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論文まとめ151回目 Nature 2023/11/8~

科学・社会論文を雑多/大量に調査する為、定期的に、さっくり表面がわかる形で網羅的に配信します。今回もマニアックなNatureです。

さらっと眺めると、事業・研究のヒントにつながるかも。
世界の先端はこんな研究してるのかと認識するだけでも、
ついつい狭くなる視野を広げてくれます。


一口コメント

Phosphorus-bearing molecules PO and PN at the edge of the Galaxy
銀河系の端に存在するリンを含む分子 PO と PN
「銀河の遠く離れた場所でさえ、生命の起源に重要な要素が存在することを発見した、まるで宇宙探検のような興奮をもたらす研究!」

Tuning sterol extraction kinetics yields a renal-sparing polyene antifungal
ステロール抽出の動態調整による腎臓に優しいポリエン系抗真菌薬の開発
「ある日常的な抗真菌薬を改良して、腎臓にダメージを与えずに効果的に真菌を殺す新薬を作った、まるで薬のレシピを調整する料理人のような研究!」

Neural landscape diffusion resolves conflicts between needs across time
時間を越えたニーズ間の衝突を解決する神経風景の拡散
「ネズミの行動を観察して、人間の脳も同様に異なるニーズ(例えば、飢えと渇き)の間でどのように選択を行うかの仕組みを明らかにした研究!」

Targeting of intracellular oncoproteins with peptide-centric CARs
ペプチド中心のCARによる細胞内癌蛋白質の標的化
「神経芽腫のような変異が少ないがんにも効く、新しいタイプの免疫療法を開発した!がん細胞内のタンパク質から選び出したペプチドを狙い撃ちする方法だ。」

m1A in CAG repeat RNA binds to TDP-43 and induces neurodegeneration
CAGリピートRNAのm1AがTDP-43に結合し、神経変性を誘導
「神経疾患の一因となるRNAの特定のメチル化がTDP-43タンパク質を異常に集め、神経細胞の死を招く新たなメカニズムを発見!」

Three-dimensional flat bands in pyrochlore metal CaNi2
パイロクロア金属CaNi2における三次元フラットバンド
「通常は運動エネルギーを持つ電子が、特定の金属内で動かなくなる現象(フラットバンド)を、三次元で実現!これが新たな量子物質の開発に道を開くかもしれない。」


要約

銀河系の外縁で見つかった、生命と惑星形成に不可欠なリン酸塩

このイラストは、銀河の果てでリンを含む分子POとPNが発見されたことを象徴しており、天の川銀河の外縁にある遠く輝く星雲が鮮やかに描かれている。これは、生命と惑星形成に不可欠なこれらの分子が、銀河系の離れた場所にも存在することを視覚化している。

この研究は、銀河系の外縁部にある星雲 WB89-621 で、リンを含む分子 PO と PN の存在を確認し、これまでの理解を大きく覆すものである。

事前情報
以前は、リンは銀河系内部のみで見つかっていたが、その生成と分布のメカニズムは不明確だった。

行ったこと
WB89-621 星雲でリンを含む分子 PO と PN をミリ波スペクトルで検出した。

検証方法
アリゾナ天文台とヨーロッパ南天文台の望遠鏡を使用し、ミリ波長での観測を行った。

分かったこと
銀河系の外縁にもリンを含む分子が存在し、これはおそらく中低質量の漸近巨星分枝星によって生成されていることが示唆された。

この研究の面白く独創的なところ
銀河系の外縁部におけるリンの存在は、これまでの理解と異なり、生命の起源や惑星形成に関する新しい洞察をもたらす。

この研究のアプリケーション
この発見は、天文学、宇宙化学、さらには生命の起源に関する研究に新たな道を開く可能性がある。


新しい抗真菌薬の開発で、副作用を大幅に減らすことに成功

これは新しいポリエン系抗真菌薬AM-2-19の開発を表すイラストである。腎臓細胞を温存しながら真菌細胞に対して選択的に作用することを強調しながら、この薬剤のメカニズムを概念的に描いている。

