見出し画像

WebARがECにもたらす3つの変化とECサイト運営者が考えるべき3つのこと

先日shopifyのVR/AR開発の責任者がMediumにてWebARをshopifyの一部のサイトに実装したことを発表しました。

これはiOS12のSafariから使用可能なAR Quick Look Viewerという機能を使い、商品のプレビューをARで可能にしています。

このARは様々な観点から今後のユーザー行動に大きな変化をもたらすと考えられます。

そして中でもECサイトはもっともこの変化を受けやすく、かつきちんと備えることで他のECサイトに大きなアドバンテージをつけることができると思っています。

まずはAppleがiOS12から提供するWebARがECにもたらす大きな3つの変化について述べたいと思います。

大きな変化1:誰もが実装可能で手軽なARの実現

昨年、AppleがARKitを発表してから多くのARアプリケーションがデベロッパーたちによって作られました。

しかしARKit(もしくはGoogleのARCore)を使ったARアプリには一つ大きな問題がありました。

それが「アプリをダウンロードしてもらわなくてはならない」という問題です。

ARKitやARCoreを使ってARを実現するには基本的にはアプリとして世の中にリリースし、使ってもらう必要があります。

しかし今回登場したWebARは基本的に我々が今見ているWebサイトに組み込まれる形になるので、サイトに訪問さえしてもらえばARの機能を体験してもらうことができます。

そしてこのWebARの機能はAppleが提供するAR Quick Look Viewerを利用することで専門的な知識がなくても、簡単にサイトに組み込むことが可能になります。

また、ここまで読んだ方の中には「でもこれiPhoneを持ってる人だけにしか見えないんじゃないの?」と思われる方もいるかもしれません。

しかし実はAndroidを提供するGoogleもChromeブラウザに標準でWebAR機能を提供することを発表しています。

もちろんAppleとGoogleのWebARの仕組みが現状違うので、それぞれに対応してなくてはならないという問題はまだ残っていますが、今後どちらにも対応したWebARを簡単に実装できるツールを開発するスタートアップなども出てくるのは容易に想像できます。

このように今後アプリでのARでは難しかった手軽なARを誰でも作れるようになります。

大きな変化2:実物とのギャップを最小化できるECの実現

我々の購買を便利にしてくれたECにも一つ大きな欠点があります。

それは「実際に手元に届くまで商品を想像して買うしかない」という点です。

実店舗での買い物であれば目の前にある商品を手に取り、購入することができます。

しかしECの場合、商品の情報はサイトに掲載されたテキスト、写真あるいは動画であるため、実物の大きさや色合い、もしくは家具や小物なら部屋においた時の見栄えなどはイメージするのが難しいことが多々あります。

それ故に「ECサイトで購入して見たけど実物がイメージと違ってがっかりした」というような問題はどうしてもまだECサイトには付き物になってしまいます。

しかし今回のWebARによって、ユーザーが購入前に実物のイメージをできるだけ詳細にすることができるようになります。

これは間違いなくこれまでECでの購買を拒絶してきた層の多くをECサイトに流入させることができると思います。

ECサイトで唯一の欠点であった実物の商品のイメージを購入前にできないという問題が解決されれば、自分の部屋で商品をフィッティングさせながら吟味するユーザーは確実に増えます。

大きな変化3:写真や動画では満足しないユーザーの増加

上述した二つの大きな変化によってshopifyのような立体的かつARで商品の情報を獲得できるようになると、ユーザーは現時点でスタンダードだと考えられているサイトの情報量では満足できなくなると考えています。

これまでのWebの文脈を遡っても、最初Webの中で見れるのはほとんどがテキストのみでした。

例えば下記は1994年のAmazonのサイトです。

しかし徐々にネットワークや情報端末の進化によって画像や動画を表示させることができるようになって来ました。

そして我々人間は一度情報量の多いコンテンツに触れてしまうと後戻りができなくなってしまう生き物です。

これだけ画像や動画がサイト内に溢れた時代に生きている我々はテキストだけのサイトというのは情報量の乏しいサイトであり、魅力が薄まっています。

私はそれと同じことがこのWebARの出現によって起きようとしていると考えています。

立体的に商品を見渡し、実際に購入前に自分の部屋に設置できるようなサイトが出て来て、それが当たり前になってくるとユーザーはどんどん写真と動画だけのサイトは「リッチではないサイト」と見なし、閲覧しなくなる可能性があります。

ユーザーに魅力的なサイトであると認識してもらい、サイトを利用してもらえるようにこれから3D情報をユーザーに提供するというのは大事な要素になってくると思われます。

ECサイト運営者はこの変化にどう備えればいいか?

