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『ゴジラ-1.0』アカデミー賞ノミネート!

 やってのけた。
 本番はこれからだが「ノミネート」という時点で既に嬉しい。
 ゴジラ映画が、誕生70周年という節目の年に「米国アカデミー賞」という土俵の上に立てるのだ。

 歓喜に湧く白組スタッフの皆さん、そして山崎貴監督の姿を見ていると、自分まで嬉しくなってくる。

「若い頃の自分に聞かせてやりたい」
「行けるんですね、本当にね……こんな事が起こるんですね……」
 これはゴジラを、そして様々な作品を通じて日本の特撮映画を見守り続けてきたファンと同じ気持ちではないだろうか。というか、自分がそう思っている。思わずにいられるか、である。
 昨日の今頃、自分はこんな記事を書いた。

 入って欲しい、という願いを込めて記したが、本当に良かった。
 では本番はどうなるか?

 他のノミネート作品と比較しても分かるように、ゴジラはハリウッド映画よりも断然低い製作費で撮られている。ただ「だから凄い」というのはあまり褒め言葉にはならないような気がする。むしろ山崎貴監督のインタビューにあった、

「少ない人員で、手作業でクラフトマンシップ、という感じが新鮮だったんじゃないですかね。いろいろなことがシステマタイズ(組織化)されてパイプラインがあって、一つのちっちゃなパートを凄い沢山の人達で作るのが今のアメリカのやり方ですから。
 我々のやり方は、一人がワンカットを一から十まで作って、一つずつ仕上げていってる。あと普通は、監督との間に何人もチェックする人がいるんだけど、そういう人がいなくて直接監督と会話することで効率を上げてる、みたいなことしか我々の売りが無いんで(笑)」

 映像技術こそ最新鋭でありつつも、原点回帰というか超効率的な作り方をしている、という部分が好印象を持たれたのかもしれない。
 「効率的」と聞くと、かの特撮研究所を設立し、東映や同業他社で長年にわたり活躍し続けた特撮監督・矢島信男氏を思い出す。テレビ特撮作品だとタイトなスケジュールの中で毎週何十カットという特撮シーンを作らねばならない。そこで氏は絵コンテをフル活用し、まずコンテを書いて全体の演出と同時に撮影の段取りも決めていた。つまり順撮り(※話の筋に沿って撮影する)ではなく、美術や操演等ののセッティングも含め、同じ準備や仕掛けでまとめて撮れそうな部分は撮ってしまう……しかしただ効率を追い求めるだけでなく、アクションシーンを撮るにしても、足元をなめるような凝ったアングルや逆回転撮影、トランポリンを活用するなどの工夫を行った他、場面によっては大きな美術セットを組むなどした。要はメリハリだ、と矢島氏は語っている。

 「特撮」の時代でこうであれば「VFX」であってもそれは同じではなかろうか。もちろん、ハリウッド方式と白組方式のどちらが正解か、てな話ではない。あちらはあちらで、それだけの手間と時間をかけたと分かるほどの凄い映像を産み出しているのだから。

 しかし、願わくばこの「監督と作業者との距離が近い」という、実に効率的かつ原点回帰的なやり方(システム、と呼ぶには大袈裟)に、あちらの方々が改めて注目してはくれまいかと思う次第である。

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