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「クリスマスマーケット」を知らなかった僕が、熊本で70万人以上が訪れるクリスマスマーケットを作った話。その3~「ヒュッテ」をつくる。前編~

 

前回の記事では、クリスマスマーケットの存在さえ知らなかった僕が、「熊本に新しい冬の風物詩をつくり、多くの人々を幸せにする」という理念のもと、「クリスマスマーケット熊本」のグランドデザインを作り上げていったこと。また思いを共有し、本音でぶつかり合える仲間たちとの出会いについて書きました。

ここからの記事では、2018年12月に初めて開催したクリスマスマーケット熊本の「準備編」として、本番に向けて苦労したことや、それをどう乗り越えてきたかをご紹介していきます。


驚愕のレンタル代!! であれば、作ってしまえ!

ということで、今回ご紹介するのは「ヒュッテ」づくりについて。

ヒュッテとは「木造の小屋」のことで、クリスマスマーケットらしい景観づくりには欠かせない存在です。
 

クリスマスマーケット熊本のオリジナルヒュッテ


「クリスマスマーケット熊本」を開催するにあたって、福岡のクリスマスマーケットを視察させてもらった際、まず驚いたのが、ヒュッテの圧倒的な存在感でした。
 

あの木造の小屋は、一体なんだ!? 


 
目の前に広がっていたのは、絵本から飛び出したような可愛いヒュッテがライトアップされ、そこで温かい食べ物や飲み物を販売している異空間。木と灯りがもたらす温もり、そこに集う人たちの笑顔。ヒュッテがあることで、異国の世界へトリップしたような気分になれる。ヒュッテがもたらす空間演出のチカラに驚かされました。
 
ヒュッテと呼ばれるあの小屋が、
クリスマスマーケットにはぜったい必要だ。
 
色々とやらなければならないことの中でも、「ヒュッテをどうするか?」問題が、最初の難関として立ちはだかりました。
 
早速、国内のヒュッテ事情について調べてみると、クリスマスマーケットだけに限らず、オクトーバーフェストなど季節のイベントでも使われているらしいこと。東京などの都心部では、このヒュッテをレンタルしている会社があることが分かりました。
 
そこで、見積もりを取り寄せてみると…。


ヒュッテ8棟、1週間のレンタル代=800万円也。

うっわ、うわわわわーーーーーーーー!!!

想像を超える金額に、のけ反りました。

関東からの運搬費込みとはいえ、レンタル代のみ。
組み立てる大工さんなどの人工代は別です。

ただでさえ予算もない上に、これを毎年レンタルするのは厳しい…。悩み続けること数週間。想定していた最後の手段に舵を切ることにしました。

「オヤジ」に作ってもらおう!!

僕の父は、2級建築士の資格を持つ大工です。なんと、灯台もと暗し。

想像以上にレンタル代が高かったため、こうなったら、ヒュッテを自分で作ってしまおう! そう決意したのでした。

決めたのは良いものの、さて、どうやって作るか? 

どういう外観で、どういう大きさで、どういう設計にすればいい?
参考となるモデルがないので、自分で決めていくしかありません。

まず、ポイントとしては「分解したヒュッテを平積みして自分たちで運んで、組み立てることができるか?」です。物流コストを抑えるには、保管場所から会場まで自分たちで運びたい。そして、会場で組み立てる必要があります。

そのためには、次の仕様・条件を設定し、設計することにしました。

◎大人2~3人が重機を使わず、現場で組み立てられる構造。
◎会場での組み立て時間は、1日以内でできること。できれば、半日。
◎分解したパーツを会場まで運搬する際、自分たちで運転できる2トン平トラックに積載できるサイズや重量
◎トラックに積載した際、各パーツ表面に凸凹が生じずフラットな状態で、高さ2m程度に綺麗に収まる形状
◎一部に必ず熊本県産材を使用する
◎建築基準法、消防、保健所などの各種法令に当てはまる構造

・・・と、僕が父に条件を示しました。

そうしたものをどうやって作るか?というところからヒュッテづくりの構想は始まりました。2018年3月に着手し、試行錯誤を重ねること半年。試作品となる1号機が、8月にようやく完成しました。

ヒュッテ制作中の様子


熊本県産木材を使用した、「一枚物のカウンター台」
塗装し、装飾したヒュッテ「試作第1号機」。真夏に写真撮影
(汗だくで熱中症寸前でした。)


住宅レベルの許認可手続き。「建築許可」「建築確認」というカベ

こうしたヒュッテの設計・製造における苦労もさることながら、同時進行で苦戦していたのが、さまざまな許認可申請の手続きです。

実は、イベント会場にヒュッテを建てるというのは、運動会やマルシェにテントを建てるのとは大違い。はるかにハードルが高いのです。

イベント開催の限られた期間だけ設置する小屋とはいえ、木造の仮設建築物(建築基準法第85条第5項仮設建築物の許可)という扱いとなり、「こういう場所に、この期間、こういう建物を建てます」といった建築許可と建築確認が義務付けられています。

許可を得るためには、防火対策をはじめとする建築基準法などに基づいた設計と資料が必要に。つまり、これから50年、100年と建ち続ける通常の建築物の建設と同等レベルの手続きを踏まないといけないのです。

しかも、熊本市内のイベントでこのような仮設建築物を建てる前例がほとんど無いため、行政と何度も協議することに。建築基準法をはじめとする消防署管轄の防火対策や保健所の許認可にも適合すべく、毎日のように市役所と消防署、保健所通いを重ねました。

建築許可・確認申請のための膨大な資料綴りの一部

こうしてヒュッテの構造やパーツ、店舗ごとの配置、避難経路など、さまざまな内容を落とし込んだ書類を作成することになるのですが、素人の僕たちだけでは到底クリアできません。そこで外部の一級建築士に協力をあおぎ、建築許可を取るための書類一式を準備。気がつけば、100枚以上もの申請用紙を束ねたファイルが2冊!という申請書類が完成し、なんとか無事に許認可を得ることができたのです!。

建築許可通知書と建築確認済証

(さらっとご紹介しましたが、この過程の中でもいろんなトラブルや課題がありました。そのあたりはまたどこかで詳しくご紹介できればと思います。)

ヒュッテを量産、出店店舗にお披露目

許認可申請を進める一方、2018年8月に完成したヒュッテ1号機をもとに、11月末までにはヒュッテを何棟か用意しなければ、12月の本番に間に合いません。

納期やコストのことも考えて、量産するためのベースとなる2号機を制作。これをもとにして大工さん2人へお願いし、4カ月で残り8棟を作ってもらいました。2週間に1棟のペースで塗装や防水加工も施しますから、なかなかのハイペースな施工でしたが、父と大工さんたちの協力のおかげで無事、ギリギリセーフで完成。こうした縁の下の力持ちに支えてもらい、「よし、絶対に成功させなくちゃ!」とまた力がわいてきます。

僕の会社の敷地内に仮で組み立てた「関係者見学用ヒュッテ(2号機・量産型)」

ちなみに試作したヒュッテは、僕の会社の敷地内に仮設置し、クリスマスマーケットに出店していただく飲食店の皆さんへお披露目することに。ヒュッテとはどういうものか? また実物を見てイメージをたててもらいたかったからです。おかげさまで、ヒュッテを目にした店主さんたちからの評判は上々。実物を見て、出店者さんそれぞれにヒュッテの装飾を考えて頂くお願いをしました。さらに、雨風に対する耐久テストも兼ねて、5カ月ほど屋外で野ざらしにしていましたが、問題なく持ちこたえてくれました。

この後の続きはこちらです!
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