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第4話:最終|不条理なゲームに巻き込まれた俺の行方|2分

 この小説は、第4話です。
 第1話~第3話を先にお読みいただきますようお願いいたします。下記の目次等をご利用いただくと便宜かと存じます。

■ 目次
■ 
第1話:開始|2分
■ 
第2話:次戦|3分
■ 
第3話:望み|3分

 望みはつながった、そう信じるほかない。香織かおり俊太しゅんたは心配してないだろうか。
 そんな思いを余所よそに、ゲームマスターが口を切る。

「次が最終ゲームです」
「……やっとか。何をさせられるんだ?」
「質問に答えていただきます」
「質問? またクイズか……。問題は?」

 すぐに返答はない。
 ゲームマスターは、部屋の隅に積まれた箱から、一枚の紙とペンを持ってくる。そして、俺の目の前で、何かを紙に書き、それをこちらに向けた。



「はあ!?」俺が叫ぶように言う。
「どういうつもりだ!? 家に帰りたいに決まってるだろ!」

「一答しか許されませんので、慎重にお答えください」
 ゲームマスターは、俺から視線を動かさずに続ける。
「これまでのゲームには、全て意味があります」

――これまでのゲームには、全て意味があります
 俺は、これまでのゲームを振り返ることにする。


第1ゲーム:ナポリタンの大食い対決フードファイト

 相手は、俺よりも明らかにガタイの良い男。
 相手も粘ったが、危なげなく勝利した。
 <赤い皿>のナポリタンが旨かった。どこか懐かしい……。

第2ゲーム:カレーの料理対決

 自信はなかったが、小学生の好きそうなもののアイディアが浮かんできた。
 大食い対決フードファイト勝者の小学生が、俺の料理を美味しいと選んでくれたとのこと。

第3ゲーム:シンプル・ガチクイズ

 素人には難しい法律クイズ。
 ……不法行為による損害賠償……。
 知り合いの弁護士がいて助かった。

最終ゲーム:質問

 あなたは、どうしたい?
 第3ゲームのクイズはモニター画面に表示されたが、この質問は手書き。頭が痛くなってくる。


 ああ、まだ分からない。この不条理なゲームの内容は、振り返ったはずなのに……。

 俺は目を閉じ、更に深く思考をめぐらせた。


 暗闇の中を漂っている。
 心地よさを感じながら彷徨さまよっていると、何かにぶつかる。
 見えない壁があるような。一段と深い闇。これ以上は進めない。

 けれど、以前よりも薄い闇。そこに手をかざしてみる。
 見る見るうちに、周りの闇と同化し、境目がなくなる。

 そのとき後方から光が差してくる。
 振り返ると、暗闇が裂さけ始めていた。
 裂け目から誰かの声も聞こえる。

 見えない壁があった方に目を戻す。そこには何もない。 
 もう十分だ。その光と声の方に戻ることにする。

「あの~、そろそろよろしいでしょうか?」

 俺は、目線を上げないまま、呟くように答えた。

「……家に帰ろう」
「先ほどと同じ答えですね? それでは正解を――」
「いや、違うんだ」


 自然と涙がこぼれた。


「一緒に家に帰ろう、香織。俊太も連れて――」


■ 第5話:道のり|4分

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