「クリスマスマーケット」を知らなかった僕が、熊本で70万人以上が訪れるクリスマスマーケットを作った話。その4(準備編) ~オリジナル「ヒュッテ」をつくる。後編~
手がぷるぷる。過酷な運搬作業
こうして迎えた、「クリスマスマーケット熊本」の設営準備。
実行委員メンバー、協力者10人で、2トン平トラック6台をチャーターし、会場までヒュッテを運搬しました。
今でこそプロの運送会社に依頼して、フォークリフトによる積み下ろしや会場までの運搬をしていますが、第1回目は資金もなく、何もかもが手探り状態。どうすればお金を掛けずに運搬できるか? 自分たちの手でどこまでやれるか? ということしか頭にありません。
実行委員メンバーや協力してくれる仲間とともに、ヒュッテのパーツを手作業で積み下ろしするのですが、その大変さといったら……。
ヒュッテのパーツ以外にも内装で使用するプラスターボードという防火材が100枚以上あり、これがやたらと重たいし、角をぶつけたら破損してしまうデリケートな素材。みんなで手をぷるぷると震わせながらトラックへと詰め込み、ヒュッテを保管していた僕の実家工場の南関町から会場のある熊本市内へと出発。南関町は福岡の県境に位置しますから約50kmの道のりを、仲間それぞれが運転するトラック6台でドライブです。本当にハードでしたが、いま振り返ってみれば、いい思い出に。
こうして熊本市内にすべての資材を搬入し、いよいよ明日から設営スタート。
会場設営日の初日は、最悪な「雨」
設営1日目がスタート。天気は、雨。最悪なコンディションの中、設営がスタートします。
会場では、ヒュッテの許認可申請をお手伝いいただいた一級建築士さんや大工さん、サポーターを含めた30人ほどが集結。8棟のヒュッテを1日で一気に組み上げました。
試行錯誤した甲斐もあって、1棟あたりの組み立てに掛かった時間は、大人3人で約1時間。雨天候でしたが、限られた時間の中で予定通りの設営をスピーデイに行うためには、事前に段取りしていた一つひとつの作業における効率化が大きな差をうみました。
こうして、花畑広場の会場に立ち並んだヒュッテ。熊本県産の木材を利活用した、クリスマスマーケット熊本だけの完全オリジナル。その全貌を目にした瞬間、思わず涙がこみ上げました。いかんいかん。本番は、これからだ。
苦労したからこそ。直営施工できる強みと自信。
このように、1年目のクリスマスマーケット熊本は、本当に大変でした。しかし、こうした苦労を乗り越えたおかげで、僕らにしかない強みを手に入れることができました。それは何かといえば、会場空間づくりが「イチからすべて直営施工できる」ことです。
1年目の経験をふまえ、2年目以降の効率を上げるためには、もっといろんな専門知識が必要だ。そこで、僕が経営する会社で「2級建築士事務所」と「建設業許可」を取得。加えて、僕自身がフォークリフトやクレーンの免許も取得しました。これにより、建築許可の申請から許認可、設計・施工に至るまで、すべて自前でできるようになりました。
なによりも、建築士・大工の父がいるありがたみを痛感し、親子で作り上げたヒュッテ設計・製作は、感慨深いものがあります。
10年先へ続く、熊本の新しいお祭りを目指して
ちなみに余談ですが、苦労して作り上げた、あのヒュッテ。
クリスマスマーケット熊本の開催期間以外は、どこに保管しているでしょう?
実はヒュッテを保管するために、僕の実家(南関町)の隣の空き地を購入。
実家の隣にあった400坪の空き地を購入し、そこに倉庫を建てて、ヒュッテを含む資材をすべて格納しています。
なぜ、そこまでやるか? といえば、クリスマスマーケット熊本を「10年先へ続く、熊本の冬の風物詩にする」と決めたから。
なぜ10年かといえば、ちょうどキリがいい数字だったし、10年も続けていけば「風物詩」として熊本に定着するだろうと考えたからです。
どんなイベントもそうですが、1回目はゼロから1を生み出すためのエネルギーが集まります。大勢の皆さんがワクワクしながら協力してくれます。2回目以降はその原型をもとに、その年ごとのクリスマスマーケットを作り上げ、これを継続させることで冬の風物詩として定着していくわけですが、それには相当な熱量や体制が必要となります。
企画書やパンフレットに「10年先へ続く、熊本の冬の風物詩にする」と記載し、皆さんの前で宣言した以上は、最後までやり遂げる責任が生まれるから。
一過性で終わるイベントには、したくない。だからこそ、自分たちでヒュッテを作ろうと決断できたし、土地を購入し倉庫を建てようという思い切った選択もできました。
10年やるという覚悟、意思表明をしたことによって、直近の2021年に開催したクリスマスマーケット熊本では、2週間あまりの期間中、2会場で42万人を超える皆さまにご来場いただけるイベントへ成長できたと思います。
最初は8棟だったヒュッテも、現在は16棟まで増えました。
5年前まではクリスマスマーケットの存在さえ知らなかった僕が、わずか数年でここまでのめり込むとは思いもしませんでした。そんな僕がクリスマスマーケットの主催者となって、はや5年目。もちろん、大変なことは多々ありますが、それでも、自分の貴重な時間やお金を費やしてなお余りあるほどの達成感、幸福感を味わうことができています。
「地元で同じようなイベントをやりたいけど、何から手をつけていいか分からない」、「許認可の申請ってどうやるの?」といったご相談があれば、可能な限りお答えしますし、必要に応じてサポートも可能ですので、お尋ねください。
おまけの話
(現在のヒュッテ輸送方法のご紹介)
前述で紹介したヒュッテの輸送方法ですが。1回目の大変な苦労の末、2回目(2019年)から輸送方法も、大変賢くなりました。(笑)
プロの輸送会社による10tウィング車を複数台を使っての大規模輸送。そして、フォークリフトを導入しての作業で現場での効率性も大幅に向上しました。
これだけの量のヒュッテ部材を、1年目に自分たちで運んだかと思うと・・・今ではぞっとします。
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