見出し画像

論文まとめ88回目 Nature(科学) 2023/9/6

  1. ビッグバンから2.5 Gyr(25億年)後に存在した遠くの銀河で、大規模な整然とした磁場が発見

  2. 新種の鳥類先祖恐竜、Fujianvenator prodigiosus(フジアンヴェナトル・プロディジオサス)、が鳥類の進化を新たな視点

  3. アルコール分子のC–H結合を効率的に活性化する新しい触媒を開発

  4. ナノスケールで100%一方通行な分子モーターを作成

  5. がん免疫療法の新たなターゲット、CD300ld、を特定

  6. 脳の星型細胞(アストロサイト)が意外とおしゃべりで、脳の動きに影響

科学・社会論文を雑多/大量に調査する為、定期的に、さっくり表面がわかる形で網羅的に配信します。今回もマニアックなNatureです。

さらっと眺めると、事業・研究のヒントにつながるかも。
世界の先端はこんな研究してるのかと認識するだけでも、
ついつい狭くなる視野を広げてくれます。


一口コメント

Polarized thermal emission from dust in a galaxy at redshift 2.6
赤方偏移2.6の銀河における塵からの偏光熱放射
「この研究は「ビッグバンしてからそんなに経ってない頃に、遠くの銀河ですごい磁場パーティーが開かれてた!」ということを突き止めました。ビッグバンからそんなに時間が経っていないのに、すでに磁場がお祭り騒ぎしていたんですよ。これが、なぜ銀河が今のような形になったのかを理解する大きな手がかりになるんです!宇宙の歴史の謎解きゲームに新たなヒントが追加されたというわけです。」

A new avialan theropod from an emerging Jurassic terrestrial fauna
ジュラ紀の陸上動物群から発見された新しい獣脚類
「みんなが「鳥は木に登ったり飛んでいたんだろう」と思っていた時代に、このFujianvenator prodigiosusっていう鳥類先祖恐竜が「いやいや、オレ様は地面を歩いたり水辺で涼んでたぜ!」と新たな生活スタイルを見せつけてきたんです。ジュラ紀の時代にもオリジナリティ溢れるキャラがいたってわけですよ。これは進化の歴史に新しいページを加える発見と言えますね!」

Hydrogen-bond-acceptor ligands enable distal C(sp3)–H arylation of free alcohols
遊離アルコールの遠位C(sp3)-Hアリール化を可能にする水素結合受容体配位子
「みんなが「アルコールのC–H結合を活性化するなんてムリだよね」と思ってたところに、この研究チームが「待っててよ!新しい触媒でやっちゃいました!」と登場。これで化学者たちが夢見ていた、アルコール分子を自由自在に操る未来がぐっと近づいたってわけです。まるで魔法の杖を手に入れたようなもんですよ!」

Adsorbate motors for unidirectional translation and transport
一方向の並進と輸送のための吸着モーター
「これまで「分子モーターって難しそう、しかも液体がいるのか…」と思ってたけど、今回の研究で「液体なんていらないよ、金属板とシンプルな分子で十分!」という画期的な結果が出ました。これで、ナノワールドでのUberが現実に近づいたと言えるでしょう。ビー玉転がしのような仕組みを原子レベルで実現したんですから、まさに小さな一歩が、大きな未来を拓くって感じですね!」

CD300ld on neutrophils is required for tumour-driven immune suppression
好中球のCD300ldは腫瘍による免疫抑制に必要である
「この研究は「がんの敵(PMN-MDSC)の敵(CD300ld)は味方」ということを発見したんです。もうちょっと噛み砕くと、「がんが進行するために使っている"スパイ細胞"(PMN-MDSC)が、実は"携帯電話"(CD300ld)を使って指示を受けていた。そしてその"携帯電話"を壊す(ノックアウトする)と、スパイは役立たずになる」というわけです。この発見によって、がんに対する新しい"スマートな"攻撃方法が開かれました。要するに、"携帯電話"を止めれば、スパイの計画は水泡に帰する。そんな新しいがん治療の扉が、ほんのりと開いたわけです。」

