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高校野球とウチの親父と、甲子園までの道(※行程)について。

 センバツ高校野球の出場32校が決まったが、実は身近な人間でその選考の行方にほのかな期待を抱いていた人物がいる。ウチの親父だ。

 親父は高校時代に野球部で、捕手を務めていたという。甲子園に出るようなトコではなかったというものの、その影響もあってかTVで野球を観る時はよく「投手&捕手・打者とが繰り広げる球の読み合い」みたいな薀蓄話をする。これまた実に楽しそうに話すが、自分はそれを全く煩いとは思わない。それを聴きながらだとまた野球の見方も違ってくるので、本人も楽しいのだしこっちも楽しめるからいいのである。

 親父は野球観戦もしに行く。夏の県大会はもちろん、春や秋の大会も予定さえ合えば「ちょっと見に行くわ」と出かけていく。一時期は関東大会を観るために埼玉まで行くほど好きである。夏だとおふくろから必ず「熱中症だけは気を付けてよ」と心配される。ただでさえうだるような気温にになる真夏の群馬、プレイする方もそうだが観戦する側もさぞ暑かろう。

 そんな親父だが、まだ一度も甲子園には行ったことがない。せめて一度は現地へ観てみたいと願っていたようだが、なかなかその機会に恵まれなかったらしい。だったら若い時に行っておけば……と思ったが、親父が野球観戦をし始めたのは50を過ぎてからで、そこから徐々に「聖地・甲子園」への思いが強くなったのだろうと推測している。
 そして親父がちょうど古希を迎えた今年、地元群馬の高校が21世紀枠の候補になるという絶好の機会がやってきた。もし選ばれたら記念に行きなよ!と語るおふくろ。親父の心中はいかばかりだったか。

 ……結果、残念ながら群馬からは選ばれなかった。おふくろ曰く
「あれは相当ショックだったみたい。三校が選ばれた後に
 『あと一校、あと一校選ばれるはずだ!』
 って。三校だよ、って言っても『四校だ』って。そういう選び方してるわけないじゃない」
 親父よ、確かに選考会議だけどドラフトとは違うのだよ。あと四校が選ばれたのは去年の話だ。残念なのは分かるがそこは分かってくれ。

 ただ、もし選出されて「よし、俺も行くぞ!」となった際、とても気になる点が一つある。

 親父は一人旅をしたことがない人間のようなのだ。そういえば、過去に一度もそんな昔語りを聴いたことがない。泊りがけの旅行といえば、家族か会社で行ったくらいだろう。
 県内の野球場に一人で行く分にはなんてこと無い。埼玉に行くのもまあ隣県なのでまあ苦労はしなかったろう。問題はその先。群馬からだと、まず東京へ出て新幹線に乗って大阪へ行き、そこから甲子園、となる。東京駅までなら多少乗換はあっても辿り着けるだろう、とふんでいるが……

 大阪。ここが一番のネックになりそうである。
 まず新大阪から大阪へ移動し、JRから阪神電車に乗換なくてはならない。名前が付いてるからってJRの甲子園口駅へ行くなよ、と忠告はしておこう。それでも、

 こうなりはしまいかと心配である。方向音痴でないのは救いだが、一度迷った後に上手く修正できるかどうか、そこか心配だ。急に電話されて「場所が分からなくなった。何かの前にいるんだけど分かるか?」と聴かれても、教える側が困ってしまう(関東ならまだしも)。しかも泊りがけで行こうと計画していたようで、さてどうしたものかと。

 おふくろは言う。
「甲子園まで行けたとしても、その後にホテルまで辿り着けるかねぇ?」
 対して本人は「だーいじょうぶだよ!」と強めの声で言う。なお、何があっても、どのような事態が想定されても「だーいじょうぶだよ!」というのが親父の口癖である。そういう性格の人間だ。

 とまあ、今春の甲子園行きはおあずけのようだが、夏はどうなるか分からない。地元高校の健闘を祈りつつ、同時に親父の念願が叶うかどうか、そして無事に観戦旅行が出来るかどうか、を見守っている状態である。無論、行くと決めたら協力はきちんとするつもりだ。古希祝にもなるし、それくらいはしないと。

 とりあえず梅田ダンジョンを攻略させねばなるまい。JRから阪神までであれば、そんなに難しくはないと思うが……

 親父の健闘を祈る。

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