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論文まとめ163回目 SCIENCE(科学) 2023/11/16~
科学・社会論文を雑多/大量に調査する為、定期的に、さっくり表面がわかる形で網羅的に配信します。今回もマニアックなSCIENCEです。
さらっと眺めると、事業・研究のヒントにつながるかも。
世界の先端はこんな研究してるのかと認識するだけでも、
ついつい狭くなる視野を広げてくれます。
一口コメント
Nickel-catalyzed ester carbonylation promoted by imidazole-derived carbenes and salts
イミダゾール由来のカルベンと塩によって促進されるニッケル触媒エステルカルボニル化反応
「通常、貴重な金属を使う化学反応を、より豊富に存在するニッケルで効率良く行う新しい方法を開発。」
Autoregulatory control of mitochondrial glutathione homeostasis
ミトコンドリア内のグルタチオン恒常性の自己調節制御
「ミトコンドリアにおける重要な抗酸化物質グルタチオンのバランスを制御する独自のメカニズムを解明。」
A strong quick-release biointerface in mussels mediated by serotonergic cilia-based adhesion
ムラサキイガイにおけるセロトニンを介した繊毛に基づく迅速な解放機能を持つ強固な生物学的界面
「ムラサキイガイは、危険を感じると瞬時に固定部位を離れることができる、驚異的な生物学的接着メカニズムを持っている。」
Surface climate signals transmitted rapidly to deep North Atlantic throughout last millennium
過去1000年間にわたり、地表の気候信号が迅速に北大西洋の深海へ伝達される
「地球温暖化の影響が海面だけでなく、深海にも速やかに伝わっていることが示された。」
An all-metal fullerene: [K@Au12Sb20]5−
全金属フラーレン:[K@Au12Sb20]5−
「サッカーボールのような形をした、金とアンチモンで構成される全金属フラーレン分子が発見された。」
Plant cell wall patterning and expansion mediated by protein-peptide-polysaccharide interaction
植物細胞壁のパターン形成と拡大はタンパク質・ペプチド・多糖類の相互作用によって調節される
「植物の細胞壁の成長と構造は、特定のタンパク質と多糖類の複雑な相互作用によってコントロールされています。」
要約
ニッケルを用いた革新的なエステル合成法の開発
https://www.science.org/doi/full/10.1126/science.ade3179
![](https://assets.st-note.com/img/1700311327716-FblXXhwZWq.png?width=800)
ニッケルを触媒として用いることで、メタノールから酢酸や関連するエステルカルボニル化反応を効率良く行う新たな方法を開発した。
事前情報
従来、この種の化学反応は貴金属であるロジウムやイリジウムを用いて行われていた。
行ったこと
ニッケルとイミダゾール由来のカルベンまたは対応する塩を組み合わせて、新しい触媒系を開発した。
検証方法
エステルカルボニル化反応において、ニッケル触媒の性能を評価し、従来のロジウムベースのシステムと比較した。
分かったこと
ニッケル触媒は高い反応速度(時速150回以上)と高い反応数(1600回以上)を達成し、従来の三フェニルホスフィンベースのニッケル触媒よりも優れていることが判明。
この研究の面白く独創的なところ
ニッケルと新しいリガンドを用いることで、より安価で豊富な資源を利用し、効率的な化学反応を実現した点。
この研究のアプリケーション
この技術は、酢酸や酢酸無水物などの重要な化学製品の生産に応用可能で、産業界に大きな影響を与える可能性がある。
ミトコンドリア内のグルタチオン濃度を自己調節する新たな機構の発見
https://www.science.org/doi/full/10.1126/science.adf4154
![](https://assets.st-note.com/img/1700311482058-fZfirwNDvi.png?width=800)
ミトコンドリアにおけるグルタチオンの量を調節する自己制御メカニズムを明らかにし、それがミトコンドリアのアイアン・スルファークラスターに関連していることを発見。
事前情報
ミトコンドリアでの代謝物質の恒常性の維持方法は、これまで十分に理解されていなかった。
行ったこと
グルタチオンの濃度を制御するミトコンドリアのメカニズムを研究。
検証方法
グルタチオンのミトコンドリアへの輸送を担うSLC25A39というタンパク質の機能と役割を分析。
分かったこと
ミトコンドリア内のグルタチオンが少なくなると、SLC25A39の量が増加し、それがグルタチオンの濃度を自動的に調節する。
この研究の面白く独創的なところ
ミトコンドリアの鉄と硫黄のホメオスタシスがグルタチオンの輸入に関連しており、これらが相互に影響し合っていることを発見した点。
この研究のアプリケーション
このメカニズムの理解は、細胞の酸化ストレス耐性や鉄代謝疾患の治療法開発に役立つ可能性がある。
ムラサキイガイが環境の変化に応じて迅速に取り外し可能な強固な生物学的界面を持つ
