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団時朗さん死去

 ああ……ヒーロー役の方が他界されると、もう言葉が出ない。

 始めて観たウルトラシリーズは『帰ってきたウルトラマン』。自分が怪獣少年になりたての、年号が昭和から平成に変わる少し前くらいだった。
 もともとテレビで怪獣映画を観て覚醒したとなればまた観たくなるというもの。そこで新聞のテレビ覧をくまなく読んでいたところ、ちょうどTBSの早朝枠で第二期ウルトラシリーズの再放送をしていると気付いた。
 とはいえ、まだ自宅にビデオデッキなど無い時代。そのため自分は放送日になるとわざわざ起き、リアルタイムで視聴したのである。まだ小学3年生くらいのはずで、我ながら昔から物好きだ。これが自分の『帰ってきたウルトラマン』そしてウルトラシリーズとのファーストコンタクトになった。
 途中からの視聴だったので序盤は見逃したが、それでも初めて観た回は「怪獣は宇宙の流れ星・磁力怪獣マグネドン登場」だったとはっきり覚えている。ちなみに再放送は『新マン』と『レオ』の二本立てで、必然的に『レオ』もその流れで観た。こちらは「おいらは怪獣大将だ!・わんぱく怪獣タイショー登場」が初視聴。今思うと、路線変更でいろいろやってた時期の回を最初に観たわけか……

 それはさておき、自分は新マンと出会った。そしてひたすら観ていた。気が付けば、さまざまな怪獣や宇宙人と激闘を繰り広げるウルトラマンに夢中だった。猛烈な嵐を巻き起こすバリケーン、宇宙ステーションを背負ったヤドカリン、怪獣だか何だか分からないプリズ魔、そして一度はウルトラマンを倒してしまったブラックキングとナックル星人。なお「11月の傑作群」は当時あまり印象に残らず(※今観ると強烈だが)、むしろ倒されてしまう回の方がずっと衝撃的だったと記憶している。

 ただ当時の自分が観ていたのは「怪獣」そして「特撮」だった気がする。ドラマパートをどこまで見ていたかの記憶が無いのだ。何となくは覚えているが、まず一番に浮かんだのがヤメタランスの回。いわゆるギャグ回である。子供にとってはそれが一番刺さる内容だったのだろう。
 そして後年になってから再視聴し、初めてドラマ部分の面白さに気付かされた。とりわけ序盤は主人公の郷秀樹が自分の力を信じられず、やがて本当だと気付いて過信した結果重大なミスを犯してしまい仲間から責められる、という展開もあった。必ずしもヒーローは最初からヒーローとしていられるわけではない。思い上がりによる過信、そして周囲との衝突も当然起こる。こういった困難や苦悩を乗り越えながら仲間達と共に歩み続け、徐々にヒーローへとなっていく。その姿を本作ではしっかりと描いていたのだ。

 その「ヒーローとして成長していくヒーロー」を演じたのが、団時朗さんだった。御本人はモデル出身で『帰ってきたウルトラマン』が初レギュラー出演作品に。それゆえの苦労も多かったそうだが、そんな団氏を支えてくれたのはMAT隊員・南として共演した池田駿介氏だったという。同じくMAT隊員だった西田健氏との交友も深かったそうだが、とりわけ池田氏とは本作のオーディション時に最後まで主人公役を競った関係でもある。劇中では郷秀樹が南隊員に庇われたりサポートされる場面も多かったので、役者としても先輩だった池田氏から公私共に支えられつつ演じた一年間は、団時朗氏にとって非常に、かつ貴重な経験になったことだろう。
 池田氏とは晩年まで親交が深かったという。その池田氏と同じく、癌で闘病の末に亡くなってしまうのは本当に残念でしかないが……

 いや、団時朗氏はウルトラの星へ帰ったのだ。今こそ「ウルトラ五つの誓い」を叫ぼう。

 ひとつ、腹ぺこのまま学校へ行かぬこと!
 ひとつ、天気の良い日は布団を干すこと!
 ひとつ、道を歩く時は車に気をつけること!
 ひとつ、他人の力を頼りにしないこと!
 ひとつ、土の上を裸足で走り回って遊ぶこと!

 聞こえるかーい! 郷さーん!!

 ご冥福をお祈りします。

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