読書感想文(161)松尾芭蕉『おくのほそ道(全)』(ビギナーズ・クラシックス 日本の古典)

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は古典を原文で読みました。
といっても、ビギナーズ・クラシックスは原文の前に現代語訳がついているのですが……。

松尾芭蕉は以前読んだ『春宵十話』等の著者である岡潔が絶賛していたので、ずっと読もうと思っていました。
この本の解説によると、恐らく『おくのほそ道』以降の不易流行の精神が感じられるものを絶賛していたのだろうと思います。

感想

面白かった、というとちょっと違う気がします。うーん、正直そんなに面白いとは思いませんでした。
ただ、古人や名所の話がたくさん出てきたので、そういったことを知れたのは良かったです。百人一首に関わる話もいくつかありました。
中でも印象に残っているのは何度か登場した西行と義仲です。芭蕉は元々武士の家の生まれ(ただし、江戸幕府の新体制では武士になれない?)で、それゆえに武士に思いを馳せているのが印象的でした。

俳句で一番良いなと思ったのは、
世の人の見付けぬ花や軒の栗
という句です。
「花」というと人々は桜や梅といったメジャーな花に集まります。しかしそれ以外の花も、それぞれ咲いているのです。
以前、岡潔のエッセイで読んだことですが、「スミレはスミレとして咲く」という話が印象に残っています。世間で有名だとか人気だとか、そういうことに関係なく、ただ自分は自分としてそこにあり、自分の役割を全うするものだと思います。
ちなみに、栗は西の木と書くことから西方浄土の木とされるそうです。勉強になりました。

あとは松尾芭蕉忍者説です。
伊賀出身であること、旅は隠密行動のカモフラージュだったとも考え得ることからです。
実際どうなのかわかりませんが、歩くペースが早かったそうなので、本当なのかもしれませんね笑。

あとは有名な句である、
閑さや岩にしみ入る蝉の声
という句がアブラゼミかニイニイゼミかという論争があり、ニイニイゼミで落ち着いていたそうです。この話は元々聞いたことがありましたが、固有種名までは覚えていませんでした。

また、俳句の解説として面白かったのが、
五月雨をあつめて早し最上川
暑き日を海に入れたり最上川
の二つについてです。
これは推敲前はそれぞれ
五月雨をあつめて涼し最上川
涼しさや海に入れたり最上川
だったそうです。
ここからわかることは、まず最上川に対して涼しいという実感があったであろうことです。そして「涼し」を二つとも無くすことで、作句者の存在感を消すことができています。つまり、作者の心ではなく、最上川そのものを詠んだといえます。
この感覚は覚えておきたいなと思いました。

あと覚えておきたいのは、一番初めの句が、
行春や鳥啼魚の目は泪
であり、一番最後の句が、
蛤のふたみにわかれ行秋ぞ
であることです。
行く春で始まり、行く秋で終わるのはなんだかいいなぁと思います。

おわりに

思いついたことのメモのようなとりとめのないノートになってしまったなぁと思いましたが、よく考えたらいつも通りでした。
これから先もまた少しずつ俳句について学んでいきたいと思います。
今のところ、『野ざらし紀行』が気になっています。こちらは西への旅なので、知っている場所もありそうなので……。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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