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今日の科学 5月16日

1965年6月16日は、アメリカの天文学者アンドレア・ゲズが生まれた日です。
彼女は、私たちの暮らす天の川銀河の中心に巨大でコンパクトな重力源があることを明らかにしました。それは私たちの銀河の中心に超大質量ブラックホールを示唆するものとなり、2020年にノーベル物理学賞を贈られました。

望遠鏡をはじめとする観測機器が発展し、私たちはいろいろな天体を発見してきました。それらの発見を通して、私たちは宇宙のことをより詳しく知ることになります。しかし、未だに謎の多い天体はたくさんあります。その代表となるのがブラックホールです。

ブラックホールは、重さ(質量)によって3種類に分かれます。1つ目が、太陽の10倍〜数十倍ほどの重さの恒星質量ブラックホールです。これはとても重い恒星が超新星爆発を起こすことによってできると考えられています。

2つめは、太陽の100万〜100億倍の重さを持つ超大質量ブラックホールです。この宇宙にはたくさんの銀河があり、ほとんどの銀河の中心には、超大質量ブラックホールがあります。でも、このタイプの銀河がどのようにつくられたのかは謎に包まれています。

3つ目は、中間質量ブラックホールです。名前からわかるように、恒星質量ブラックホールと超大質量ブラックホールの中間で、太陽の数百〜数十万倍くらいの重さになります。中間質量ブラックホールは最近、観測されるようになりました。

宇宙に存在するほとんどの銀河の中心にあるとされる超大質量ブラックホールは、もちろん、私たちの暮らす天の川銀河の中心にもあります。天の川銀河の中心部分から電波が発生していることは知られていました。

1970年代になると、電波源のいて座A*(エー スター)がブラックホールではないかという考えられるようになりました。しかし、その証拠はなかなかつかめないままでした。そこで、1990年代にアンドレア・ゲズのグループはいて座A*付近の星の動きを赤外線で観測し始めました。

同じ時期にゲズのグループの他に、ドイツのラインハルト・ゲンツェルのグループも同様の観測に着手しています。2つのグループは10年以上観測した結果、電波によって割り出されていたいて座A*の位置とほぼ同じ場所に、太陽の400万倍の重さを持つとても重い天体があることがわかったのです。

ただし、赤外線で観測しても、いて座A*に相当する天体を撮影することはできませんでした。つまり、いて座A*が天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホールであることが濃厚になりました。そして、超大質量ブラックホールの影を直接撮影するイベントホライズンテレスコープ(EHT)計画へとつながりました。

EHTは、2019年4月に楕円銀河M87の中心にあるブラックホールの影を直接撮影した画像を発表し、銀河の中心に超大質量ブラックホールがあることをさらに裏付けました。このような後押しもあり、2020年にゲズとゲンツェルの2人にノーベル物理学賞が贈られました。

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