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最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。

時代は移り変わり続けるものです。


家電量販店が絶好調な時代もありました。

消費者金融も驚くほどの収益を誇っていた時代もありました。


でも、時代とともに、世の中は変わり続けています。



日本最大のニュースアプリ



Gunosy(グノシー)は国内最大級のニュースアプリ。

主にニュースのキュレーションサービスを提供しています。


創業者は東大大学院在学中に創業した、福島良典氏。


2012年11月設立の株式会社Gunosyはわずか2年半で東証マザーズに上場。

2017年12月には東証一部上場へ市場変更しています。


ニュースのキュレーションサービス「グノシー」のダウンロードは2000万を超え、自動で選定したニュースや情報を届ける「ニュースパス」も400万ダウンロードを超えています。


ものすごい成長スピードですね。

ベンチャー成功事例の一つと言えるでしょう。


新聞業界の昨今


このグノシーの成功と対軸にあるのが、新聞社や週刊誌などのニュース紙媒体企業各社。


特に、この新聞業界の衰退を顕著に表しているのが米国新聞業界。


アメリカ新聞協会(Newspaper Association of America:NAA)のデータによれば、2013年の新聞の広告売り上げは1950年以下になっているそうです。


広告売上のピークは、2000年の658億ドル(約6.5兆円)。

ピーク時の半分以下にまで大幅に下落しています。


この流れは日本国内でも起きています。

日本は紙媒体の新聞の発行部数が多いことで知られています。


読売新聞は世界最大の発行部数ですが、やはり世の中の流れに逆らうことはできず、部数は漸減しているのが現状です。



アメリカのデジタル化への速度に比べ、まだ穏やかな状況ですが、日本国内新聞各社は、いずれデジタル化の流れが加速することは避けられないでしょう。


時代の流れ


IT化、グローバル化の流れは、どの業界においても無関係ではないと思っています。

時代の流れは、企業の素早い対応力が求められます。


企業戦略においても、大幅な構造改革を迫られる場面は多いのではないでしょうか。

変化に対応した事例で成功事例を一つご紹介いたします。


最も変化に成功した企業が「富士フイルム」ではないかと個人的には思っています。

富士フイルムホールディングス(株)率いる、「富士フイルム」グループ。


もともと社名の如く、写真フィルム事業が主力事業。


2000年頃までは写真フィルム事業関連の売上は、全体売上の54%、営業利益全体の70%近くに及んでいました。


大きく変化したきっかけが、1996年頃から本格的普及が始まったデジタルカメラの影響。

このデジタルカメラへの消費者移行速度が驚くべきスピード、2005年にはほぼデジカメに市場は移行します。


2001年ポラロイドが倒産、2006年にはコニカがフイルム事業から撤退、そして2012年にはフイルム界の巨人、米イーストマン・コダックが米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)を申請して経営破綻。


当時7万人以上の社員を抱えていた大企業、富士フイルムも「倒産」の2文字がよぎります。


7万人の組織を改革する人物


このピンチに大改革を推進したのが、古森重隆氏。


社長に就任したばかりの古森重隆氏が読売新聞のインタビューに対し、こう発言しています。


「20世紀はエレクトロニクスの時代だったが、21世紀はバイオやゲノム、ケミカルの時代になる。我が社の経営資源や技術開発力、ブランド力を生かし、新たな核となるビジネスを作っていきたい」。


しかし、当時は写真フィルムが絶好調で大きな利益が出ていたこともあり、危機感は薄く、社内には「まだまだ写真フィルムでいける」という雰囲気もあったそうです。


しかし、今やるしかない、そう決意した古森氏。

会社には、技術基盤、財務基盤、ブランド力、質の高い社員という経営資源がある。

今やれば、まだ間に合う。

持っている技術を全て洗い出し、事業再編を実施、それが「技術の棚卸」と呼ばれた2年がかりの事業構造転換を決断しました。


3つの改革軸


その改革軸は「やれそうか」「やるべきか」「やりたいか」の3つ。


「やれそうか」は技術的裏付け。

「やるべきか」は業界トップになれるかの検証。

そして「やりたいか」は「会社の思い」。


この3軸で検証した結果、再構成したのが、6事業領域。



液晶用フィルムに代表される高機能材料事業や、子会社の富士ゼロックスが手掛ける複合機などドキュメント事業、後に医薬品や化粧品にも拡大したメディカル・ライフサイエンス事業などの6分野を新たな成長の軸に据えた。


このうち、ヘルスケア、高機能材料、ドキュメントの3分野を「経営資源の集中分野3本柱」に位置付けました。


M&Aの凄さ



富士フィルム改革は、M&Aの推進も大きな特徴です。

特に医薬品分野。


2008年に富山化学工業を買収し、共同で新薬開発や富士フイルムが開発した新薬を富山化学工業で臨床開発しています。


他にも東大発ベンチャー「ペルセウス・プロテオミクス」やバイオ医薬品の受託製造会社「富士フィルムダイオシンスバイオテクノロジーズ」、バイオ医薬品バイオシミラーを開発する「協和キリン富士フィルムバイオロジクス」などをM&Aで傘下に収めています。


