読書感想文(381)中野香織『「イノベーター」で読むアパレル全史』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んで下さってありがとうございます。

今回は読書会をきっかけに読みました。私はファッションに全くと言っていいほど関心が無いのですが、だからこそ勉強になるかなと思って読むことにしました。

感想

とても面白かったです。
こんなこと言うとなんだか安っぽいですが、ちょっとファッションに興味を持ちました。
私は先述のとおりファッションに関心が無いので、普段はユニクロなどの無難なファッションで済ませていますが、それも無難に済ませるという一つのスタイルを享受しているのだなということを改めて感じました。
私の場合は服に限らず髪型などにもこだわりませんが、これはそれ以外のことに価値を見出せる人の方が仲良くなりたいからでもあります。
逆に言えば外見にしか関心がない人は好かれなくてよいということにもなるので、ちょっと選民思想っぽくて気持ちの悪い部分です。
普段はそこまで意識していませんが、マッチングアプリを利用している時などは、こういうフィルターをかけることがよくありました。使い勝手は場合によりけりですね。
あ、ちなみに私はユニクロを着ているだけでなく、ちゃんとした服をしなければならない時以外はよれよれの服を着ても気にならないほど外見に関心がありません。できるだけ一番上の服は普通にするようにはしていますが、シャツは割と破れていたりします。でも外から見えなければ気になりません。

さて、そんなファッションセンスが終わっている私ですが、様々なファッションの思想を知って、色々と感化されました。
一番印象に残っているのは、ありきたりですがシャネルです。
現在はハイブランドの一つですが、元々シャネルは上流階級への対抗意識を元に発展してきたようです。最近の服で近いのは、ポケットの多い女性服などでしょうか。シャネルはそれまで「女性らしく」一辺倒だったレディースファッションに機能性を導入しました。女性を窮屈なコルセットから解放したのはシャネルだそうです。
また、偽のラグジュアリーを使って「本物主義」に反抗したというのもかなり印象的でした。確かに、ファッションが視覚的な美しさを追求するものならば、見た目が同じであれば宝石が偽物でも何も問題がないはずです。しかし、なんとなく宝石が本物でないとパチモン感を感じてしまうのは、「本物」であることに価値を置いているからです。そして、宝石が本物であることにこだわるのは、やはり金持ちによる金持ちアピールの為ではないかと思われます。想像しやすいたとえで言うなら、お金を頑張って貯めてやっと欲しかったダイヤの指輪を買ったのに、見た目がほとんど変わらないパチモン
の指輪をつけている人がいたら、「でもあれは偽物だからね」と思ってしまうような感じでしょうか。つまり、そういう意味では本物にこだわることは非常に醜いことであるように思われます。もちろん、本物ならではの輝きに価値があるという見方もできますが、その輝きが偽物よりどのように美しいと言えるのかはなかなか難しい問題です。もっと言えば、視覚的美しさを理論的に説明できるとした時、本物より偽物の方が美しいとしても、本物に価値を置くことができるでしょうか。
これは先ほどのユニクロの話とも関わります。ひと昔前、ユニクロは量産型でダサいという風潮があったように思いますが、これもどちらかといえば安くて洗練された服に対する嫉妬が多かったのではないかと思います。もしこれが正しければ、いずれ宝石の価値も落ちていくのかもしれません。現代は科学がどんどん発展しているので、いずれ宝石並みに美しい何かが安く量産されることでしょう(既に一部あると思いますが)。それに対して、量的に希少だからという理由で宝石が権威を守れるか、疑問です。
でも、例えば市販のチョコレートがいくら美味しくなったとしても、私はクリオロ種のカカオを使ったチョコレートに価値を見出すような気がします。同様に、宝石にも本物を求める人はいるのだと思います。
この「本物」ということに対して、「オーセンティシティ」という言葉を最近新しく覚えました。これは、「本物」であることを、実物か否か、本物らしいか否か、の二軸で分け、四種類に分類する考え方です。
例えば、京都の四条烏丸交差点は千年の都その場所ですが、千年の都らしさがどこにもありません。これは実物ですが、本物らしさはありません。一方、映画村は実物ではありませんが、昔らしさはこの上なくあります。先ほどの宝石の例で言えば、例えばプラスチックで宝石を模したものは実物で無い上に本物らしさもないでしょう。このように、本物であることと本物を感じることは別物です。近年は資本主義の影響で「安く買って高く売る」が蔓延しているため、本物でないものを本物らしく仕立てて売ることが流行っているように思われます。ああ、アフタヌーンティーも良い例ですね。テキトーなケーキを三段の皿に盛りつけるだけで値段を跳ね上げられます。美味しかったら文句はないのですが、見た目ばかりに凝って味がないがしろになっているところも多いです。有名なお店でも、これなら普通にケーキと紅茶を頼んだ方が良かったなあと思った経験が何度もあります。
何の話だっけ、そうそう、本物とパチモンの話。
んー、本物至上主義に対抗する路線で話をするつもりだったのに、スイーツの話をするうちにやっぱり偽物は嫌だなあという話になってしまいました。
ついでにさらに脱線するなら、舌が肥えることは幸福か、という話にもなりますね。パチモンを高級品だと思って楽しめる人と、本物とパチモンの見分けがつくから高級品でないと楽しめない人。どちらがしあわせなのでしょうか。私はそれでも見分けがつくようになりたいと思うのですが、世間的にはどうでしょうか。ちなみにこれは知識に置き換えても成り立つ話で、井の中の蛙でいれば幸せなのに、色んなことを知れば知るほどどうしようもない世の中に嫌気が差してしまいますね。特に最近はインターネットのせいで知りたくもない事実(のような作られた虚像)を知ってしまう機会が多く、心の準備ができていない子供は大変傷ついているような気がします。
ああ、今日はダメな日、脱線する日だ。
結局のところ、高価なものでも安価な品でもおいしいチョコレートは最高だ、ということですね。わたしとゴディバとそれから明治、みんなちがってみんなチョコ。