Specialized astrocytes mediate glutamatergic gliotransmission in the CNS
特殊化したアストロサイトが中枢神経系におけるグルタミン酸作動性神経細胞伝達を媒介する
「脳内の「おしゃべり星」(アストロサイト)が見つかりました!この星、ただの飾りじゃなくて、脳の指揮者ともコミュニケーションしてるんですよ!」


要約

赤方偏移2.6の銀河における塵からの偏光熱放射

ビッグバンから2.5 Gyr後に、高い星形成率を持つ銀河で大規模な磁場が存在していたことが、Atacama Large Millimeter/Submillimeter Array(ALMA)を用いた観測で確認されました。

①事前情報 :
以前まで、磁場は銀河の進化に重要であるとされていましたが、どれほど早くからそうした磁場が形成されていたのかは不明でした。

②行ったこと :
「9io9」と名付けられた遠くの銀河を、242 GHzの代表的な周波数でALMAを用いて観測しました。

③検証方法 :
ALMAでの観測データを用いて、線偏光パラメータ(XX, YY, XY, YX)を測定し、磁場の存在と方向を確認しました。

④分かったこと :
9io9銀河には、大規模で整然とした磁場が存在し、その強度はおおよそ500μG(マイクロガウス)以下であることが確認されました。

⑤この研究の面白く独創的なところ :
ビッグバンからわずか2.5 Gyr後に既に大規模な磁場が存在していた点は、銀河の進化における磁場の重要性を新たな視点で示しています。

応用先
この研究は主に宇宙論と銀河進化の理解に貢献するもので、現実のアプリケーションという観点では直接的な利用は難しいかもしれませんが、宇宙の成り立ちについての新たな知見を提供しています。



ジュラ紀の陸上動物群から発見された新しい獣脚類

中国で発見された新種の恐竜Fujianvenator prodigiosusは、特異な形態的特徴を持ち、後肢が特に長い。これは、木に登るか飛ぶタイプの他の早期鳥類とは対照的に、陸上または水辺での生活を示唆している。

①事前情報 :
鳥類はジュラ紀後期の非飛行性の肉食恐竜から進化したとされているが、その進化の初期段階については疑問が多い。

②行ったこと :
Fujianvenator prodigiosusと名付けられた新種の恐竜の化石を、中国、鄭和の地域で発見。その形態的特性を詳細に解析した。

③検証方法 :
この新種の恐竜の形態を詳細に解析し、放射性同位体年代測定と層序調査を用いてその年代を確定。同地域で他にも多くの水生・半水生種が見つかっている。

④分かったこと :
この新種の恐竜は148-150百万年前のジュラ紀末に存在し、特に後肢が長く、陸上または水辺での生活を示している。

⑤独創的なところ :
他の初期鳥類が木に登るか飛ぶ生活に適応しているのに対し、この恐竜は陸上または水辺での生活に適応している点が注目される。

応用
この研究は主に古生物学や進化生物学の研究に貢献し、教育資料や博物館展示にも利用される可能性がある。


遊離アルコールの遠位C(sp3)-Hアリール化を可能にする水素結合受容体配位子

https://phys.org/news/2023-09-chemists-method-c-h-alcohols.html

アルコールが含まれる有機分子のC–H結合(炭素と水素の結合)を、新しい触媒によって特定の場所で効率よく「活性化」できる方法を見つけました。

事前情報
アルコールは非常に一般的な有機分子ですが、これまでのところ、特定のC–H結合を効率よく活性化することは難しかった。

行ったこと
新しいリガンド(触媒の一部)を設計し、それを使用してアルコールのC–H結合を活性化する実験を行いました。

検証方法
構造-活性関係の研究、計算モデル、結晶構造データを用いて、新しいリガンドがどのようにアルコールのC–H結合を活性化するかを詳しく調査しました。

分かったこと
新しいリガンドはパラジウム(Pd)と結合し、C–H結合の「活性化」を助けることができる。これは二次相互作用によって触媒と基質の親和性を高めることで可能となりました。