この研究は、腎臓に害を及ぼす副作用がある従来の抗真菌薬アムホテリシンBを改良し、腎臓に優しい新しいポリエン系抗真菌薬 AM-2-19 を開発した。

事前情報
アムホテリシンBは真菌の細胞膜からエルゴステロールを抽出することで作用するが、腎臓への毒性が高い問題があった。

行ったこと
アムホテリシンBの構造を変更し、エルゴステロールの抽出を加速し、同時にコレステロールへの結合を避けることで、腎臓への毒性を減少させた。

検証方法
マウスと人間の腎臓細胞を使用し、新薬 AM-2-19 の有効性と腎臓への影響を評価した。

分かったこと
新薬 AM-2-19 は、多くの病原性真菌株に対して効果的で、耐性も発生しにくく、腎臓への害が少ないことが確認された。

この研究の面白く独創的なところ
従来の抗真菌薬の構造を改良し、その作用機序を精密に調整することで、効果は保ちながら副作用を減少させるアプローチを実現した点。

この研究のアプリケーション
この発見は、抗真菌薬だけでなく、他の抗微生物薬の副作用を減らすための新しい戦略を提供し、感染症治療の分野に大きな影響を与える可能性がある。


脳が異なる欲求の間の衝突をどのように解決するかを解明

この研究は、ネズミが飢餓と渇望の衝突を経験している状況を観察することで、脳が異なるニーズ間の衝突をどのように解決するかを明らかにしました。ネズミの行動を観察し、それらが脳内でどのように処理されるかを高密度の電気生理学的記録を通じて調べた結果、脳がエネルギー風景が移動する中でニーズに依存する状態の持続性と雑音による行動目標のシフトという現象を利用して、ニーズ間の衝突を解決していることがわかりました。これは、飢餓や渇望といった異なるニーズがどのように脳によって調整され、行動に反映されるかを数学モデルとして捉えたもので、神経科学、心理学、行動科学の分野に新たな洞察を提供する研究です。

この研究は、飢餓と渇望の衝突を経験しているネズミを観察し、脳がこのような異なるニーズ間の衝突をどのように解決するかを明らかにした。

事前情報
動物は基本的な生理的ニーズを満たすために柔軟な目標指向の行動をとるが、対立するニーズの下での行動選択についてはよく分かっていなかった。

行ったこと
飢えと渇きを感じているネズミに食物と水の自由な選択を与え、その行動を観察した。

検証方法
高密度の電気生理学的記録を用いて、ネズミの脳内での単一ニューロンとニューロン集団の相関を調べた。

分かったこと
ネズミの脳は、エネルギー風景が移動する中で、ニーズに依存する状態の持続性と雑音による行動目標のシフトという現象を利用して、ニーズ間の衝突を解決していることがわかった。

この研究の面白く独創的なところ
飢餓や渇望といった異なるニーズがどのように脳によって調整され、行動に反映されるかを数学モデルとして捉え、これまでの理解を一新した点。

この研究のアプリケーション
この研究は、ニーズに基づく行動決定の仕組みを理解することにより、神経科学、心理学、行動科学の分野に新たな洞察を提供する。


がん細胞の非変異性タンパク質を標的とする新しい免疫療法の開発

https://www.nature.com/articles/s41586-023-06719-x

上記のイラストは、がん細胞内の非変異性腫瘍タンパク質を標的とする新しい免疫療法のコンセプトを表現しています。このシーンでは、微視的な視点からがん細胞が先進的なCAR-T細胞によって標的化されている様子が描かれています。これらのCAR-T細胞は、非変異性の腫瘍タンパク質から派生したペプチドを特異的に認識し攻撃するように精密に設計された未来的なエンティティとして描かれており、変異が少ないがん(例えば、神経芽腫)を治療するための画期的な進歩を象徴しています。このイラストは、がん治療の分野における革新と希望の感覚を伝えることを目的としており、細胞内オンコプロテインを標的とする新しいアプローチに焦点を当てています。

この研究では、神経芽腫などの変異が少ないがんに対する新しい治療法として、細胞内の非変異性腫瘍タンパク質から抽出したペプチドを標的とするCAR-T細胞療法を開発した。

