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はやぶさ2、低高度運用を中止

5月16日、低高度観測運用(PPTD-TM1)中だった小惑星探査機「はやぶさ2」は、小惑星リュウグウの高度50mの地点で、探査機の自律的な判断で、運用を中断した。予定していたターゲットマーカーの投下はおこなわれず、そのままホームポジションへと戻る運用に切り替わった。

はやぶさ2は、4月5日に小型衝突装置を使用して、リュウグウに直径10mを超える人工クレーターを作成した。今回のPPTD-TM1は、この人工クレーターの周辺に2度目のタッチダウンをするための情報収集として実施されたものだ。低高度観測運用は6月上旬までの間に、2〜3回実施する予定で、PPTD-TM1は、人工クレーターから30mほど離れているS01という領域を探査する予定になっていた。

計画では、5月16日の11時半ごろに高度10m付近からターゲットマーカーを投下、その前後で、S01領域の詳しい地形を観測するはずだった。しかし、実際は高度50m付近で、運用は中止。これははやぶさ2が自律的に中止したもので、何らかの条件がそろわなかったことから、自ら運用を止めて、上昇に転じたのだろう。機体の状態を示すテレメトリーデータは管制室に届いていて、探査機自体は正常だという。

実は、2月に実施された1回目のタッチダウンで、岩の破片や砂などが予想以上に舞い上がってしまったために、はやぶさ2の底面に設置されていた広角カメラ(ONC-W1)の感度が半分に落ちてしまった。同様に、タッチダウンのときに重要な役割をするレーザー・レンジ・ファインダー(LRF)も性能が落ちているかもしれないという懸念があった。

今回の中止と、ONC-W1やLRFが関係しているのかはわからない。ただ、運用予定を見ていると、LRFの計測を始めるのは高度35mあたりからで、しかも、LRFのデータははやぶさ2の制御には使わない予定だった。また、カメラではやぶさ2が確認する目標点もないはずなので、ONC-W1やLRFの不具合で運用中止というのは考えにくい。

ということは、はやぶさ2とリュウグウの間の距離を測定するレーザー高度計(LIDAR)の不具合か、何からの理由でレーザーの反射光が返ってこなかったいうことが考えられるのだが、1回目のタッチダウン以降も、はやぶさ2は、高度1.7kmくらいまでは近づいている。LIDARの反射光は、遠い場所よりも、近い場所の方が受信しやすいので、高度50mで、反射光が受けられないというのもおかしな話だ。

まあ、結論を言ってしまえば、JAXAの運用チームからの発表を待たないと真相はわからないわけだが、場合によっては、タッチダウンは難しい状況になりかねない。大事に至らず、低高度観測運用の仕切り直しがおこなわれることを願う。

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