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大丈夫、おしゃべりしよう

 私は今、ABA(応用行動分析)のセラピストとして、子ども達に発語を促したり、認識力等の向上に向けてのサポート、学習面での指導などを行っています。一人ひとりのプログラムはコンサルタントの見立て、親御さんの希望などを考慮して作られます。
 その中で親御さんの希望としてとても多いのが「発語」に関することです。言葉でコミュニケーションを取りたい、というのが圧倒的に多い。

 以前働いていたところ(地方の療育施設)ではTEACCH(ティーチ)というプログラムを使って子ども達の支援をしていました。障害を持つ人(子ども)が生活しやすいように整理され構造化された環境の中で、生活スキルを教えたり、集団の中での他者とのコミュニケーション(言葉以外でも)の方法を伝えたりしていました。
 ABAとTEACCH、どちらが優れているとかはありません。ABAは個別に伸ばしたいところ(例えば発語やアカデミックなスキル)を伸ばすには最適だと思いますし、TEACCHは日々生活していく上での大きな学びを得られると思っています。
 ただ、集団では訓練させることのなかった「発語」に関して(そもそもあきらめていた部分があるのですが)、適切な時期に適切な訓練を受けることで「言葉が出てくる」可能性が広がるという事実をABAセラピストになって痛感しています。

 とは言っても
「言葉でコミュニケーションをとれるように、、、」
というこちらの思いとは裏腹に、スクールに通い始めたばかりの子は音を発する事を嫌がることがあります。なぜか。それは、自分が相手の望んでいる音を出せないことを知っているからです。
 例えば
「真似してね、『あ』だよ」
と言っても「あ」の音が出ない。何回やっても出ない。ABAは強化子と言われる「ご褒美」を使うのですが、それでもやっぱり出来ないことを延々とやらされるのは嫌になっちゃうこともある(多分私なんかより経験豊富で上手なセラピストだと、そんなこともないのかもしれませんが)。

 とは言え、コンスタントにスクールに通って来るうちに、セラピスト(私)と子どもの呼吸が何となく合ってくる、感じがしてきます。そうなると、出ない音を出すこともそんなに嫌じゃなくなってくる、そのうちきれいに発音できる音が1つ2つ増えてくる、、、。
 まぁ、そんなにうまくいくものじゃありませんが、セラピー中にそっぽを向いたり、離席しようとしたり、大きな声で拒絶したりはなくなります。

 そもそも療育に通う前から言葉が出ないことにコンプレックスを感じている子もいます。妹や弟がおしゃべり上手だったりすると、黙ってしまったり傷ついてしまう子も。
 ゆったり構えなくては。急かしても良いことはない。
「大丈夫、笑ったり(もちろん怒ったりも)しないから、先生とおしゃべりしよう!」 
親御さんと同じくらい、いえそれ以上に発語を期待をしている私ですが「楽しい」が最重要。おしゃべりは本来楽しいものです。

 白状すると、子どもに言葉らしきものが出てくると、
「やったー!」
とこちらが大興奮。しかもソレは突然やってきたりするのです。こちらの興奮にびっくりしつつ、
「あれ!?僕(私)なんかすごいことやっちゃった!?」
なんて気づいてくれたら、もう言うことない(笑)。
 だから焦らず楽しく。

 が、元来ゆっくりしている私。上司に
「もっとテンポよく(セラピーしなさい)!」
と注意されることも。どうやらゆったり構えることと、ゆっくりすることは違うらしい、、、(汗)。
 そんな話もまた今度。

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