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密室で脅される。/宝石屋のパーティーに呼ばれる。

これは二十歳の僕のネパール日記。

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外を出ると、
暗くて狭くて汚くて犬だらけだった街は
明るくて狭くて汚くて犬と車だらけの街になっていた。


暫く歩くと、人と店が何重にも重なりながら流れていく街にたどり着いた。
「アサンバザー」だ。

ネパール随一のショッピング街であり、観光地でもある。私は心を躍らせた。

するとすぐに少年が声をかけてきた。

[[町で声をかけ、案内してくれる人には着いていっちゃいけない。]]

何人もの知り合いからそう聞いていた。
騙され、ぼったくられるからだ。


着いて行ってみよう。


騙されたとて、経験できればいいだろう。
怖いもの見たさで少年と街を歩くことにした。

街にはお寺がいくつもある。
お寺での参拝の仕方、
ヒンドゥー教が大切にしていること、理念などを丁寧に教えてくれた。

少年「こうやって鐘を鳴らすんだ」
少年「花びらを頭に乗せるんだよ」

すると少年はこう言い出した。
「僕はアートスクールに行っているんだ!見にきてみない?」

きたきた!!

Yesと答え、少年とアートスクールに向かった。

街のはずれ、住宅の間を通り抜けると
「Tara THANGKA Art school」と書かれた看板のある建物がある。

『ここが僕のアートスクールだよ!』

少年は嬉しそうに言う。いざ入ってみようではないか。

狭い階段を登り、アートスクールは2階にあった。


部屋の壁にはびっしりと「曼荼羅」が飾られてある。

『この曼荼羅俺が書いたんだぜ』

少年がそう話だし、書き方などを教えてくれた。

暫くすると一人の大きな男がやってきた。
どうやら先生らしい。

先生は曼荼羅の説明を熱心にしてくれた。
曼荼羅の種類や意味、どんな歴史があるかなど、、
その話はかなり面白かったので、来て良かったとさえ思った。

説明を聞き終えると先生は
「我々を支援してくれますか?」と言ってきた。

How do i do that?僕は聞いた。

『このノートに貴方の名前を書いて下さい。
それだけで支援が完了します。』
先生が言う。

それだけで済むわけがない。

NO!
キッパリと私は断り、部屋を出ようとした。

すると、
部屋の外から3人の男がこっちを睨みつけているではないか。
そして、少年・先生・男たちは私を大声で罵倒しだした。
早すぎて何も聞き取れない。
そして、出ることも許されない。

Ok.ok

私はとりあえず紙に名前を書くことにした。

名前を書き終えると、先生は颯爽と電卓を取り出した。
「75000」

75000ルピー(約70,000円)で曼荼羅を買えというのだ。
たけぇ
くそたけぇ!
そしてなにいってんねん!!!

「なぜ買わないと行けないの?」
僕が聞く
『だって貴方は私たちを支援してくれると言ったでしょう?』

そこから、長い戦いが始まった。

「今お金を持ってないんだ」

『どこにあるの?取りに行けばいい』

「ホテルにあるから、一人で取りに帰るね」

『いいえ、私がバイクで送ります』

「一人で歩きたい」

『一人で歩かせたくない』

「払えない」
と最後に言うと

『私たちをからかっているのか?』と部屋の全ての男たちが半笑いで僕に向かってきた。

SorrySorry
流石に買わないと終わらない。
僕は値下げすることにシフトチェンジした。

結局、75000円だった曼荼羅を5000円にまで下げてもらいフィニッシュ。

曼荼羅自体はかっこいいので、少し満足して私は帰った。

-----宝石商の男------

曼荼羅を持ったまま街を歩いていると、宝石屋の店員が私を呼んでいる。

『あなたは日本人でしょ!お店でチャイ飲もう!』
日本語で話しかけてきた。

[日本語で話しかけてくるからと言って安心してたら絶対騙されるぞ]
これも日本でアドバイス済みだ。


私はお店に入った。


お店に入ると、男はショーケースの上でチャイを入れてくれた。

テンキュ!!

光り輝く宝石が並ぶ店の中で、
チャイを飲みだすと男の友達の中国人が2人、ネパール人が1人きて5人で会話を楽しんだ。

4時間くらい話しただろうか。

ネパールについて沢山の話を聞けた。そして日本の話も沢山した。
そして騙されなかった。

「そろそろ帰るよ!」
僕が切り出すと、宝石屋の男はこう言った。

「夜パーティーがあるからおいでよ!
君をゲストで招待するよ!」

パーティー…⁉︎
それも宝石屋のパーティーだ。
なんとワクワクすることだろう。絶対に絶対に怪しい。

店の前で、夜9時に待ち合わせの約束をした。


店をさった僕は美容院へ向かった。

こっちに来たら、一番に髪を切ると心に決めていたからだ。

美容院を見つけ、入る。

自分の髪の毛を指しながら僕はこう言った
「ナウ、ジャパニーズへアー
アイ ウォンチュー ネパリーヘアー チェンジ!!」

ウケた…

何故か店のソファには、店員以外のお爺さんが一人と少年が2人座っている。
その3人に大ウケした。

美容師さんは、ピストルのような威力の霧吹きで僕に水をかけ
そして躊躇なくハサミを入れていった。

ちょきちょき
きりおわり❤️


無事に切り終わり値段は1000ルピー

ボッタクられていると気づきながらも、そのまま払って店を出た。


一度ホテルに帰りものを置く。
ひと段落し、街で思ったことのメモを書いた。

すぐに約束の時間になり宝石屋の前に行った。

男が待っている。

「ネパール料理は食べた?」
「お酒は飲める?」
「どんな料理が食べたい?」などと会話をしながら目的地に着いた。

辺りは真っ暗、どうやら店は狭い路地の奥らしい。
午前のことが脳裏によぎる。

路地を通ると階段があった。
男が登る。僕も着いて行く。

2階に上がると、高級なレストランのような大きな扉が待っていた。

ここがパーティー会場か。

勇気を出して門を開いた!




誰もいない。

男が席につき、僕も席に着く。
男がおすすめのメニューを注文してくれた。
「他に誰か来るの?」僕は聞いた。

「まさかぁ!」男は答えた。

なんと可愛いことだろう。
男は二人でのご飯をパーティーと言っていたのだ。

このテクニックは日本に持ち帰ろうと私は思った。

とてもうまい。
キーマカレーとマトンカレー、それから丸いナンのようなものを男と食べた。

食事中に男は話した。
「日本人は毎日必死に働いて働いてお金を貯めて、使う頃にはお爺さんで動けなくなってるから馬鹿だよ
ネパールの人は毎日楽しく遊びながら生活している。自殺率も低い。
何も怖がる必要はなし、もっと自由になればいいよ」

確かにそうだ。
話には納得できたのだがまだ街に来て、
・犬に殺されそうになったり、
・部屋で脅されたり
散々なことしか無かった為、

「こんな街に住む人間の話に説得されてたまるか!」

そんな気持ちだった。
そして
心の中で黙れ!と叫んだ。

30分ほど話し店を出た。
二人合計で1200ルピー。

特にだまし騙されもなく楽しく終わった。
なぜか1000ルピーを僕に払わせてきたことを除いては。

明日の夜もバーに行こう!と誘われたが、多く払わされたのが腹にきたので断ってやった。
この街では上手な距離をとりながら生きていかなければならない。


次の日起きると熱が出ていた。動けない。
新しい街を前に、容量が完全に超えてしまった私は体調を崩し鬱週間に突入するのであった。


次回:「東條新の鬱日記」

お楽しみに!

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