読書感想文(114)村上春樹『ノルウェイの森(上)』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は世界的にも有名な村上春樹の作品です。
いつか読んでみたいなぁと思いつつ、なかなか機会がありませんでした。
最近久々に好きな作家は村上春樹だという人に会ったので、ずっと積読になっていた『ノルウェイの森』を手に取りました。
村上春樹の作品は教科書か何かで「鏡」だけ読んだことがあるのですが、内容は正直ほとんど覚えていません。

感想

今回は上巻なので全体の半分ですが、面白かったです。
噂通りの独特の文体ですが、読んでいて心地良いです。不思議な感じがします。
気がついた独特の言い回しは、「〜ではないし」や「〜であるし」などです。
あとはなんとなく否定文の言い回しが多いように感じたのと、台詞の言い回しも独特だなと思いました。

「かまわないよ。なんだか余計なこと訊いちゃったみたいだな」
「ううん、そんなことないのよ。私が今すこし疲れてるだけ。雨にうたれた猿のように疲れているの」

P124

比喩というのは強力な表現方法ですが、台詞の中にさらっと出てきたので「こんな言い回し咄嗟に出てくる??」って思いました笑。
もしかしたら演劇で元ネタがあるのかもしれませんが……。

「日が暮れる、女の子が町に出てきてそのへんをうろうろして酒を飲んだりしている。彼女たちは何かを求めていて、俺はその何かを彼女たちに与えることができるんだ。それは本当に簡単なことなんだよ。水道の蛇口をひねって水を飲むのと同じくらい簡単なことなんだ。そんなのアッという間に落とせるし、向うだってそれを待ってるのさ。それが可能性というものだよ。そういう可能性が目の前に転がっていて、それをみさみすやりすごせるか?自分に能力があって、その能力を発揮できる場があって、お前は黙って通りすぎるかい?」

P65

私はプレイボーイではないですが、言わんとするところは共感します。
ただ、この時に考慮するべきことは、その行為によって他の所でマイナスが生じないか、ということです。
今回の場合、この台詞を言う人は恋人がいます。一般的には恋人がいる人が他の相手と寝るのは良くないことだとされていると思います。
ここで、バレなければ皆ハッピーと考えるか、バレなくとも裏切っているからダメだと考えるかは人によると思います。
私も明確に正答はわからないのですが、今の所後者を採用しています。

 でもこういう考え方ってあまりまともじゃないかもしれませんね。どうしてかというと、私くらいの年の女の子は『公正』なんていう言葉はまず使わないからです。普通の若い女の子にとっては、物事が公正かどうかなんていうのは根本的にどうでもいいことだからです。ごく普通の女の子は何かが公正かどうかよりは何が美しいかとかどうすれば自分が幸せになれるかとか、そういうことを中心に物を考えるものです。『公正』なんていうのはどう考えても男の人の使う言葉ですね。

P177

この部分は読む人によって色々と引っかかる所があると思います。
まず「普通」とは何なのか。しかもその「普通」の女の子は『公正』という言葉を使わない。
そんなわけがありません。もしかするとこれが書かれた当時はまだそのような男女の価値観があったのかもしれませんが、少なくとも今はそれが「普通」ではないでしょう。「普通」というのはそのようなものだから、皆が普通とも言えるし、皆が普通でないとも言えるのではないでしょうか。
「普通」から少し脱線すると、主人公のワタナベ君と直子の関係も私には普通ではない普通のように思えました。
上巻のラストの辺りからも奇妙だなと思います。
そして彼らはそれが「普通」でないとしながらも、お互いに受け入れ合っています。これってとても素敵ではありませんか?
「普通」でなくても「普通」に受け入れ合えるような関係っていいなぁと思いました。

でも彼の場合は自分の中の歪みを全部系統だてて理論化しちゃったんだ。

P227

これは自分も目指していることだなと思いました。私は「彼」のように頭が良くないので理論化できてはいないのですが、言語化であれ感覚的であれ、自分自身を理解したいと思っています。
そういう点では、私も彼に憧れる「普通」の人なのかもしれません。

おわりに

そういえばストーリーについてはあまり触れませんでしたが、まだこれからどうなっていくのだろうか、といったところなので下巻に譲ろうと思います。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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