見出し画像

須賀川市公式が『ウルトラマン』第15話を配信している件。

 ウルトラマン第15話「恐怖の宇宙線」(監督:実相寺昭雄)を期間限定配信してるのは「須賀川市公式チャンネル」。なぜかというと、

須賀川市・円谷プロダクション『空想の力』を育むプロジェクト「わたしもかいじゅうクリエイター」の実施にあたり、怪獣「ガヴァドン」が登場するエピソードを期間限定で配信します。

動画解説より

 ああ、それならこの回はベストチョイスですわ。絵に書いた怪獣が実体化して現実に出てくる……改めて観ると、そんな話を子供目線で徹底的に描いてるんですよね。

 何より、怪獣ガヴァドンに託す子供達の思いがホントに無邪気。絵が怪獣になっただけでも愉快痛快でしょうがないのに、最初の絵(いわゆるガヴァドンA)があまりにものっぺりしてるので、どうせならもっと格好良くしてやろうとするシーンなんかは本当に楽しそうなんですよ。
「この眼から光線出すんだぜ」「この牙で噛み砕いちゃえ」「足はもっと太くして」etc…傍からみれば物騒なのに、なぜこうも楽しそうなのかなぁ。

 そこで思い出すのは、かつて怪獣ブーム真っ只中(1967年前後)の頃に、とある雑誌が小学生のクラスでアンケートを取った際の結果です。設問で
「どんな怪獣と仲良くなりたいか?」
と尋ねたところ、圧倒的に多かったのが
「思いっきり悪いやつ」
だったとか。ではウルトラマンをどう思うか? と聞くと
「(怪獣が)良いか悪いかも確かめずに倒してしまう嫌なやつ
など、あまり好感度が良くなかったそうです。
 ーーーこの構図、まんま今回の子供達なんですよね。

「怪獣ガヴァドンよ、俺たちはお前にちょっぴりがっかりしている。
 お前はなぜ寝てばかりいるのか。
 怪獣といえば俺たちはもうちょっと格好の良いものだと信じている。
 子供は夜、家を出てはいけないとパパとママも言う。それをこうして無理して付き合ってんだからもう少しお前も頑張って欲しい、以上」

15話の台詞より

 なぜワルに憧れてしまうのかが不思議ですけど、よくよく考えればお利口さんでいるのって結構疲れるんですよね。いや、お利口には出来ます。でも後々になってから
「あー、あの時に、多少悪い子だと思われてもいいから、
 ちょっとでもワガママを通せばよかった!」

と嘆くことも多いんです。
 親は悪いことをするな、悪いやつと付き合うなと言ってきます。でも悪い奴ってのはいつでも自由に、己の思うがまま何でも出来るように見えてしまうもんなんです。そういう鬱屈をどこで晴らすか? ワルになりたい(ワルと仲良くなりたい)という願望を、怪獣に託していた、てな風に自分は考えます。

 そう思うと「ウルトラマン帰れよーっ! 帰れーっ!!」って叫びも凄く分かるんですよね。ここでのウルトラマンは完全に「悪」なんです。ワルとは違うんです。でも、例え子供達から悪と呼ばれようと、ウルトラマンはこうするしかなかったのでしょうね。人間、いつまでも無邪気でいられるわけではないですから……
 しかしその無邪気さを決して否定してはいけませんし、そんな自由さを子供達から奪ってもいけません。もっとも、だからこそ大人達は不安になるわけですが。

 にしても、こんな話を1966年にもう作ってたんですか? 子供の無邪気さを通して世間を見抜いた監督の実相寺昭雄氏と脚本の佐々木守氏のお二方、改めて恐るべしです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?