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プロレス英語読解教室:デスティーノ前編

こんにちは。札幌で英語講師をしているアラといいます。

今日は英語版ウィキペディアの英文の読解をしてみたいと思います。

お題は僕の好きなプロレスから。先日の英検1級の二次試験でもずっとプロレスの話をして無事合格できました。プロレスを見れば英検なんて怖くない! 英文法に卍字固め! 長文読解に延髄斬り!

それに、外国語の能力は使わないと垂直落下式に落ちていくものです。毎日ちょっとずつでもその力を使うことが大切です。

で、今回は、今の新日本プロレスの主役と言っていいでしょう、内藤哲也選手についての英文を取り上げようと思います。①、②、③は僕がつけた印です。

①While the rest of NJPW workers returned to Japan, ②Naito remained in North America, returning to Mexico and CMLL for a tour, ③during which he continued teaming with La Sombra as part of his Los Ingobernables stable.
Tetsuya Naito(Wikipedia)

内藤選手がまさに制御不能のカリスマになんなんとする姿が目に浮かぶような文ですね。

注目すべき文法事項は、分詞構文と、前置詞+関係代名詞です。どちらも大変よく出てきます。なんとなく読むのではもったいない、パズル的な楽しさのある表現ですが、パズルの方は今回は扱わず、日本語を母語とする僕らが「どう読めば意味がわかるのか」という点に焦点を絞ろうと思います。

では①の部分から。

While the rest of NJPW workers returned to Japan,

まず接続詞whileですね。接続詞はSV(主語と動詞)が後続しますから、覚えるときはwhile SV=「SがVする一方で、SがVする間」と覚えましょう。「SがVする」を省いていると、受験を含め英語の試験で痛い目みます。一瞬の隙をつかれてサムソンクラッチで負けてしまうような試合になってしまうでしょう。

(ちなみに、「SがVする」のVには当然be動詞も入ります。その場合、「Sが〜である」という訳になります。)

そして、the rest ofです。いちいち考えて読む表現ではありません。the rest of Aで「Aの残りすべて」です。「すべて」がポイントです。この「すべて」の意味はtheが担っています。another, others, the otherのtheです。

ということで、「新日本プロレスの職員の(残り)全員が日本に戻った一方で」という訳になりますね。workersを職員としましたが、他のレスラーもいたのでしょうね。NJPWはNew Japan Pro-Wrestlingの頭文字です。「残り」は日本語にすると不自然な感じがしたのでカッコにいれました。まだまだ小手調べ。ロックアップから腕の取り合いといったところです。

②に進みます。

Naito remained in North America, returning to Mexico and CMLL for a tour,

まずは、「内藤選手は北米に残った」ですね。remainを「残す」と覚えないように注意しましょう。「残す」は他動詞です。他動詞とは、主語が何か別のものに影響を与えているように感じられる動詞です。remainは自動詞なので、「(主語が)残る」と覚えましょう。自動詞は動作が直接何かに影響を与えていないように感じられる動詞です。といっても、自動詞、他動詞の区別は理屈ではない部分も多いです。何せ大昔に決まったことですから。

進みます。カンマがあって、returningが現れました。動詞returnにingがついています。なので動名詞なのか分詞なのか判断しなくてはいけません。改めて当該部分を載せましょう。

Naito remained in North America, returning to Mexico and CMLL for a tour,

直前のNaito remainedがSVですから、もう一度SVと続けるためには接続詞が必要です。その接続詞がないということはこのreturningがS(主語=名詞)ではないということです。動名詞は動詞が名詞の役割を果たすことですから、このreturningは動名詞ではない、と判断できます。

また、分詞の形容詞用法でもありません。形容詞は名詞を修飾しますが、returningが形容詞として用いられているなら、その後ろに名詞が続くことになります。でも今回は前置詞toが続いていますから形容詞用法ではないと言えます。

ということでこのreturningは分詞の副詞としての用法、つまり分詞構文がはじまったんだ、と判断できるのです。分詞構文の訳し方は「〜し、〜して」にしてしまいましょう。細かい理屈は後回し、今は意味を先行させます。今回のreturn「戻る」を当てはめると「戻り、戻って」となりますね。

で、内藤選手がどこに戻ったのかが前置詞to以下で説明されています(to Mexico and CMLL for a tour)。メキシコ、そして世界最古のプロレス団体CMLLに戻ったわけです。ツアー、つまり巡業のために。

では②をまとめましょう。

Naito remained in North America, returning to Mexico and CMLL for a tour,

「内藤選手は北米に残った、巡業のためにメキシコとCMLLに戻り。」

となります。この段階で、英文の意味は概ね問題のない正確さで理解できると思います。このような読解を続けていくことで精度とスピードが両立していきます。まずは意味の精度を優先させましょう。「なんとなく読み」をいくら続けても精度は上がりません。

さて、日本語としてもう少し整えると、

「内藤選手は、巡業のためにメキシコとCMLLに戻り、北米に残った。」

となるでしょう。ここまで整えると、大学受験の和訳問題の答えとしてもちゃんと点がつくと思います。ただ、読むだけでいい場合、ここまで訳を整えてしまうと時間がかかってしまいますね。時間がかかると読む量が減るので、訳を作らなきゃいけないのか、読んで内容を把握しなきゃいけないのかをしっかり分けていきましょう。

長くなってしまったので③の部分は次回に解説します。ここまでの訳を改めてまとめましょう。

While the rest of NJPW workers returned to Japan, Naito remained in North America, returning to Mexico and CMLL for a tour,

「新日本プロレスの職員の(残り)全員が日本に戻った一方で、内藤選手は、巡業のためにメキシコとCMLLに戻り、北米に残った。」

となりました。

次回の「プロレス英文読解教室」はこの続き、デスティーノ後編です。トランキーロ!

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