可能だ。夢を見ることも、自分の人生に起こってほしいすべてのことにあこがれることも、恐れない。ところが、時がたつうちに、不思議な力が、自分の運命を実現することは不可能だと、彼らに思い込ませ始めるのだ」

P28

「あの男も、子供の時は、旅をしたがっていた。しかし、まずパン屋の店を買い、お金をためることにした。そして年をとったら、アフリカに行って一ヶ月過ごすつもりだ。人は、自分の夢見ていることをいつでも実行できることに、あの男は気がついていないのだよ」
(中略)
「結局、人は自分の運命より、他人が羊飼いやパン屋をどう思うかという方が、もっと大切になってしまうのだ」

P29,30

少年は風の自由さをうらやましく思った。そして自分も同じ自由を手に入れることができるはずだと思った。自分をしばっているのは自分だけだった。羊たちも、商人の娘も、アンダルシアの平原もら彼の運命への道すじにあるステップにすぎなかった。

P35,36

これからおまえがやってゆくことは、たった一つしかない。それ以外はないということを忘れないように。そして前兆の語る言葉を忘れてはいけない。特に、運命に最後まで従うことを忘れずにな。

P38

幸運の秘密とは、世界のすべてのすばらしさを味わい、しかもスプーンの油のことを忘れないことだよ

P40

彼は自分のことをどろぼうに会ったあわれな犠牲者と考えるか、宝物を探し求める冒険者と考えるか、そのどちらかを選ばなくてはならないことに気がついた。

P51

おまえさんも羊とピラミッドのことを夢見ているね。でもおまえとわしは違うんだ。なぜなら、おまえさんは夢を実現しようと思っているからね。わしはただメッカのことを夢見ていたいだけなのだ。
(中略)
そしておまえが来る前よりも、わしはだんだんと不幸になってゆくような気がする。なぜなら、自分はもっとできるとわかっているのに、わしにはそれをやる気がないからだ

P65,66,69

僕はいつでも戻って羊飼いになることができる、と少年は思った。僕は羊の世話の仕方を知っているし、それを忘れることはない。しかし、エジプトのピラミッドに行くチャンスは二度とはないだろう。

P76,77

少年はまだ自分の決心を少し疑っていた。しかし、一つだけわかったことがあった。それは、決心するということは、単に始まりにすぎないということだった。

P81

彼はほとんどの時間、自分の持ってきた本を読みふけっていた。
少年も本を持っていた。そして旅の最初の二、三日間派それを読もうとした。しかし、キャラバンを観察したり、風の音を聞いているほうが、もっとずっとおもしろいとわかった。自分のらくだをもっとよく知るためにはどうすればいいか学び、らくだとの友情をきずくやいなや、彼は本を投げすててしまった。少年はそれまで、本を開けるたびに何か大切なことを学べるという迷信を持っていたがらここでは本は不必要な荷物だと決めたのだった。

P89

私たちは持っているもの、それが命であれ、所有物であれ、土地であれ、それを失うことを恐れています。しかし、自分の人生の物語と世界の歴史が、同じ者の手によって書かれていると知った時、そんな恐れは消えてしまうのです

P91

「人は誰でも、その人その人の学び方がある」と少年は独り言を言った。「彼のやり方は僕と同じではなく、僕のやり方は、彼のやり方と同じではない。でも僕たちは二人とも、自分の運命を探究しているのだ。だからそのことで僕は彼を尊敬している」

P99,100

彼が夢の実現に向けて近づけて近づくほど、ものごとがよけいに困難になってきていた。年老いた王様が「初心者の幸運」と呼んでいたものは、もはや働かなくなっているようだった。

P106

『大いなる作業』をやってみるのをさけていた第一の理由は、失敗を恐れていたことだった。僕は本当に十年も前に始められたことを、今やり始めたのだ。二十年間も待たなかっただけ、少なくとも僕は幸せだよ

P117

「僕は今、『大いなることば』を学んでいるのだ。世界中のすべてのものが僕にとって何らかの意味を持ち始めている……タカが飛んでいることでさえ」と彼は独り言を言った。そしてそんな気持ちでいる時、彼は自分が恋していることをありがたく思った。恋をしていると、ものごとはもっと意味を持ってくるものだ、と彼は思った。

P118

お前の心があるところに、お前の宝物が見つかる、ということを憶えておくがよい。

P137

おまえの心に耳を傾けるのだ。心はすべてを知っている。それは大いなる魂から来て、いつか、そこへ戻ってゆくものだからだ

P151

彼の心は、何が彼の一番強力な資質であるか、少年に話してくれた。それは、羊をあきらめて自分の運命を生きようとした勇気と、クリスタルの店で働いていた時の彼の熱心さだった。

P159

あまりにも多いので、途中から引用に徹しました。
名言のオンパレードです。
心の声に耳を傾けること。
最近はこれを意識できているように思います。しかし、自分には熱心さが足りないなぁと思いました。
しかし熱心さも、心の声に耳を傾けることで身についてくるものだと思います。本当に望んでいることには熱心に取り組むものだからです。

この本は『ずっとやりたかったことをやりなさい』のように、時代の波に埋もれてしまっている人々の背中を押してくれる作品だと思います。

おわりに

まだまだ理解が浅い部分もありますが、この本は何度も読み返して心に染み込ませたいと思いました。
ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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