最後にまた完全なる余談ですが、いずれ女性が化粧から解放されたらいいなあと思います。既に周りを気にしていない人も、好きでやっている人もいると思いますが、まだまだ自由意志が尊重されていない文化だと思います。まあ、私は当事者ではないので正直それほど深刻に考えていませんが、逆行して当事者となる未来が来ないことを祈るばかりです。

全然最後じゃありませんでした、ほかにも気になったことを記録がてら書いておきます。
まず、御木本幸吉。真珠の養殖に世界で初めて成功した人です。これにより真珠業界は大混乱。化学的には本物ですが、天然の真珠を取っている人たちからすれば偽物です。これも、魚介類で考えれば現代でも同じですね。。天然の鯛と言われたらなんだか養殖よりおいしそうな気がします。天然か養殖かは味の本質じゃないはずなのに。むしろ、エサを管理された養殖の方がおいしく育てられそうだけど、どうなんだろう。
次に、ドルガバ。例の歌で知名度がさらに上がった気がしますが、どうもジェンダーレスの方向性に反対して、性別特有の素材を生かすデザインや、各国固有の文化を大切にしたデザインをしているそうです。ジェンダーレスの良し悪しは様々な点から議論できるので一概に言えませんが、違うものを違うと認めたうえで大切にするという姿勢には賛同します。

あー、早く書き終わりたい、と思いながら、続きを書いていきます。

ファッションデザインの面白さは芸術的側面は勿論のこと、それが人を表現する点にある?
ある思想を基にして、それを表現するファッション、表現される人
一方で、この場合における自己表現とは小我であるようにも思われる、これをどう捉えるか、自分の考えを整理してみたい

というメモを書いていました。
そうなんですよね、ファッションって結局のところ物質的な自分を飾ることに留まってしまうので、あまり価値を感じないのです。
でも、逆に考えれば、自分が着飾って美しくなることが、他人を美しく着飾ることとイコールになって、世の中に美という幸福の要素を増やすことにつながるでしょうか。最近読んだ文章で、美を見ることは美味しいものを食べた時と同じ脳の報酬系が働くということを知りました。つまり、美を見ることはごほうびであるので、なるべくそれに近づけるべきでしょうか。
この場合における美とは、対称性や黄金比といった本能に反応する美なのですが、一方で本能というものにどう向き合うべきかということも長年の疑問です。つまり、本能的に美しいと感じられるファッションがあったとして、それを受け入れて自分が着たいのかどうか、ということです。あえて本能に逆らって自ら生み出した美意識に従って、多くの人に美しくないと思われる服に身を纏う方がむしろ自分には向いているのではないか、と。
なんだか中学生みたいな思考になってきましたが、しばらくは多分今まで通り何も考えずユニクロを着ると思います。
でも、いつか理念に共感したブランドの服を身につけるのも、いいかもしれないな、と思いました。

おわりに

やっと終わりました。長かった。
他にも色々考えたのですが、あまりにもファッションに関係ないのでかっとしました。
強いて最後に付け加えるなら、やっぱ資本主義のせいで色んなサイクルが加速して良くない方向に進んでいるなあということです。
資本主義の全てを否定しませんが、少なくとも今の資本主義はせめて一回スピードを落としてほしいと思います。

あ、あとシャネル他数人の伝記などを読みたいと思いました。

ということで、いつも以上に訳の分からない内容になってしまいましたが、最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。


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