2000年以降の主なM&Aを見ても30件を超え、買収金額は公表しているものだけでも4,800億円以上に上っています。


過去の技術を活かす


そして、もう一つの特徴。

過去の「資産」を活かしている点です。


この大胆な事業構造転換の中で、象徴的な分野が、診断(画像診断機器)、治療(医薬品)、予防(化粧品、サプリメント)のトライアングルで構成するヘルスケア事業です。


この分野では、過去の写真フィルム事業で培った技術が生きています。


例えば、医療分野。

画像技術を生かし、医療機器での開発、製造に結び付けています。


そして化粧品分野でもそうです。


もともと、写真フイルムの表面は、9層の発色剤を塗り重ねています。

わずか0.02mmの厚みにコラーゲンをはじめ約100種類の物質を微粒子単位で混合し、表面に均一に塗り重ねる微粒子制御技術が、写真フイルムの製造技術にあります。


コラーゲンの超微粒子化の高い技術を応用し、3種類の粒子と機能が異なるコラーゲンを配合したのが、スキンケア化粧品のアスタリフトです。


自ら持っている「資産」を活かし、事業開発に見事結びつけています。


フィルム企業からの脱却


2000年、代表に就任し、事業改革を推進した古森重隆氏。


みごと事業多角化を成功させ、2008年には、富士フイルムは過去最高の2兆8468億円の売上を計上し、構造的な改革を成功させています。


一方、写真フィルム事業は毎年200億円のペースで減少し、ピークの00年度と比べると約2600億円が消滅。


まさに間一髪。


「社長に就任した年から2―3年で写真フィルム市場は約10%縮小した。祖業なのでなんとか生き残る道はないかと色々シミュレーションしてみたが、市場縮小は避けようがない。このまま写真フィルムにしがみついていたら、会社が早晩立ち行かなくなるのは明らかだった」(2013年11月「東洋経済オンライン」記事)と、古森氏は振り返っています。


さらに

「私は大変な時期に就任しましたが、相当思い切ったことをやらないと会社が救えないと考えた時は、うれしかったです。武者震いがして“やってやる”という気持ちでした。 これは“『人生最後の通信簿』」になるとも思いました。」


「経営者やリーダーには『骨太の楽観主義』も必要だ。困難にも立ち向かっていき、前向きにやっていこうという気持ち。これが伴わなければ、知識がいくらあっても無理だ。それが『魂の経営』。命を懸けるぐらいではなく、命を懸けていました。」と述べています。


凄いですね。

改革を実現することはよく聞く話です。


でも、数十人の組織ならともかく、7万人の組織を抜本的に改革成功することの実例としては、あまり例を見ません。


最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない


私が古森重隆氏のコメントの中で一番気になったのが、こちらです。


「本当に強い企業とは、自ら変化を作り出せる企業。優良企業だったとしても、変化にさらされたときに対応できなければ衰えていくし、やがて滅びてしまう。まずは変化に対応できなければいい企業とはいえない。」


あれ?

どこかで聞いたような。

そうです。


チャールズ・ダーウィンの「進化論」!


チャールズ・ダーウィンは、著書「種の起源」で「自然淘汰により生物は進化する」という理論を展開しています。


「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。」という名言でも有名ですね。


チェンジすること、変わることの重要性。

勇気がいるものですよね。


変わり続けるという普遍性


そういえば、以前、ガラスが流体である、という文章を読んだことがあります。

本当に微々たるものですが、ガラスは変化しているそうです。


諸行無常の響きあり。


この世の中、唯一変わらないもの、絶対的普遍的なものがあるとするなら、それは世の中すべてものが「変わり続ける」という事実ではないでしょうか。


「変わり続ける」という事実だけが、普遍的に変わらないものかもしれません。


世の中のものが、変化している。

動き続ける世界。


弱肉強食と言われるビジネス社会で生き延びるもの。


それは、

最も強い者でもなく、

最も賢い者でもない。


自ら変化できる者なのかもしれません。



最後に


名言を贈ります。



変化を恐れる会社は危険。動いている会社――企業は変化することのほうがはるかに安全。

正田修(日清製粉名誉会長)



世の中は刻々と変化し、個人の力でどうすることもできない場合もある。だが、どんなに変化する世の中でも、自分から落後してはだめだ。

平塚 常次郎(ニチロ創業者)



本物のブランドとは伝統のスタイルと技術に根差しながら常に新しい変化をつくり出すものだ

福原義春(資生堂名誉会長)



新しい時代に適合するだけでは遅い。常に波頭に立ち、波と同じ速度で泳いでいなければ。

飯田亮(セコム創業者)



世の中は変る。非常な勢いで変ってゆくのであるから、どう変るかを早く見通して、それに適応して行った人間が勝ちである。

小林一三(阪急グループ創立者)



道はない。進んだ軌跡が道になる

株式会社メタルワン、スローガン



始まりはいつも一人の小さな覚悟です。

永松茂久著『感動の条件』より

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