以上が僕が考えるWebARがEC業界にもたらされる大きな三つの変化でした。

ではここからは上記を踏まえた上でECサイトの運営者はこれらの変化にどう備えれば良いのかについて自分なりの意見を述べたいと思います。

商品の3Dデジタル化ノウハウの蓄積

今回ご紹介したWebARの機能を実装するのは前述のようにAppleやGoogleが用意してくれた仕組みに乗っかることで簡単に実現することができます。

しかし一方でこれらを実現するにはARに映し出す3Dコンテンツが必要になります。

この3DコンテンツというのはECサイトで売ろうとしている商品の3Dデータです。

3Dデータを作るには「商品そのものをスキャンする方法」と「商品を元に3Dデータを作ってもらう方法」があります。

どちらも既に技術として充分可能ですが、毎月入れ替わる大量の商品の3Dデータをどのように入手していくのかというのはとても難しい問題だと思っています。

逆に今からそういった方法を模索し、どこよりも早く3Dモデル情報を用意できるようになっていれば他のECサイトよりもアドバンテージを取れるようになると考えられます。

ARを用いたサイトのUI/UXの研究

ARはこれまで出来なかった様々なことを実現してくれる素晴らしい技術です。

しかしその素晴らしい技術も使い方を間違えればユーザーにとって邪魔でしかないものになってしまいます。

過去のウェブサービスやアプリを振り返っても、新しい技術をいち早く取り入れたサービスよりもUI/UXをきちんと設計し、ユーザに適切な形で提供したサービスが生き残っています。

shopifyのようなサイトは一例であり、業種によっても最適解は異なるでしょうし、これからWebARで出来るようになることもどんどん増えていきます。

「ARを目的にする」のではなく、「ARを使うことができるからこそ何が実現できるのか」を考え、ユーザーに適切なUI/UX体験を提供できるように準備することが大事だと考えています。

オンラインとオフラインの壁を無くす購買体験の模索

WebARがECサイトに実装されることで実店舗での購買は必要なくなるという方もいらっしゃいます。

しかし、僕自身は今回のWebARをはじめ、AR技術を活用することでECか実店舗かという垣根を無くしての購買体験がより促進できるのではないかと考えています。

ARは日本語では「拡張現実」という言葉で表現され、基本的には現実にデジタル情報を付与することを得意としています。

つまり今回のshopifyの例のようにECサイト上の情報を現実世界に持ち込むことができると同時に、実店舗内にECサイトの情報をマッピングすることも可能になるのです。

イメージしやすい例として例えば先日Yuma Soeriantoという少年がゲーム売り場においてあるゲームパッケージ上にゲームのPVなどの情報を表示させるデモを公開しています。

このように実店舗で出会った商品にデジタル情報をマッピングさせて、目で見たり手で取るだけではわからないメタ情報について知ることができるのもARの魅力の一つです。

そして意識すべきことはARを活用することでオンラインでもオフラインでもユーザーがその商品の情報に瞬時にアクセスでき、ユーザーのイメージと実物とのギャップを最小限にしてあげられるような購買体験を設計してあげることです。

これまでの購買体験だとオフラインは実物が手に取れるがメタ情報の量には限界があり、一方のオンラインは取得できるメタ情報は大量にあるが、サイズ感など見た目の情報の把握に限界がありました。

ARをうまく活用してあげることで、これまでは難しかったオンライン/オフライン双方からの顧客を満足させられるような購買体験を実現できると考えています。

ARスタンダード時代のECサイトを作りたい方へ

私がCOOを務めるMESONでは来るべきARスタンダードの時代に使われるようなARアプリケーションを作成すべく多くの知識やノウハウを蓄積しています。

弊社はAR(もしくはVR)を活用したサービスのUI, UXや技術的な観点からアドバイスをさせていただく事業もさせていただいています。

もし今回のWebARを活用したECサイトはじめ、AR/VRを活用した事業を実施したいと考えられている方は弊社サイト、もしくは私のTwitterまでご連絡ください。

ARアプリの開発に興味がある方は合わせてこちらもご覧ください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?