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実写版かりあげクン・第12話雑感、そして全体の感想

 こちらも最終回になりました。さてどんな波乱が? といっても予想通りでしたが。

 木村課長が考え事している時の足トントンや、イライラ時の指トントンに合わせ、リズミカルに答えてしまうかりあげ。「なんで合わせるんだよ!」と怒られても、かりあげからしてみれば「合わせてくれと言ってるようなもの」でしょう。人によってはそんな仕草を見てるとイライラするでしょうけど、それをもネタにするのがかりあげの通常運転。
 そんな木村課長にピッタリのプレゼントを考えたかりあげ。仕事が遅い!と叱られてばかりですが、こういう件だと行動が早い。そのやる気を仕事に少しでも仕事に向けてくれればと思うでしょうが、おそらく仕事だと思うと面白くないのでしょう。仕事とは無関係ですが、原作では年末にドッとやって来た借金の取り立てに対し
「年が明けたら必ず払いますから」
といって正月早々に「お年玉」という形で返済します。かりあげ曰く「借金だと思うと返す気が起きなくて」。そんな男です。
 面白いこと、楽しいことと仕事は別。楽しく仕事をするのでなく、仕事中でも面白いこと、楽しいことを考えながら日々を過ごす。何とも呑気な男ですが、社畜と呼ばれるくらいなら自分はこういう生き方を選びたい。

 そんなかりあげは課長から幾度となく「お前なんかクビだ!」と言われ続けたようですが、今回とうとう社長からクビを宣告されます。その事実を知って衝撃を受ける営業課一同。そこで改めて、かりあげが実践する
「仕事中でも楽しく、面白く呑気に生きるさま」
に知らず知らず触発され、かつ影響を受けていたと悟り、その喪失感ゆえに消沈してしまいます。そこへ新規採用者の面接が入ったとの話。課長と係長はかりあげのクビを撤回してくれと社長に迫りますが、そこへ入ってきたのは……

 まあこれは先週書いた通りだったわけですが、一見何とも適当な会社だと思いきやこれを提案したのは当のかりあげ。そうすれば形式上でも本年度新規採用ゼロにはならないだろう、と社長に直談版したようです。やはり人とは違う、変わったことに関する行動力だけは早い。
 出世欲とかは全く無い永遠のヒラ社員だけど、サラリーマンとして面白く、かつ楽しく毎日を過ごせればそれでいい。適当なようでいて、会社の体面を保つためなら大胆なアイデアを出せるほど肝が座っている。なのでほんにゃら産業としても
「まあ、そんな人間が一人くらいても、別にいいか」
なんでしょうね。会社内で何だかんだあっても、面白く、楽しく生きるオーラを出すだけで空気を変えてしまう存在。潤滑剤みたいな男です。

 最後は窓際さんも登場し、かりあげのイタズラに振り回される課長を見てすっかり盛り上がる営業化一同を描きつつ、幕を閉じます。


 さて振り返ってみますと、放映前の予想とは全然違う話でしたが、ショートドラマ3本立てという形式ならびに構成は正解だったと思います。ただドラマとして面白かったか? と聴かれるとやや微妙です。

 その理由は、やはり主人公・かりあげというキャラの描き方にあったかと。何があっても真顔で何でも飄々とこなす。そこはいいのですが、元々あるはずのイタズラっ気や時に見せる毒っけは控えられており、牙を抜かれた感が否めないんですね。
 そして昭和や平成初期にありがちなやり取りやジョークをわざわざ「アウトー!」とハラスメントネタにするあたり、そうでもしなければこの令和というご時世に実写化出来ないのか、という感はあります。全体的にそんなそれゆえ主人公もあんな姿になった。ドラマ独自の設定といえば聞こえは良いものの、ギャグ4コマ漫画からジョークと牙を抜くとああもユルい雰囲気になってしまうのかと。

 かつてのアニメ版は平成初期・バブル期真っ只中の、まだまだ昭和のサラリーマン的な空気があった頃の作品でした。それゆえ漫画に準拠どころかオーバーにさせたギャグアニメでしたか。それと比較するのは酷ですが、
「いやいや、かりあげクンのポテンシャルはもっとあるぞ」
と思うことしかりです。
 それでも、この令和にどうにかして実写化するにあたり、ショートドラマという形で抱腹絶倒とはいえずともやれるだけのギャグを入れた、その心意気は買いたい。ただ出来れば、もっとドタバタさせてもよかったです。
 

 もし二期があるのなら、会社の危機をブッ飛んだ機転で乗り切るも、それゆえに実行したイタズラの度が過ぎてプラマイゼロになるとか、そんな話があってもいいですな。

課長「全く、アイツも惜しいことしたな」
係長「でも課長、かりあげさんが係長とか課長になった姿って
   想像つきます?」
のんびりしているかりあげ。
木村課長「……ま、それもそうか」

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