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上海アート散歩⑨外灘エリアの美術館――歴史建築と現代アート

 上海を代表する歴史地区である外灘(ワイタン、The Bund)には、近代建築が立ち並ぶ優雅な街並みとともに、意欲的な現代アートや文化を発信する新しい美術館が集積しています。

復星芸術中心(Fosun Foundation)
上海外灘美術館(Rockbund Art Museum)
上海久事美術館(Shanghai Jiushi Art Museum)
東一美術館(Dongyi / Doyi Art Museum, Bund One Art Museum)
少し離れた場所に位置する
藝倉美術館(Modern Art Museum Shanghai, MAM)
の5つの美術館、
・ペロタン(Perrotin Shanghai)
・アルミン・ライヒ(Almine Rech Shanghai)
・リッソン・ギャラリー(Lisson Gallery)

の3つの国際的ギャラリーを紹介します。


1. 復星芸術中心(Fosun Foundation)

 外灘の中心部にそびえる復星芸術中心(Fosun Foundation)は、イギリスの建築家事務所ヘザウィック・スタジオとフォスター・アンド・パートナーズが共同設計した、「Bund Finance Center」内にある総合アート施設です。

  最大の特徴は、建物外壁に取り付けられた巨大な金属製のスクリーンです。横に並んだ複数のカーテン状のパネルがゆっくりと回転することで、外観の表情が刻々と変化します。この回転機構によってファサードがダイナミックな動きを見せ、夜間にはライトアップされてさらに幻想的な雰囲気を醸し出します。

これ回転するのすごくないですか
金融センターの一角にあり、近くにはジュリアン・オピーのパブリックアートがあります

 館内では現代アートの企画展やファッション、音楽などジャンルを超えたプログラムを行っており、建築とアートとエンターテインメントが一体となった体験が楽しめます。

ウェス・アンダーソン展をやっていました。日本では天王洲の寺田倉庫と渋谷ヒカリエで2023年にやっていた巡回ですね

2. 上海外灘美術館(Rockbund Art Museum)

 1930年代に建てられた外灘の歴史的建築「ロックバンド・ビル」をリノベーションし、2010年に開館した私立美術館です。2020年以降にできた現代美術館が多い中、上海では比較的老舗です。アール・デコの趣を残すファサードと、白を基調とした近代的な内装空間が調和しています。最上階の屋外テラスからは黄浦江の眺めが広がり、外灘の街並みとのコントラストが味わえます。

 道路を挟んで向かい側に位置するビルの中には、ペロタン(Perrotin Shanghai)アルミン・ライヒ(Almine Rech Shanghai)リッソン・ギャラリー(Lisson Gallery)という世界的に著名な3つのギャラリーが集まっています。

 いずれも現代アート界を牽引するグローバルギャラリーで、国際的に評価の高い作家の個展や国際的な企画を随時行っています。上海のアートコレクターはもちろん、海外から訪れるアートファンの目的地になっています。

日本人にも馴染み深いペロタンギャラリー。グループショウをやっていました
香港のペロタンではできやよいさんの個展をやっているようです
グッズショップ。ギャラリーにグッズショップがあるのは珍しいですね
世界中どこに行っても見る人
くらやえみさんと大谷工作室の本がありました。なるほどね(2人ともカイカイキキ)
アルミン・ライヒ
リッソン・ギャラリー。LAでは杉本博司展をやっているようです
アニッシュ・カプーア展です

3. 上海久事美術館(Shanghai Jiushi Art Museum)

 上海久事集団(Shanghai Jiushi Group)傘下の美術館として2021年に誕生した比較的新しい施設です。歴史的ビルの一角を美術館へと改装し、高層ビルが並ぶ外灘地区に新たな文化の拠点を設けました。外灘の中心部に位置し、観光やショッピングの合間にも立ち寄りやすい立地です。歴史あるビルの装飾や眺望とあわせて楽しめる点がポイントです。

4. 東一美術館(Dongyi / Doyi Art Museum, Bund One Art Museum)

 百貨店「東一百貨(Dong Yi Department Store)」の改装プロジェクトとして生まれたアートスペースです。ブランドショップやレストランが集まる百貨店のフロアと、美術館としての展示空間が融合し、商業施設内に位置しながら、本格的な美術展を展開しています。

 フランスのリール・メトロポール現代美術館からモディリアーニなどが来ていました。2023年にはウフィツィ美術館展をやっており、欧州の美術館とのコネクションがあるようです。

5. 藝倉美術館(Modern Art Museum Shanghai, 「MAM」)

 最後に、黄浦江を渡った浦東側にある藝倉美術館(Modern Art Museum Shanghai, 「MAM」)です。外灘地区からは橋を渡って少し移動が必要ですが、近未来的な都市開発が進むエリアにそびえる現代美術館として注目されています。ジャン・ヌーヴェルによる設計が特徴的で、外観の白を基調としたモダンなディテールや、室内の吹き抜け空間がスケール感を生み出しています。

 マリーナ・アブラモヴィッチの大規模な個展をやっていました。

過去の展覧会のポスター。伊藤潤二や天野喜孝の名前も
ロビーではパフォーマンスアートが行われていました

 外灘地区は歴史的建築群で世界的に知られる上海随一の観光スポットですが、近年は復星芸術中心や上海外灘美術館のように芸術文化を発信する新拠点が次々と誕生し、モダンアートを身近に体験できるエリアへと進化しています。

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