読書感想文(307)江國香織『きらきらひかる』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回はまた江國香織さんの作品です。
先日『思いわずらうことなく愉しく生きよ』を読み終えたちょうどその日にこの本をオススメされたので、読むことにしました。

感想

ストーリーはどう捉えれば良いのかわからないのですが、表現は相変わらずきれいでした。
アル中の妻は色んな物を投げたりするので動きは激しいはずなのに、流れている時間はどこか静かな感じがします。
外の世界から隔離されているような感じです。
その静けさが夫の寛容さと合っていて、大きく包み込むような印象を受けます。夜の海のような感じです。

さて、ストーリーについて、社会的弱者・マイノリティの人物を描いており、最近はこういう小説が増えたんじゃないかなぁと思いますが、この作品は二十年近く前に書かれているので、当時は斬新だったのかもしれません。
ただ、最近の小説は激動の空気感があるというか、ドーンと感動させにくる印象があります。一方でこの作品は先述のように、とても静かに心に響いてきます。
少数派の社会というのはこのように水面下で起こっているものなのではないでしょうか。夫婦の父母はマジョリティなのでかなりの衝撃を受けていますが、当事者にとっては、穏やかでなくとも着実に進んでいく日常なのだと思います。
ここ数年、この本を本屋さんで見かけることが増えた気がするのは、近年性的マイノリティーに対する関心が高まっているからかもしれません。

どうしていつもこうなのだろう。睦月はやさしい。そうしてそれはときどきとても苦しい。

P21

相手に対する自分の不甲斐なさ、申し訳無さ。これは一般に人々が感じることがあると思いますが、精神病や「マイノリティ」呼ばれる人達は、このように感じる機会がより多いのかもしれません。
ここでやさしいと言われる夫も、性的マイノリティであることを自分の欠陥であると思ってしまっているのです。
こういう卑下をしなくて済むような社会が目指すべき所なのかなと思います。

今回、一気に読み終えたので、あまりメモは取れていません。
なので引用はほとんどできないのですが、全体として空気感が透明で良かったなと思いました。
久々に『東京タワー』も読みたくなりましたが、他の作品を読みたい気持ちもあります。
特に直木賞を受賞した『号泣する準備はできていた』が気になっています。 

おわりに

今回、前回の感想文からかなり期間が空いてしまいました。
今月はほぼ一日一冊ペースで読んでいたので、ちょっと休憩しようと思ったからです。
今のペースだと今年は200冊以上読めそうですが、ちょっと他のこともやりたくなってきたので、今後はペースを落とそうかなと思っています。
無理のない範囲で続けていきたいです。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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