事前情報
大半のがんは細胞内タンパク質によって駆動されるが、従来の免疫療法は個々のHLA型によって提示される変異ペプチド(ネオアンチゲン)に限定されていた。

行ったこと
神経芽腫依存性遺伝子PHOX2Bから発見された未変異ペプチドQYNPIRTTFを標的とするペプチド中心のキメラ抗原受容体(PC-CAR)を開発した。

検証方法
予測される交差反応性ペプチドを用いたカウンターパンニング戦略と計算モデルを用いて、PC-CARの設計と評価を行った。

分かったこと
PHOX2B PC-CARは、特定のHLA型を持つ神経芽腫細胞に対して、in vitroでの強力な細胞殺傷効果とマウスモデルでの腫瘍完全退縮を実現した。

この研究の面白く独創的なところ
変異が少ないがんであっても、非変異性のがんタンパク質を標的とすることにより、免疫療法の対象範囲を広げた点。

この研究のアプリケーション
非変異性の腫瘍タンパク質を標的とするこのアプローチは、従来の免疫療法では治療が難しかったがんの新たな治療選択肢となる可能性がある。


RNA中の特定のメチル化が神経退行性疾患を引き起こす新しいメカニズム

https://www.nature.com/articles/s41586-023-06718-y

ここに、あなたが説明した最近の科学研究の本質をとらえたイラストがある。この画像は、研究で発見された神経変性に関連するプロセスである、RNAの特異的メチル化による変化を受ける神経細胞を表現しています。この複雑な科学的概念を視覚的に魅力的に伝えるようにデザインされている。

この研究は、神経退行性疾患を引き起こす新しいメカニズムとして、CAGリピートRNA中のアデノシンがN1-メチルアデノシン(m1A)にメチル化されることを発見した。

事前情報
遺伝子内のマイクロサテライトリピート拡大は多くの神経疾患に寄与しているが、その詳細なメカニズムは不明であった。

行ったこと
CAGリピートRNAのアデノシンがm1Aにメチル化され、これがTDP-43タンパク質と結合し、神経細胞の退行を引き起こす過程を調査した。

検証方法
CAGリピートRNAのm1Aメチル化、TDP-43との結合、およびこれによる神経変性の影響を生化学的および細胞レベルで検証した。

分かったこと
m1Aメチル化されたCAGリピートRNAはTDP-43と強く結合し、細胞質での誤局在やゲル状集合体の形成を促進し、神経変性を引き起こすことが明らかになった。

この研究の面白く独創的なところ
RNAの特定のメチル化変化が神経疾患の原因となる新しいメカニズムを解明した点。

この研究のアプリケーション
CAGリピート拡大に起因する神経退行性疾患の新たな治療標的として、このメカニズムの研究が役立つ可能性がある。


三次元フラットバンドの実現とその量子物質への応用可能性

https://www.nature.com/articles/s41586-023-06640-1

研究概要に記載されている、パイロクロア金属CaNi2における3次元平坦バンドの概念を視覚的に表現したイラストです。(イメージです。)

この研究では、CaNi2という金属で三次元フラットバンドを実現し、これが電子相関効果の強化や新しい量子物質相の出現につながる可能性を示唆した。

事前情報
フラットバンドは、電子の運動エネルギーが抑制された状態で、これまで主に理論モデルや二次元材料で研究されていた。

行ったこと
ニッケルパイロクロア格子を含む金属CaNi2で、三次元のトポロジカルなフラットバンドを実験的に観測した。

検証方法
角度分解光電子分光法を用いて、フラットバンドの存在とその特性を観測した。

分かったこと
CaNi2の中で、電子がほとんど運動しないフラットバンドが存在し、これが電子の相関効果や超伝導の出現と関連していることを発見した。

この研究の面白く独創的なところ
二次元から三次元へとフラットバンドの概念を拡張し、新しい量子物質相の発見への道を開いた点。

この研究のアプリケーション
この発見は、量子物質の研究や新しい電子デバイスの開発に影響を与える可能性がある。

最後に
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