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第6話:俺の行方|不条理なゲームに巻き込まれた俺の行方|2分

 この小説は、第6話です。
 第1話~第5話を先にお読みいただきますようお願いいたします。下記の目次等をご利用いただくと便宜かと存じます。

■ 目次
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第1話:開始|2分
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第2話:次戦|3分
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第3話:望み|3分
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第4話:最終|2分
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第5話:道のり|4分

 俺は、これからどうなるのだろう。

 カレーの料理対決に負け、俺は別室に連れてこられた。
 拘束は解かれないまま、体感では数時間が経過している。

 あの男――大食い対決フードファイトと料理対決に勝った男――は、このゲームをクリアしたのだろうか。
 そんなことよりも……

 俺は、これからどうなるのだろう。


 こんな不条理なゲームでも勝ちようはあった。俺は<もしも>の世界に思いを巡らせる。

 ここに連れてこられた日。

 俺は、昼から酒を飲みながら、つまみや菓子を食べていた。
 嫁がもうすぐ夕飯を作り始めると知っていたのに――。夕飯のために、腹を空かせていたら、結果は変わっていたのかもしれない。

 あの料理対決だって、そうだ。
 少し前までは、俺も料理を手伝うことがあったのだ。しかし、最近では、嫁に料理を任せっきりとなり、ろくに包丁も握らなくなった。
 息子と同じ小学生の好み? そんなの分かるわけがない。


 こうなってしまったのも、全部あのときからだ。


 1年前、俺のよそ見で起こした交通事故。俺は、被害者に謝ることからも逃げ回り、嫁に全て対応してもらった。
 そんな自分が嫌になった挙句、日中から酒に浸り、家事も手伝わなくなったのだ。こんな状況になってはじめて、自分が悪いと理解できる。

 ああ、俺が家族を、今の生活を、しっかり愛していれば――。
 俺がいなくなったら、家族は悲しんでくれるのだろうか。

 後ろから誰かが近付いてくる。俺は身動きが取れないまま、何かをがされる。

 そこで、俺の意識は途絶えた。



 目が覚めると、自宅リビングのソファーに寝転がっていた。
「起きたのね、もう夕食の準備はできているわよ」妻の声が聞こえる。

 あれは、夢だったのか……?

 卓上に目をやると、大盛りのナポリタン。あの<青い皿>。
「タバスコ使うわよね? ほら、健斗けんとも早く!」
「は~い」健斗がゲームを止めて、食卓につく。

「いただきます」そう言う二人に、俺も遅れて続く。

 そのまま一口すする。今度は、ちゃんとフォークを使って。
――あの味だ、あの<青い皿>の味

 本当に自分が嫌になった。
――いつも最初から目一杯タバスコをかけていたから、嫁のナポリタンの味が分からなかった

「あのさぁ」健斗がこちらを見ずに言う。
「悪くなかったよ、カレー。また作ってよ」

 

 きっと、あの男は元の世界に戻れたのだろう。
 俺も――。あの不条理なゲームに巻き込まれた、この俺も、元の世界に戻れるだろうか。


(了)

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