読書感想文(97)兼好法師作、小川剛生訳注『徒然草』(角川ソフィア文庫)

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は久しぶりに古典を読みました。
何となくネタが豊富そうだなと思ってはいたのですが、通読したのは初めてでした。

先に書いておくと、めちゃめちゃ面白かったのでオススメです。
『七つの習慣』などビジネス書が好きな人は特に先見の明を感じられて楽しめるのではないかと思います。
「人間いつ死ぬかわからない」といった自己啓発的な内容もあります。
「掃除してたら懐かしいもの出てくるよね」みたいな現代でも共感できる「あるある話」もあります。

感想

めちゃめちゃ面白かったです(2回目)。
『徒然草』の諸本は主に4系統ありますが、どれも243段だそうです(本書の底本は烏丸本)。
その全てが面白かったというわけではありませんが、ヒット率はかなり高かったです。8割くらいでしょうか?
ちなみに『万葉集』のヒット率は体感5%ですがそれなりに楽しめたので、その16倍(?)『徒然草』は面白かったということです。

ではどんな話があったのかというと、多すぎるのて勿論全てを挙げることができません。
しかし色んな人に紹介したいなと思ったので、そのうちnoteで全章段について書こうかなと割と本気で思っています。

さて、せっかくなので短い話を一つ紹介します。

三十九段

 或人、法然上人に、「念仏の時、睡にをかされて、行を怠り侍る事、いかゞして、この障りを止め侍らん」と申しければ、「目の醒めたらんほど、念仏し給へ」と答へられたりける、いと尊かりけり。
 また、「往生は、一定と思へば一定、不定と思へば不定なり」と言はれけり。これも尊し。
 また、「疑ひながらも、念仏すれば、往生す」とも言はれけり。これもまた尊し。

現代語訳
 ある人が法然上人に、「念仏の時に睡魔に襲われて修行をおろそかにしてしまうのですが、どのようにしてこの過ちを止めることができるでしょうか」と申し上げると、「目が覚めている間に念仏をしなさい」と答えなさったのは、とても尊いことだった。
 また、「往生は、必ずできると思えば必ずできる、できるかわからないと思えばできるかわからない」とおっしゃった。これも尊い。
 また、「疑いながらでも念仏をすれば、往生できる」とおっしゃった。これもまた尊い。

一つ目の話は真っ先に授業を思い浮かべました。授業中どうしても眠くなってしまうのであれば、それ以外の時間に勉強するしかありません。目的は授業を受けることではなく何かしら学ぶことなので、そこを忘れないようにするのが大切だと思います。
二つ目の話は、信じれば報われるという話です。信じるだけで救われるのかと言われると反論したくなってしまいますが、これはそういうことではなく、目標設定に近い話だと思います。つまり、できると信じることは、どうすればできるようになるかという方向に思考が向くということです。先日読んだ東野圭吾『マスカレード・ホテル』でも「ホテルマンに無理は禁句」と言われていた通り、できると仮定してどのようにして実践するかという事ができるようになる近道だと思います。
三つ目の話は、これで良いのかと迷いながらでも、自分が向かいたい方に向かって行動をし続ければどんどん達成に近づいていくということだと思います。

このように、最近でもビジネス書で言われるようなエッセンスが詰まっています。
700年後にも為になる話を書いた兼好法師ですが、決して今の世の中を予見していたというわけではないと思います(AIなんて想像していなかったでしょう)。
つまりこれは、それほど抽象度が高い、或いは根本的な話だということだと思います。
昔の話を読み、抽象化して今の時代に置き換えて考えるというトレーニングができるのは古典を読むメリットの一つだと思います。
また、教訓めいたものばかりではなく、単純に「お酒を飲むことを強要する人はどうしても理解できない」みたいなことを書いている段もあります。
時々ギャグのセンスが江戸時代っぽいなと感じましたが、そこは中世文学だからといったところでしょうか。
とにかくめちゃめちゃ面白いので是非読んでみてください。

おわりに

久しぶりに古文を読んだので、結構時間がかかってしまいました。
古典は原文ではわからないことがよくあるので、そういう時は潔く現代語訳を確認するようにしています。知らなくてわからないものはいくら考えてもわからないので、それで良いのです。
中高生はよく古文がわからなくて嫌いになってしまっている印象がありましたが、そういう時は答えを見て納得できればおっけーではないかと思っています。

古文を読むのは当然ハードルが高いとは思いますが、『徒然草』は細かく章段が分かれていて読みやすいのでオススメです。
興味がある人は是非読んでみてください。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。

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