https://www.science.org/doi/full/10.1126/science.adi7401
![](https://assets.st-note.com/img/1700311624100-WBR2LoBF9e.png?width=800)
ムラサキイガイは、セロトニンとドーパミンの影響を受ける繊毛の動きによって、強固に固定された状態から迅速に離脱することが可能。
事前情報
生体組織と非生体表面間の強固な接合はよく研究されているが、迅速な分離メカニズムはあまり理解されていなかった。
行ったこと
ムラサキイガイの足部とビサス茎の間の生物学的接合・分離過程を高度なイメージングと分光法で研究。
検証方法
組織学、共焦点ラマンマッピング、位相コントラスト強化マイクロCT、電子顕微鏡などを使用してビサス界面の構造と組成を分析。
分かったこと
ムラサキイガイは、繊毛の集合的な動きによって接着強度を調節し、環境ストレスに反応してビサスを解放して移動する能力を持つ。
この研究の面白く独創的なところ
神経化学物質によって制御される繊毛の運動が、生体と非生体の間の物理的相互作用に重要な役割を果たしている点。
この研究のアプリケーション
このメカニズムの理解は、生体材料や医療応用における迅速な接着・離脱技術の開発に貢献する可能性がある。
地球温暖化による熱が海洋に蓄積され、表層から深海へ迅速に伝達される現象の長期的な研究
https://www.science.org/doi/full/10.1126/science.adf1646
![](https://assets.st-note.com/img/1700311884676-TfigNR8IN6.png?width=800)
大西洋の深層堆積物の研究から、表層の温度変化が大西洋のメリディオナル循環によって深海に迅速に伝達されることが示された。
事前情報
人間の活動による気候変動が地球に蓄積される過剰な熱が海洋に吸収され、大気温度の上昇を緩和している。
行ったこと
過去1200年間の北大西洋の深層海洋堆積物からのデータを分析し、海洋循環の変化を追跡した。
検証方法
堆積物からの高解像度記録を使用し、表層と深海の温暖化・淡水化を追跡した。
分かったこと
中世温暖期から小氷期への遷移期に、深海の温度が約0.5度セルシウス下がり、海洋循環が表層の変動を迅速に深海に伝えていた。
この研究の面白く独創的なところ
人類の影響が始まる前から、大西洋のメリディオナル循環が地球表面温度を調節する役割を果たしていたこと。
この研究のアプリケーション
この研究は、気候変動の過去のパターンを理解し、現在および将来の気候予測に役立てることができる。
金とアンチモンからなる全金属のフラーレン構造を持つ新しい化合物が合成
https://www.science.org/doi/full/10.1126/science.adj6491
![](https://assets.st-note.com/img/1700349920608-x6XBSNDFJF.png?width=800)
本研究では、12個の金原子と20個のアンチモン原子で構成されたフラーレン構造の化合物が合成され、その構造と特性が明らかにされた。
事前情報
C60フラーレン分子はその特異なほぼ球状の構造で注目を集めていたが、非炭素要素で構成される全金属の対応物は希少であった。
行ったこと
湿式化学法を用いて、金とアンチモンからなる全金属フラーレンクラスター、[K@Au12Sb20]5−を合成した。
検証方法
単結晶X線回折によりクラスターの構造を決定し、理論計算でその特性を分析した。
分かったこと
このクラスターは20個のアンチモン原子で構成されたフラーレンフレームワークを持ち、芳香族性を示す。
この研究の面白く独創的なところ
従来不安定であった全金属フラーレンの安定な合成が実現し、新たな構造と特性が明らかになったこと。
この研究のアプリケーション
この化合物の合成と特性解析は、新しい材料の開発やナノテクノロジー分野への応用が期待される。
植物細胞壁のパターン形成と拡大は、タンパク質・ペプチド・多糖類の相互作用によって調節される
https://www.science.org/doi/full/10.1126/science.adi4720
![](https://assets.st-note.com/img/1700350228369-9EfMoXZtop.png?width=800)
この研究では、成長する花粉管の細胞壁の整合性を監視するために必要なタンパク質RALF4とLRX8が、ペクチン多糖類と複合体を形成し、細胞壁のパターン形成に関与することが明らかにされました。
事前情報 植物細胞は、内部の細胞圧に耐えつつ、細胞が拡大するにつれて適応し再構成される多糖類細胞壁に囲まれています。
行ったこと
研究チームは、シンクロトロンイメージングを用いて、このタンパク質複合体の構造と機能を詳細に解析しました。
検証方法
植物の細胞壁の主要成分であるペクチン多糖類との相互作用を調べ、これらのタンパク質が細胞壁の構造と信号伝達の両方の役割を果たすことを確認しました。
分かったこと
RALF4とLRX8が形成する複合体は、細胞壁の多糖類を格子状のネットワークにパターン化し、細胞壁の完全性と拡大に不可欠であることがわかりました。
この研究の面白く独創的なところ
細胞外構造の物理的状態の変化に反応するシグナルタンパク質の役割を理解する上での重要な貢献です。
この研究のアプリケーション
植物生物学、細胞生物学、農業科学など、幅広い分野での植物細胞壁の研究と応用に寄与します。
最後に
本まとめは、フリーで公開されている範囲の情報のみで作成しております。また、理解が不十分な為、内容に不備がある場合もあります。その際は、リンクより本文をご確認することをお勧めいたします。