この研究の面白く独創的なところ
二次相互作用を使って、これまで難しかったC–H結合の活性化を初めて成功させた点。

応用
新しい薬物や高機能材料の合成において、効率的な方法でアルコールのC–H結合を特定の場所で活性化できるようになる可能性があります。


一方向の並進と輸送のための吸着モーター

金属面上で動く、非常に小さな分子モーターを開発しました。このモーターは、内部のプロトン移動によって動き、一方向にしか進まない特性を持っています。

①事前情報:
従来の分子モーターは、複雑な設計と合成が必要で、液体中でしかうまく動かなかった。一方で、DNAウォーカー(DNAで作られた分子モーター)は方向性が高いが、表面の化学的パターニングや溶媒の変更が必要でした。

②行ったこと:
単純な分子と均一な金属面を組み合わせ、液体なしで分子レベルでの動きを追跡しました。

③検証方法:
分子レベルでの動きを追跡するために、内部のプロトン移動と対応するポテンシャルエネルギー表面の変調を詳しく調べました。

④分かったこと:
各分子は100%一方通行で、原子レベルで定義された直線上を動きます。また、一酸化炭素分子を制御された輸送で動かすことができるという実用性も確認されました。

⑤この研究の面白く独創的なところ:
単純な分子と金属面だけで、液体なしで方向を決めて動く分子モーターを初めて作成した点。

応用
この研究によって、ナノスケールでの構造の組み立てや分子レベルでの材料輸送が可能となり、ナノテクノロジーの新たな展開が期待されます。


好中球のCD300ldは腫瘍による免疫抑制に必要である

がん組織の中で免疫反応を抑制する細胞(PMN-MDSC)の働きを制御する分子「CD300ld」を発見しました。この分子をターゲットにすることで、がん治療の効果が向上する可能性がある。

①事前情報:
がん治療において、免疫抑制する微小環境が一つの大きな障害であり、特にPMN-MDSCと呼ばれる細胞がその中で重要な役割を果たしている。

②行ったこと:
マウスのがんモデルを用いて、PMN-MDSCに作用するキー分子を特定するためにCRISPR–Cas9スクリーニングを行いました。

③検証方法:
CRISPR–Cas9を用いてマウスモデルで数々の候補分子をノックアウトし、がんの発展にどれほど影響するかを調査。さらに、人間のがん組織でのCD300ldの発現も確認。

④分かったこと:
CD300ldがPMN-MDSCのがん抑制機能に必須であり、この分子をノックアウトするとがんの成長が抑制される。また、CD300ldは人間のがんでも高発現であり、患者の生存率と逆相関している。

⑤この研究の面白さと独創的なところ:
CRISPR–Cas9スクリーニングを用いて、これまで注目されていなかったCD300ldという分子が、がん免疫抑制で非常に重要であることを突き止めた点。

応用
新たながん免疫療法の開発。特に、CD300ldをターゲットとする治療法は、既存のPD1阻害剤とも相乗効果が期待される。


特殊化したアストロサイトが中枢神経系におけるグルタミン酸作動性神経細胞伝達を媒介する

特定のアストロサイトが神経細胞と同じように、急速にグルタミン酸を放出して脳の活動に関与している。

事前情報
アストロサイトは脳内で何をしているのか、以前はよくわかっていなかった。

行ったこと
RNAシーケンシングとイメージング手法でアストロサイトを詳細に調査。

検証方法
特定の遺伝子(VGLUT1、VGLUT2)を操作して、その影響を観察。

分かったこと
特定のアストロサイトが神経細胞のように動き、その動きが脳の機能や病気に影響を与える。

この研究の面白く独創的なところ
「アストロサイトはただのサポート役だ」という先入観を打破。

応用
神経疾患や精神疾患の治療に新しいアプローチをもたらす可能性がある。


最後に
本まとめは、フリーで公開されている範囲の情報のみで作成しております。また、理解が不十分な為、内容に不備がある場合もあります。その際は、リンクより本文をご確認することをお勧めいたします。