読書感想文(353)早見和真『ひゃくはち』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は野球小説です。
多分中学生の頃に一度読んだきりなので、10年以上ぶりの再読です。
唯一覚えていたのは主人公の「さっちゃんか。いい名前だね。親に感謝だね」という口説き文句です。

感想

この本は初めて読んだ中学生の頃、正直あまりピンと来ませんでした。
というのも、甲子園を目指す高校球児達が酒やタバコや女遊びばかりしていることに違和感があったからかもしれません。
とにかく、一度も読み返すことがありませんでした。
しかし、たまたま本棚で目に止まり読むことにしました。
こういう時、紙の本を買って家に置いておいてよかったなと思います。

さて、肝心の内容ですが、面白かった、けど、もう少し続きを書いてほしかった、というのが本音です。
この作品は25歳(現在)と高校時代の二つの時間軸が交互に描かれますが、この現在パートをもっと詳しく書いてほしかったなと思います。
ただ、解説にて、元々1000枚あった原稿を600枚に圧縮したそうなので、その時に抜け落ちてしまった部分も多いのかもしれません。でも、そこを書いてほしかったです。
例えば、主人公は留年を繰り返してまで大手新聞社に入社した、とあるのですが、なぜそこまで新聞社にこだわったのか、なども描かれません。私の知見及び読解力不足かもしれませんが、全ての情報が繋がりきっていない感じがしました。

この作品のいいなと思った所は、主人公がベンチ入りギリギリの選手であることです。正直、推薦でなく一般入試で入学した選手が強豪校でベンチ入りするなんて現代ではあまり考えられないように思いますが、しかしタッチやメジャーのように主人公が第一線で活躍するのとは違う視点から描かれているのはいいなと思いました。
そして、同じく一般入試組のノブの存在も、いいなと思います。

「ひゃくはち」というタイトルは煩悩の数であると共に、野球ボールの縫い目の数でもあります。
酒タバコ女遊びに夢中な主人公たちにピッタリです。しかし、野球に対してはとても真面目です。きれいな面だけじゃないのもリアルでいいなと思います(現代ではかなりリアルでなくなってきていると思いますが)。
そしてその野球に対する思いの違いからの決別。
現代パートで再会した所も、この辺りをもう少し掘り下げてほしかったのが本音ですが、良かったです。

一番良かったなと思うのは、野風僧を歌うところです。
普段あれだけ愚痴られている監督なのに、なんだかんだで絆がきちんと結ばれていることがわかって、泣きたくなるような、笑いたくなるような……。
だからこそ、その後の決別が一層際立つのだとも思います。

おわりに

かなりまとまりのない文章になってしまいましたが、こういう日もあります。
最後まで読んでくださってありがとうございました。


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